エズラ記(ギリシア語) 6

ダレイオスの治世の第二年

神殿工事の再開と干渉

1 さて、ダレイオスの治世の第二年、二人の預言者ハガイとイドの子ゼカリヤは、ユダヤとエルサレムに住むユダヤ人に、イスラエルの神、主の名において御言葉を伝えた。

2 それにこたえてシェアルティエルの子ゼルバベルとヨツァダクの子イエシュアが立ち、エルサレムの主の神殿の建築を開始した。主の預言者も彼らと共にいて助けた。

3 そのとき、シリアとフェニキアの総督シシネ、シェタル・ボゼナイとその同僚たちがやって来て言った。

4 「だれの命令で、お前たちはこの家を建て、この屋根をふき、あれこれ仕上げようとしているのか。この家を建てているのはだれか。」

5 しかし、主が帰還者たちを顧みられたので、ユダヤ人の長老たちは恵みを得、

6 報告に対してダレイオスからの返事が届くまでの間は、彼らは工事を続行することができた。

長官たちの報告

7 さて、これはシリアとフェニキアの長官シシネと、シェタル・ボゼナイおよびその同僚であるシリアとフェニキアの知事たちがダレイオスに書き送った書簡の写しである。「ダレイオス王陛下に謹んで御挨拶いたします。

8 わたしたちの主であり王でもあられる陛下に、御報告申し上げます。わたしたちがユダヤの土地に行きエルサレムの都に入りましたところ、帰還したユダヤ人の長老たちがエルサレムの都で、切り石と高価な木材を使って壁を造り、主のために新しい大きな神殿を建築しているのを目撃いたしました。

9 工事は着々と進行中で、仕事は彼らの手によって支障なく進められており、確固たる信念と細心の注意とをもって仕上げられつつあります。

10 そこでわたしたちは、彼らがだれの命令でこの神殿を建築し、基礎を据えているのかと長老たちに尋ねました。

11 わたしたちは仕事に携わっている指導者たちの名前を書いて陛下に御報告しようと彼らを問いただし、責任者たちの名を書いて渡すように要求しました。

12 すると彼らは、こう答えました。『わたしどもは天地を創造された主の僕です。

13 この神殿は、昔、イスラエルの偉大な力ある王によって建てられ、完成されました。

14 ところが、わたしどもの先祖が天におられるイスラエルの主に対して逆らって罪を犯したので、主は彼らをカルデア人の王であるバビロニア王、ネブカドネツァルの手に引き渡されました。

15 カルデア人たちは神殿を破壊して火をかけ、民をバビロンへ連れ去ったのです。

16 バビロニア一帯を支配下におさめたキュロス王はその治世の第一年に、この神殿を再建するよう布告を出されました。

17 またキュロス王は、ネブカドネツァルがエルサレムの神殿から持ち出してバビロンにある自分の神殿に納めた金銀の聖なる祭具類を再びそこから運び出して、ゼルバベルと長官サナバサルに引き渡されました。

18 王は長官に、これらの祭具類すべてをエルサレムの神殿に運んで納めるよう、また、主の神殿をもとの場所に建てるよう指示されました。

19 そこでこのサナバサルがやって来て、エルサレムの主の神殿の基礎を据えたのです。そのとき以来今日まで建築作業は続いておりますが、完成には至っておりません。』

20 陛下、もし必要とお思いでしたら、主にして王であられる陛下の、バビロンにある王宮の記録保管所をお調べください。

21 エルサレムにある主の神殿の建築がキュロス王の御裁可を得てなされたものであることが判明し、またわたしたちの主にして王であられる陛下がよしとされますならば、本件についてその旨御返事くださるようお願いいたします。」

王による調査と返事

22 さて、ダレイオス王がバビロンにある王宮の記録保管所での調査を命じたところ、メディア州のエクバタナの要塞で、次のように記された一巻の巻物が発見された。

23 「キュロスの治世の第一年。キュロス王はエルサレムの主の神殿を建築することを命じた。そこは、絶えることのない火によって、人々がいけにえを献げる場所である。

24 その高さを六十ペキス、幅を六十ペキスとし、三層は切り石、一層はその土地の新しい木材を使用し、工費はキュロス王の宮廷から支払われる。

25 また、ネブカドネツァルがエルサレムの神殿から持ち出してバビロンへ運び込んだ主の神殿の聖なる祭具類、すなわち金銀の祭具類は、それがかつて納められていたエルサレムの神殿に返却され、そこに置かれる。」

26 そこでダレイオス王は、シリアとフェニキアの長官シシネと、シェタル・ボゼナイおよびその同僚でシリアとフェニキアの知事に任命されている者たちに対して、その場所に立ち入らないよう指示した。また、ユダヤの長官で主の僕であるゼルバベルとユダヤ人の長老たちが主の神殿を元の場所に再建できるように配慮せよと指示した。

27 「わたしは、建築が完了し主のための神殿が完成するまで、ユダヤへの帰還者に手を貸すよう命じる。

28 この者たちが主に献げるいけにえ、すなわち雄牛、雄羊、小羊を調達できるようコイレ・シリアとフェニキアからの貢ぎ物の一部を、長官ゼルバベルを介して間違いなく支給すること、

29 また、小麦、塩、酒、油など、エルサレムの祭司たちが日々の務めに必要とする分を、毎年絶やすことのないよう、何も言わずに、支給することを命じた。

30 これらの処置は、王とその臣下のため、いと高き神にぶどう酒の献げ物が供えられ、長寿を願う祈りがささげられるためである。」

31 そして、王は命じた。「以上述べたことおよび書き記したことの、たとえ一項でもこれに違反し、これを軽視する者は、家の梁を引き抜かれ、その梁につるされたうえ、財産は王室のものとなる。

32 エルサレムの主の神殿に対して手を出して妨害したり、悪事を働いたりする王や民族を、かの地でその御名が呼び求められている主が、ことごとく滅ぼされるように。

33 以上のことが細心の注意をもって実施されるように、わたしダレイオス王がここに勅令を発する。」

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エズラ記(ギリシア語) 7

神殿工事の完成

1 コイレ・シリアとフェニキアの長官シシネと、シェタル・ボゼナイおよびその同僚たちは、ダレイオスの下したもろもろの指示に従って、

2 ユダヤ人の長老たちや神殿の管理者たちを助け、注意深く神殿工事の監督に当たった。

3 二人の預言者ハガイとゼカリヤの預言に励まされて、神殿工事は順調に進んだ。

4 工事は、イスラエルの神、主の命令と、歴代のペルシアの王キュロス、ダレイオス、アルタクセルクセスの認可のもとに、ペルシア王ダレイオスの第六年に完成した。

5 聖なる神殿が完成したのは、ダレイオス王の第六年、アダルの月の二十三日であった。

神殿の奉献

6 イスラエルの子らは、祭司もレビ人もその他捕囚から帰って来た者たちも皆、モーセの書に従って事を運んだ。

7 彼らは主の神殿の奉献のために、雄牛百頭、雄羊二百匹、小羊四百匹を献げ、

8 全イスラエルの罪の贖いのために、イスラエルの十二部族の長の数と同じ十二匹の雄の子山羊を供えた。

9 祭服を着けた祭司たちとレビ人たちは、モーセの書に従って、各部族ごとにイスラエルの神、主のための祭儀を行った。門衛たちもそれぞれの門を守った。

10 祭司とレビ人が清めを行った第一の月の十四日に、捕囚から帰ったイスラエルの子らは過越祭を祝った。

11 捕囚からの帰還者全員が清めを行ったわけではなかった。しかし、レビ人たちは全員が清めを行い、

12 兄弟の祭司たちや自分たちをはじめ、捕囚から帰った者たち全員のために過越のいけにえを屠った。

13 イスラエルの子らの帰還者たちは、だれ一人この地の異民族の偶像に近づくことなく、全員が主を求めて、過越の食事をとった。

14 彼らはまた、主の前で喜びつつ、除酵祭を七日間祝った。

15 主が、イスラエルの子らに対するアッシリア王の気持を改めさせ、イスラエルの神、主のための工事を支援させられたからである。

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エズラ記(ギリシア語) 8

エズラ

エズラの登場

1 さて、これらの出来事の後、ペルシア王アルタクセルクセスの治世中にエズラが登場する。エズラの父はセラヤ、祖父はアザルヤ、更にヒルキヤ、サレム、

2 ツァドク、アヒトブ、アマルヤ、エジア、マレロト、ゼラフヤ、サウヤ、ボカ、アビシュア、ピネハス、エルアザル、そして最初の祭司アロンとさかのぼる。

3 このエズラは、イスラエルの神から授けられたモーセの律法に精通した書記官として、バビロンからエルサレムへ上って来た。

4 王はエズラに栄誉を与え、彼の望むすべてのことに対して好意的であった。

5 エルサレムへの同行者の中にはイスラエルの子ら、祭司たち、レビ人たち、詠唱者、門衛たちのほかに神殿の使用人たちも含まれていた。

6 それはアルタクセルクセスの治世の第七年の第五の月――アルタクセルクセスにとっては王になって七年目である――のことであった。彼らは、第一の月の新月の日にバビロンを出発し、主が彼らにお与えになった安全な道をたどって、第五の月の新月の日にエルサレムに到着した。

7 学識豊かなエズラは、主の律法と掟を一項たりともおろそかにせず、全イスラエルに定めと裁きの一切を教えた。

アルタクセルクセスの勅令

8 アルタクセルクセス王から祭司であり主の律法の朗読者であるエズラのもとに勅書が届いた。その写しは以下のとおりである。

9 「アルタクセルクセス王より、祭司にして主の律法の朗読者であるエズラに挨拶を送る。

10 わたしは好意をもって命じる。ユダヤ民族、祭司、レビ人およびわたしの王国内にいる者のうちで帰還の意志があり、そう決心した者はだれでも、あなたと共にエルサレムに旅立つように。

11 そこであなたは、わたしとわたしの顧問官である七人の友人たちの決定に従い、帰還を願っている者たちと共に速やかに出発し、

12 ユダヤとエルサレムの実情が主の律法に書き記されているとおりかどうか調べてみるがよい。

13 あなたたちは、わたしとわたしの友人たちが約束したイスラエルの主のために献げる贈り物のほか、あなたたちがバビロニアの地で得た金銀、またあなたたちの同胞がエルサレムにある彼らの主の神殿に献納しようとするものすべてを主のためにエルサレムに持って行くがよい。

14 金銀を集めて雄牛、雄羊、子山羊その他のいけにえを調達して、

15 主のもとに携え、エルサレムにある主の祭壇の上に献げるがよい。

16 あなたが兄弟たちと共に望むことは、それが金銀で賄えるものならば、あなたが信じる神の御旨に従って果たすがよい。

17 主のための聖なる祭具類は、エルサレムにあるあなたの神の神殿で用いるようあなたに引き渡される。あなたはエルサレムにおいて、神の御前に安置するがよい。またこれ以外にも、あなたの神の神殿で使用するために必要とするものは、

18 国庫から支払われる。

19 わたしアルタクセルクセス王は、シリアとフェニキアの財務官たちに、祭司にして至高の神の律法の朗読者エズラが使者を遣わしたとき、銀ならば百タラントンまで、

20 小麦ならば百コル、酒ならば百樽、また塩ならば多量のものを怠りなく与えるよう指示する。

21 神の律法の書に従って行うことはすべて、至高の神のために細心の注意を払って行え。王とその子孫の国の上に神の怒りが臨まないためである。

22 わたしはあなたたちに宣言する。わたしは祭司、レビ人、詠唱者、門衛、神殿の使用人およびこの神殿で働く者のいずれからも、いかなる税も、またその他のいかなる貢ぎ物をも要求せず、何人もこれらの者に課税する権限を持たない。

23 エズラよ、あなたは神の知恵に従って、シリアとフェニキア全土に住む、あなたの神の律法を心得ている者すべてを裁く裁判官と判事を任命するがよい。そして律法を知らない者にはそれを教えるがよい。

24 あなたの神の律法とわたしの王国の法に違反する者は例外なく、死刑、罰金刑もしくは追放刑の罰を受けるであろう。」

感謝の言葉

25 「ああほむべきかな、ただ主こそは。主はエルサレムにある御自分の神殿に栄光を輝かされるために、王の心にこのような思いを起こされた。

26 主は、王と王の顧問官、王のすべての友人、高官たちの前で、わたしに名誉を与えられた。

27 わたしは、わたしの神、主の助けにより励まされ、わたしと共に帰還する者をイスラエルのうちから集めた。」

同行の帰国者

28 「以下は、アルタクセルクセス王の治世中に、先祖ごとにまたは組別に、わたしと共にバビロンからエルサレムへ上った家長たちである。

29 ピネハスの一族のゲルショム。イタマルの一族のガメル。ダビデの一族のシェカンヤの子ハトシュ。

30 パルオシュの一族のゼカルヤ。彼は登録された百五十人の男を率いた。

31 パハト・モアブの一族のゼラフヤの子エリアオニア。彼は二百人の男を率いた。

32 ザトエスの一族のヤハジエルの子シェカンヤ。彼は三百人の男を率いた。アディンの一族のヨナタンの子ベン。彼は二百五十人の男を率いた。

33 エラムの一族のゴトリアの子エシア。彼は七十人の男を率いた。

34 シェファトヤの一族からはミカエルの子ザラヤ、および彼と共に帰国した七十人の男。

35 ヨアブの一族からはイエゼルの子オバドヤおよび彼と共に帰国した二百十二人の男。

36 バニアの一族からはヨシフヤの子シェロミト、および彼と共に帰国した百六十人の男。

37 ベバイの一族からはベバイの子ゼカルヤ、および彼と共に帰国した二十八人の男。

38 アスガトの一族からはハカタンの子ヨハナン、および彼と共に帰国した百十人の男。

39 最後のアドニカムの一族からは、エリフェレト、エウエル、シェマヤと呼ばれる者、および彼らと共に帰国した七十人の男。

40 バゴの一族からはイスタルクルの子ウタイ、および彼と共に帰国した七十人の男。」

神殿奉仕者の召集

41 「わたしは彼らをテラと呼ばれる川のほとりに集めると、そこに三日間宿営して、彼らを調べた。

42 するとその中には、祭司族の者もレビ族の者も一人としていないことが判明した。

43 わたしは指導的地位にあり、知恵に優れたエレアザル、イドエル、マアスマン、エルナタン、シェマヤ、ヨリブ、ナタン、エナタン、ゼカルヤ、メシュラムのもとへ使者を送り、

44 王室財務担当の官吏アダイのもとへ赴くよう彼らに要請した。

45 そして、わたしたちの主のために神殿で祭司の職務を果たしてくれる者たちをわたしたちのもとへ派遣してくれるよう、アダイとその兄弟たち、および王室財務担当の他の役人たちと交渉することを彼らに命じた。

46 すると使者は、主の力強い御手により、イスラエルの子レビの子マフリの子孫の中から知恵に優れた男たちを連れて来た。すなわちアセベビアと彼の息子たちおよび兄弟たち十八人、

47 カヌナイの一族であるハシャブヤ、アヌン、兄弟オサヤおよび彼らの息子たち二十人、

48 またダビデや他の指導者たちがレビ人の奉仕のためにかつて任命した神殿の使用人の中から二百二十人の男子である。これらの者たち全員の氏名が登録された。」

旅の安全の祈願

49 「わたしはその場で、若者たちが主の御前で断食し、

50 わたしたちと同行する子供たちおよび家畜の安全な旅路を主に願うよう、彼らに求めた。

51 というのもわたしはこの上、道中の安全のために護衛する歩兵と騎兵を王に要請することがはばかられた。

52 わたしたちは既に王に対してこう言っていたからである。『主の力は、主を求める人と共にあって、常に正しい方へ導かれる』と。

53 そしてわたしたちは再び、旅路の安全について主に願い、主の憐れみを得た。」

祭具類とその運び手

54 「わたしは祭司の家系の長たちの中から十二人を選び、シェレブヤ、ハサミアおよび二人の兄弟たちの中から十人の男子を選んで、

55 王とその顧問官や高官たち、および全イスラエルが差し出した金と銀、またわたしたちの主の神殿の聖なる祭具類の重量を量り、

56 また、銀六百五十タラントン、銀の祭具類百タラントン、金の祭具類百タラントン、金の皿二十枚、金のように燦然と輝く良質の青銅器十二を量って彼らに引き渡した。

57 そしてわたしは彼らに言った。『あなたがたは主のために聖別されている。これらの祭具類もまた聖なる物である。これらの金と銀は主、わたしたちの先祖の主に献げられるものである。

58 あなたがたはこれを、祭司とレビ人の長、およびエルサレムにいるイスラエルの各部族の長に主の神殿の祭司室で引き渡すので、これらを心して守らなければならない。』

59 こうして祭司とレビ人は、金と銀、および本来エルサレムにあるべき祭具類を主の神殿へ運ぶこととなった。」

エルサレムへの帰還

60 「第一の月の十二日にテラ川のほとりを出発したわたしたちは、主が与えてくださった力強い助けにより、エルサレムに入ることができた。主は道中、すべての敵からわたしたちを守られたので、エルサレムに入ることができたのである。

61 三日の後、金と銀は量り直され、主の神殿でウリヤの子、祭司のメレモトに引き渡された。

62 計量の際、ピネハスの子エルアザルが立ち合い、また二人のレビ人イエシュアの子ヨサブドとサバンの子モエトも同席した。数と重さとが調べられ、総重量がその場で記録された。

63 このときの捕囚から帰った者たちはイスラエルの神、主のためにいけにえを献げた。それは全イスラエルのためのいけにえとして雄牛十二頭、雄羊九十六匹、小羊七十二匹、和解の献げ物のための雄山羊十二匹だった。

64 彼らはまた王の勅書を王の財務官とコイレ・シリアとフェニキアの両長官に手渡した。彼らは、この民族と、主の神殿の栄光をたたえた。」

不法な行為の発覚

65 「さて、これらのことをなし終えたとき、指導者たちがわたしのもとへやって来て言った。

66 『イスラエルの民は頭たちや祭司、およびレビ人まで、土地の異民族であるカナン人、ヘト人、ペレツ人、エブス人、モアブ人、エジプト人、イドマヤ人の不浄をいとわず、一緒に暮らしております。

67 彼らとその息子たちは異民族の娘たちと暮らし、その結果、聖なる種子は土地の異民族の中に混じり込みました。指導者や高官たちも、初めからこの不法な行為にあずかっておりました。』

68 これを聞いたわたしは、即座に衣服と祭服とを引き裂き、頭髪とひげとをかきむしり、嘆きと憤りに満たされて座した。

69 するとイスラエルの主の言葉に激しく動かされた者たちが次々とわたしのもとへ集まって来たが、わたしはこの不法な行為を嘆き、夕方のいけにえを献げるときまで憤って座したままだった。」

ざんげと嘆願

70 「断食していたわたしは身を起こし、自ら引き裂いた衣服と祭服とを身に着けたままひざまずき、両手を主に差し伸べて言った。

71 『主よ、わたしは恥じ入っております。わたしはあなたの前に深く恥じております。

72 わたしたちが犯した罪はわたしたちの頭の高さを越えて積み重なり、無知ゆえに犯した罪は天にまで達します。

73 先祖の時代から今日に至るまでわたしたちは大きな罪のうちにあります。

74 わたしたちと先祖の罪のために、わたしたちは、兄弟や王、祭司と共に地の諸王に引き渡され、剣と捕囚と略奪にゆだねられ恥辱に満ちて今日に至っております。

75 ところが主よ、今あなたは大きな憐れみをかけてくださり、あなたの聖なる地に一つの根と一つの名をわたしたちのために残してくださいました。

76 またあなたは、主の神殿では、覆いを取り外して光を与え、また奴隷の身であったときには食物をお与えくださいました。わたしたちが奴隷の身であったときですら、主はわたしたちをお見捨てにならず、

77 ペルシアの王の前でわたしたちに慈しみを示し、食物を与えてくださったのです。

78 また主はわたしたちの神殿に栄光を輝かされ、荒れ果てたシオンを再興し、ユダヤとエルサレムにおける確固たる地位をお与えになりました。

79 これほど恵まれたわたしたちです。主よ、これ以上何を求めることができましょう。わたしたちは、あなたが僕である預言者たちを介して与えてくださった戒めを破ったのです。あなたはこう告げられました。

80 「お前たちがこれから行って所有する地は、土地の異民族たちに汚されている。彼らはそこを自分たちの汚れで満たしている。

81 それゆえ、お前たちは、息子を彼らの娘と一緒にさせてはならない。またお前たちの娘を彼らの息子に与えてもならない。

82 お前たちは今後、彼らと親しくしてはならない。お前たちが強い民族となって地の良き物を食べ、お前たちの子孫に代々その地を残すためである。」

83 今回の不祥事は全く、わたしたちの邪悪な行いとわたしたちの大きな罪のせいです。主よ、あなたはわたしたちの罪を軽くしてくださり、

84 これほど立派な根をわたしたちに与えてくださいました。それにもかかわらず、わたしたちは再び悪に戻り、土地の異民族たちの汚れに染まって、あなたの律法を破りました。

85 ですから、あなたはわたしたちに対して激怒され、わたしたちを根も、種も、名も残らぬほどに滅ぼそうとされて当然です。

86 イスラエルの主よ、あなたは真実な方です。わたしたちを今日まで根として残してくださったからです。

87 御覧ください。わたしたちは、律法に背いた者としてあなたの前におります。このような状態でだれも御前に立つことはできません。』」

エルサレムの集会

民の罪の告白と反省

88 エズラが神殿の前にひれ伏して、罪を告白し、泣き伏していると、エルサレムから、男や女、若者たちが群れを成して、エズラのもとに集まって来た。一同の悲嘆の声は激しかった。

89 そして、イスラエルの子孫であるエヒエルの子エコニアが声をあげてエズラに言った。「わたしたちは主に対して罪を犯し、土地の異民族の女たちと暮らしてきました。しかし今、イスラエルには希望があります。

90 このことについてわたしたちは主に誓いを立てるべきです。『あなたと、主の律法に従順である者との勧告に従って、異民族の女全員をその子供と共に追放する』と。

91 さあ、すぐに実行してください。これはあなたの仕事です。わたしたちも手伝います。」

92 そこでエズラは立ち上がり、全イスラエルの祭司とレビ人の氏族の指導者たちにこれを実行することを誓わせた。彼らは誓った。

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エズラ記(ギリシア語) 9

1 エズラは立ち上がって、神殿の中庭からエルヤシブの子ヨハナンの祭司室へ赴き、

2 そこで一夜を明かした。彼は、民の犯した大きな罪を嘆いて、飲食を断った。

3 そして、捕囚から帰って来た者たち全員に対し、エルサレムに集合するようにとの布告が、ユダヤ全土とエルサレムに発せられた。

4 民の指導者である長老たちの決定に従って、二日ないしは三日以内に出頭しない者たちは、その家畜を神殿に没収され、当人は捕囚から帰って来た人々の仲間から外されることになった。

5 ユダ族とベニヤミン族出身の者は全員、三日以内に、すなわち、第九の月の二十日までにエルサレムに集合した。

6 一同は、冬の烈風に打ち震えながら神殿の広場に腰を下ろした。

7 エズラは立ち上がって彼らに言った。「お前たちは律法を破って、異民族の女どもと結婚し、イスラエルに対して罪を増し加えた。

8 お前たちは犯した罪を今、告白し、先祖の神である主の栄光を輝かせよ。

9 お前たちは主の御旨を行い、土地の異教徒から、また異民族の女たちから遠ざかれ。」

10 これに対して一同は、声をあげて言った。「あなたの言われるとおりにいたします。

11 ただ、人々の数は多く、冬のさなかにこうして屋外に立っていることはできません。それに、一日や二日でできることでもありません。大勢の者がこの罪を犯しているからです。

12 指導者たちはここに残し、わたしたちの中で異民族の女を妻としている者は全員、日を決めて出頭させるようにしてください。

13 またこの罪に対する主の怒りが解けるよう、それぞれの地の長老や裁判官をも出頭させてください。」

14 この問題は、アザエルの子ヨナタンとトカンの子ヤフゼヤにゆだねられ、メシュラム、レビ、および、シャベタイが彼ら二人に協力することになった。

15 そして捕囚から帰って来た者たちはこれを実行に移した。

16 祭司エズラは氏族の指導者を一人一人名指して選び、彼らは第十の月の新月に事実調査のために集まった。

17 こうして、異民族の女たちと一緒になっている者たちの問題は、第一の月の新月までには解決をみた。

18 ところで、祭司の中で異民族の女をめとった者が集められたが、それは次のとおりである。

19 ヨツァダクの子イエシュアの息子たちおよびその兄弟たちの中のマアセヤ、エレアザル、ヨリブ、ヨダン、

20 ――彼らは、妻を追い出すことを誓い、自分たちの無知による罪の贖いとして雄羊を献げた――

21 イメルの息子たちの中のハナニア、ゼバドヤ、マネ、シェマヤ、エレエル、アザリア、

22 パシュフルの息子たちの中のエリオナイ、マアセヤ、イシュマエル、ネタンエル、オキデル、サルタ。

23 またレビ人の中ではヨザバド、シムイ、コリ、すなわちケリタ、パタフヤ、ユダ、ヨハナ、

24 詠唱者の中ではエルヤシブ、バクル、

25 門衛の中ではシャルム、トルバネ。

26 イスラエル族に関しては、パルオシュの子孫の中では、エルマ、イジヤ、マルキヤ、ミヤミン、エルアザル、ハシビア、ベナヤ、

27 エラムの子孫の中では、マタンヤ、ゼカルヤ、エズリエル、アブディ、エレモト、エリヤ、

28 ザモトの子孫の中では、エリアダ、エリアシム、オトニア、エレモト、サバト、ゼルダヤ、

29 ベバイの子孫の中では、ヨハナン、ハナンヤ、ザブド、エマティ、

30 マニの子孫の中では、オラム、マルク、エダイ、ヤシュブ、アサエル、エレモト、

31 アディの子孫の中では、ナアト、マアセヤ、ラクン、ナイド、マタンヤ、セステル、バルヌ、メナシェ、

32 ハナンの子孫の中では、エリオナ、アサヤ、マルキヤ、サバヤ、シムオン、コサマイ、

33 ハシュムの子孫の中では、マルタナイ、マタティア、サバダイ、エリフェレト、メナシェ、シムイ、

34 バアニの子孫の中では、エレミア、マアダイ、マエル、ユエル、マムダイ、ペディア、アノス、カラバシオン、エルヤシブ、マムニタナイム、エリアシス、バヌス、エリアリス、シムイ、シェレムヤ、ナタニア、エゾラの子孫の中では、シャシャイ、エズリル、アザエル、サマト、ザムブリ、ヨセフ、

35 ノオマの子孫の中では、マジティア、ザバダヤ、エダイ、ユエル、ベナヤである。

36 以上の者全員が異民族の女と結婚していた。彼らは女たちを子供たちと共に追い出した。

律法の朗読

37 祭司や、レビ人、およびイスラエルの一部の人々はエルサレムとその地方に住んでいた。――イスラエルの子らは彼らだけの共同体を作っていたが――第七の月の新月には、

38 全員うちそろって、神殿の東の門の広場に集まった。

39 彼らは、大祭司であり律法の朗読者であるエズラに対して、イスラエルの神、主が授けられたモーセの律法の巻物を持って来るようにと願った。

40 大祭司エズラは、第七の月の新月に、男女の会衆および祭司全員に向かって朗読するために律法の巻物を持って来た。

41 エズラは神殿の門の前の広場で、男女を前にして夜明けより正午まで朗読し、一同は熱心にこの律法に耳を傾けた。

42 そのとき、祭司であり律法の朗読者であるエズラは、用意された木製の台の上に立った。

43 その傍ら、すなわち右側にはマティトヤ、シェマ、ハナニア、アザリア、ウリヤ、ヘゼキア、バアルサムが、

44 左側にはペダヤ、ミシャエル、マルキヤ、ロタスブ、ナバリア、ゼカルヤが立った。

45 エズラは――すべての者の目の届く最前列に座を占めていたが――人々の前で律法の巻物を取り出し、

46 それを開くと、全員が起立した。エズラはいと高き神、全能である万軍の神、主を賛美した。

47 すると一同は「アーメン」と答え、両手を上に差し伸べ、地にひれ伏して神を礼拝した。

48 次いで、レビ人のイエシュア、アニウス、シェレブヤ、ヤディン、ヤクブ、シャベタイ、ハウタヤ、マイアナ、ケリタ、アザルヤ、ヨザバド、ハナニア、ペラヤが主の律法を解説した。すなわち彼らは、人々に向かって主の律法を読みながら、それを人々の心に植え付けていった。

49 ハタラテスは大祭司であり朗読者であるエズラと、人々に律法を解説しているレビ人一人一人に向かって言った。

50 「今日は主に献げられた聖なる日である。」――すべての者が律法を聞きながら涙を流した――

51 「あなたがたは、これから行って脂身を食べ、甘いぶどう酒を飲み、貧しい者たちにも分けてやりなさい。

52 今日は主に献げられた聖なる日である。悲しんではいけない。主があなたがたに栄光を現されたからだ。」

53 レビ人もすべての人々に向かって言った。「今日は聖なる日である。悲しんではいけない。」

54 そこで彼らは全員出て行き、食べたり飲んだりして陽気に時を過ごし、また貧しい者たちにも施しをして彼らを大いに楽しませた。

55 彼らは語られた言葉に納得したのである。そして彼らは再び集合した。………

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ダニエル書補遺 ベルと竜 1

ベル神の物語

1 アスティアゲス王が死んで先祖の列に加わり、ペルシア人のキュロスが、その王国を継いだ。

2 ダニエルはこの王の側近を務めており、王のすべての重臣たちよりも高く用いられていた。

3 バビロニア人たちはある偶像を礼拝しており、その名をベルといった。人々は毎日、十二升の上質の小麦粉と四十匹の羊と六樽のぶどう酒を、その像のために費やしていた。

4 王はベル神を敬い、毎日、礼拝にやって来た。しかし、ダニエルは自分の神を礼拝していた。そこで、王はダニエルに言った。「お前はなぜベル神を礼拝しないのか。」

5 ダニエルは、「わたしは手で造った偶像などではなく、天地を造られ、すべての生き物を支配しておられる生ける神を礼拝しているからです」と答えた。

6 すると、王はダニエルに言った。「ベル神が生ける神であるとお前は思わないのか。毎日、どれだけベル神が召し上がり、お飲みになっているかお前は見ていないのか。」

7 ダニエルは笑って言った。「王様、だまされてはなりません。あれは内側は粘土で、外側は青銅でできていて、飲み食いするわけがございません。」

8 王は怒って、ベル神の祭司たちを呼びつけて、言った。「これほどの費用のものを平らげているのはだれか、わたしに告げることができないなら、お前たちは死を免れない。

9 しかし、もし、ベル神が食べておられることを証明するなら、ダニエルこそ死を免れない。ベル神を冒涜したからだ。」ダニエルは王に、「あなたのお言葉どおりになさってください」と言った。

10 さてベル神の祭司たちは、女、子供を除いて、七十名いた。王はダニエルを伴って、ベルの神殿に入った。

11 ベル神の祭司たちは言った。「さあ、王様、私どもは外に出ています。あなたが食物をお供えし、ぶどう酒に香料を混ぜてそこに置き、扉をしっかり閉ざしてあなたの指輪で封印してください。

12 そして、明朝早くおいでになって、ベル神が全部食べてしまわれたのを御覧になれない場合には、私どもは死を甘んじて受けましょう。しかし、その反対であったならば、我々を陥れようとしてうそをついたダニエルこそ死ぬべきです。」

13 祭司たちは事態を軽く見ていた。というのは、彼らは、供物台の下に、隠し扉を作っており、いつもそこから入っては供え物を飲み食いしていたからである。

14 さて祭司たちが出て行くと、王はベル神に食物を供えた。一方、ダニエルは自分の召し使いたちに命じて灰を運んで来させ、王しかいないのを確かめてそれを神殿中にまかせた。それから、皆、外に出て扉を閉め、王の指輪で封印し、立ち去った。

15 夜になり、いつものように、祭司たちとその妻や子供たちがやって来て、すべてを食い、飲み尽くした。

16 その翌朝、王は早々と起きてやって来た。ダニエルも一緒だった。

17 王は言った。「ダニエルよ、封印に異常はないか。」ダニエルは、「王様、異常はございません」と答えた。

18 王は扉が開かれるとすぐに、目を供物台の上に注いだ。王は大声で叫んだ。「偉大なるかなベル神よ、あなたには一かけらの偽りもない。」

19 しかしダニエルは笑って、王が中に入らないように押しとどめ、「その床を御覧ください。あの足跡がだれのものかをお調べください」と言った。

20 王は、「なるほど、これは男と女と子供との足跡だ」と言い、

21 憤って、祭司たちをその妻や子供たちと共に捕らえさせた。ついに彼らは、供物台の上のものを平らげるために出入りした隠し扉を王に示した。

22 王は彼らを処刑し、ベル神の処置をダニエルに任せた。ダニエルはベル神とその神殿を打ち壊した。

竜神の物語

23 さて、一匹の巨大な竜がいた。バビロニア人たちは、これをあがめていた。

24 王はダニエルに言った。「この竜が生ける神ではない、といかにお前でも言えまい。これを礼拝せよ。」

25 ダニエルは王に言った。「わたしは、わたしの神である主を礼拝します。その方こそ生ける神だからです。

26 王様、お許しをいただければ、剣も棍棒も用いずに、この竜を殺してみせましょう。」王は「許す」と言った。

27 そこで、ダニエルは、ピッチと油脂と毛髪とを取り、一緒に煮て、だんごを作り、竜の口に入れた。竜はそれを呑み込むやいなや体が裂けた。ダニエルは言った。「御覧ください。これが、あなたがたがあがめていたものです。」

28 バビロニア人たちは、このことを聞いて非常に怒り、王に抗議するために集まって、言った。「王はユダヤ人になってしまった。ベル神を打ち壊し、竜神を殺し、その祭司たちを滅ぼした。」

29 そして王のもとにやって来て言った。「ダニエルを我々に渡してください。さもなければ、あなたと御家族のお命をいただきます。」

30 王は、彼らがあくまでも主張するのを見て、しかたなしに、ダニエルを彼らに渡した。

31 彼らは、ダニエルを獅子の洞窟に入れた。彼はそこに六日間入れられた。

32 ところで、その洞窟には七頭の獅子がおり、毎日、人間二人と二匹の羊がえさに与えられていた。しかしこの度は、ダニエルを食い尽くさせるために、何もえさを与えていなかった。

33 さて、ユダヤに預言者ハバククがいた。彼はシチューを作り、パンを裂いて器に入れ、刈り入れをしている人たちに届けるため、畑に行くところだった。

34 そのとき、主の使いがハバククに言った。「あなたが持っているその食べ物を、バビロンの獅子の洞窟にいるダニエルのところに持って行きなさい。」

35 ハバククは言った。「主よ、わたしはバビロンを見たこともなく、ましてその洞窟など知りません。」

36 すると主の使いは、ハバククの頭のてっぺんをとらえ、髪の毛をつかむやいなや、息の一吹きで、彼をバビロンの洞窟の前に立たせた。

37 ハバククは大声で言った。「ダニエル、ダニエル、この食べ物を受け取りなさい。神があなたに送ってくださったのです。」

38 ダニエルは言った。「神よ、あなたは、わたしを思い出してくださいました。あなたを愛する者たちをお見捨てにならないのです。」

39 そしてダニエルは立ち上がって、それを食べた。すると神の使いはハバククを、直ちに元の場所に帰した。

40 さて、七日目に、王は、ダニエルを悼むためにやって来て、洞窟の前に立ち、中をのぞき込んだ。なんと、ダニエルはそこに座っていたのである。

41 王は大声で叫んで言った。「ダニエルの神である主よ、あなたは偉大な方です。あなたのほかに神はいません。」

42 王はダニエルをそこから引き上げると、今度は彼を亡き者にしようとした者たちを洞窟に投げ入れた。彼らは王の見ている前で、瞬く間に食い尽くされた。

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ダニエル書補遺 スザンナ 1

1 バビロンにヨアキムという男が住んでいた。

2 男は妻をめとった。ケルキアの娘で、名をスザンナといい、大層美しく、主を畏れるひとであった。

3 また、彼女の両親も正しい人で、自分たちの娘をモーセの律法に従って教育した。

4 夫ヨアキムは、大変裕福で、その家の隣に美しい庭園を持っていた。ヨアキムは、この上なく評判の良い人であったので、ユダヤ人たちはよく彼の所に集まった。

5 さて、その年、民の中から裁判官として二人の長老が選ばれた。「バビロンで、民を治めるはずの裁判官である長老から不法が始まった」と主が語られたのは、この二人についてである。

6 二人はいつもヨアキムの家に詰めており、裁きを求める人々は皆、彼らのもとにやって来た。

7 正午になり人々が立ち去ると、スザンナは、夫の庭園に入り散策するのが常であった。

8 二人の長老は、彼女が毎日庭に入り散策するのを見て、彼女に欲情を抱くようになった。

9 二人は理性を失い、天から目を背けて仰ぎ見ることもせず、正しい裁きに心を用いることもしなくなった。

10 二人とも彼女ゆえにもんもんとしていたが、互いに自分の悩みを打ち明けることはしなかった。

11 彼女と交わりたいという自分の欲情を打ち明けるのが、恥ずかしかったからである。

12 彼らは、毎日、彼女と会う折を熱心にうかがっていた。

13 さて、一人がもう一方に、「さあ、家に帰りましょうか。昼食の時間です」と言った。二人はそこを出て別れた。

14 ところが、二人とも戻って来てばったり会ってしまった。それで互いに理由をただし、それぞれ自分の欲望を白状することになった。そのあげく二人は、彼女が一人でいるところを見つけようと、一緒に折をうかがうことにした。

15 彼らが、折をうかがっていると、彼女がいつものように侍女二人だけを伴って庭に出て来たが、非常に暑い日であったので、水浴びをしようと思った。

16 そこには、隠れてのぞいている二人の長老のほかは、だれもいなかった。

17 スザンナは侍女に、「オリーブ油と香油を持って来なさい。水浴びをしますから庭園の戸は閉めておきなさい」と言った。

18 侍女たちはスザンナに言われたとおり、庭園の戸を閉め、命じられたものを取りに、わきの戸口から出て行った。彼女らは、長老たちには気づかなかった。彼らが隠れていたからである。

19 侍女たちが出て行くと、二人の長老は立ち上がり、スザンナのもとに走り寄った。

20 彼らは言った。「ごらん。庭園の戸は閉じている。だれも見ていません。わたしたちは、あなたが欲しくてたまりません。言うことを聞いて身を任せなさい。

21 さもなければ、わたしたちは、『あなたが、若い男と一緒にいたので、侍女たちを下がらせたのだ』と証言します。」

22 そこで、スザンナは嘆息して言った。「わたしには逃げ道がありません。もし身を任せれば、わたしは死を免れません。もしそうしなければ、今度はあなたたちの罠にかかることになります。

23 そんなことをして主の前に罪を犯すよりは、あなたたちの罠にかかる方がましです。」

24 こう言って、スザンナは大声で叫びたてた。すると二人の長老も彼女に負けじと叫びたて、

25 一人が走って行き、庭園の戸を開け放った。

26 庭園の叫び声を聞きつけて、家の者たちは彼女の身に何事が起きたのかと、わきの戸口から駆け込んで来た。

27 そこで、長老たちは自分らの作り話をしたが、召し使いたちは非常に恥ずかしい思いでこれを聞いた。そのようなことは、スザンナについて言われたことがなかったからである。

28 翌日、人々が彼女の夫ヨアキムの家に集まったとき、二人の長老らもやって来た。二人は、スザンナを死罪に定めようというよこしまな考えを抱いていたのである。人々を前にして彼らは言った。

29 「ケルキアの娘、ヨアキムの妻スザンナを呼んで来なさい。」人々は彼女を呼びにやった。

30 スザンナは、両親や子供たち、それに親族の者たち皆と一緒にやって来た。

31 スザンナはたおやかで見目麗しい婦人だった。

32 かの無法者どもは、彼女がベールをかぶっていたので、それを取るように命じた。彼女の美しさを堪能しようと考えたのである。

33 彼女の身内の者も、見ていた人たちも皆泣いた。

34 二人の長老は、人々の中央に立ち、彼女の頭に手を置いた。

35 彼女は泣きながら天を仰いだ。心から主を信頼していたからである。

36 長老は言った。「我々が庭園を歩いておりますと、この女が二人のはしためを伴って入って来て、庭園の戸を閉め、彼女らを下がらせました。

37 すると、隠れていた一人の若者が彼女に近づき、彼女と一緒に横たわりました。

38 我々は庭園の片隅にいたのですが、このよこしまな行為を見て、彼らの方に走って行きました。

39 我々は、二人が情を交わしているのを見ましたが、その男を取り押さえることはできませんでした。彼は我々より力が強く、戸を開けて逃げてしまったのです。

40 そこで、我々はこの女を捕らえて、あの若者がだれかと問いただしましたが、

41 答えようとしませんでした。我々は、この事実を証言します。」集まっていた人々は、二人が民の長老であり、裁判官であるゆえに、その言葉を信じ、彼女を死罪に定めた。

42 すると、スザンナは、大声で叫んだ。「ああ、永遠の神、隠されたことを知り、あらゆることをその起こる前から知っておられる方よ。

43 彼らがわたしについて偽証したことをあなたはご存じです。御覧ください。この人たちが悪意をもって作り上げたことをわたしは何一つしませんでした。それなのに死なねばなりません。」

44 主は彼女の声を聞かれた。

45 彼女が処刑のために引かれて行くとき、神はダニエルという若者の内にある、聖なる霊を呼び覚まされた。

46 彼は大声で、「わたしは、この婦人の血について責任はない」と叫んだ。

47 それで、人々は皆、ダニエルの方を向いて、「あなたが言ったことは、いったい、どういうことなのか」と言った。

48 ダニエルは人々の真ん中に立って言った。「イスラエルの子らよ、あなたがたは、それほど愚かなのですか。究明もせず、真実も知らずに、イスラエルの娘を断罪するのですか。

49 もう一度、裁きの場に戻りなさい。なぜならこの二人は彼女について偽証したからです。」

50 そこで、人々は皆、急いで戻った。ほかの長老たちはダニエルに言った。「こちらへ来て我々の真ん中に座りなさい。そしてわたしたちにはっきり言いなさい。神があなたに長老の特権を与えられたのだから。」

51 ダニエルは彼らに言った。「あの二人を遠く引き離してください。わたしが審問いたします。」

52 それで、二人が別々に引き離されると、ダニエルはそのうちの一人を呼んで言った。「悪の日々を重ねてきた老いぼれよ、今や、あなたが過去に犯した罪の報いがやってきた。

53 主が、『罪なき人、正しい人を殺してはならない』と言っておられるにもかかわらず、あなたは不正な裁きを行い、罪なき人を断罪し、責めある者を見逃した。

54 あなたが彼女を見たと言うのなら言っていただきましょう。二人が一緒にいたのはどんな木の下でしたか。」それで彼は、「乳香樹の下だ」と答えた。

55 ダニエルは言った。「まさしくあなたは致命的な偽証をしたのだ。今や、神の使いが、神の判決を受け取り、あなたを二つに裂く。」

56 次にダニエルは彼を去らせ、他の一人を連れて来るよう命じた。ダニエルは彼に言った。「カナンの末裔よ、あなたはユダ族の子孫である資格はない。あなたは美貌に目がくらみ、欲情に心を迷わせた。

57 あなたたちはいつもこのように、イスラエルの娘たちにしていたのだ。彼女らは恐ろしさのあまりあなたたちに身を任せた。しかし、ユダの娘の中に一人、あなたたちのよこしまなふるまいに、屈服しなかった者がいる。

58 さて、わたしに答えていただきましょう。二人が一緒のところをあなたが捕らえたのは、どんな木の下でしたか。」彼は、「かしわの木の下だ」と答えた。

59 ダニエルは言った。「まさしくあなたも致命的な偽証をした。神の使いが剣を持ち、あなたを真っ二つに切り裂こうと待ち構え、あなたたちを討ち滅ぼす。」

60 すると全会衆は大声で叫び、神を、すなわち御自分に望みを置く人々を救われる神を賛美した。

61 人々は二人の長老に対して立ち上がった。なぜなら、彼らが偽証人であったことをダニエルが彼ら自身の証言によって明らかにしたからである。人々は二人がその隣人を陥れようとしたのと同じことを彼らに対して行った。

62 すなわちモーセの律法に従って二人を死刑に処したのである。こうしてこの日、無実の人の血が流されずにすんだ。

63 スザンナに不貞の事実がなかったと分かり、ケルキアとその妻は、自分たちの娘スザンナについて、彼女の夫ヨアキムと親族の者皆と共に、神をたたえた。

64 その日以来、ダニエルは偉大な者として人々に慕われた。

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マカバイ記 二 書簡 1

エジプト在住ユダヤ人への第一書簡

1 「エルサレムおよびユダヤの地に住むユダヤ人から、エジプト在住の兄弟たちに挨拶を送り、あなたがたの平安を祈る。

2 神があなたがたに恵みを与え、その忠実な僕アブラハム、イサク、ヤコブと結ばれた契約を心に留めてくださり、

3 あなたがたが神を敬い、強靭な心と積極的な精神をもって神の意志を実践するために、あなたがた全員に勇気を与えてくださるように。

4 神の律法と命令を守るにあたって、あなたがたの勇気を発揮させ、平安を与えてくださるように。

5 あなたがたの祈りを聞き入れ、あなたがたと和解し、悪の力がはびこるときにも、あなたがたをお見捨てにならないように。

6 我々はここで、あなたがたのために祈っている。

7 第百六十九年、デメトリオスが王位にあったときに、我々ユダヤ人は、当時数年続いて我々に襲いかかった艱難と危機のただ中で、あなたがたに書簡を送ったことがある。この艱難は、ヤソンとその一味の者たちが聖地と王国に反逆して立ち上がり、

8 神殿の門に火を放ち、罪なき人々の血を流したことで始まった。我々は主に祈り、聞き入れられたので、いけにえと上等の小麦粉を献げ、燭台に火をともし、パンを供えた。

9 今こそあなたがたも、このキスレウの月に、仮庵祭に倣って祝いをするように。

10 第百八十八年。」

エジプト在住ユダヤ人への第二書簡

「エルサレムおよびユダヤの住民と長老会議およびユダから、油注がれた祭司部族出身であり、プトレマイオス王の師でもあるアリストブロス、およびエジプト在住のユダヤ人に挨拶を送り、あなたがたが健やかであるように祈る。

11 かつて我々が王と戦っていたとき、神は我々を大いなる危険から救い出してくださった。我々は深く神に感謝している。

12 神聖な都で戦列を組んだ敵を神は撃退されたのである。

13 かの支配者とその無敵とも見えた軍隊は、ナナヤの神官たちの用いた巧妙な計略により、ペルシアに着いたとき、その神殿内で粉砕された。

14 アンティオコスは女神ナナヤと婚姻を結び、持参金として莫大な財宝を手に入れようと、王の友人たちと共にそこに現れた。

15 王はナナヤの神官たちが財宝を運んでくると、少数の者を従えて神殿の境内に入った。彼が入るやいなや、神官たちは神殿を閉め、

16 天井の格子に仕組まれた隠し扉を開いた。すると岩石が落下して、雷鳴のようなとどろきとともに、この支配者を打ち倒した。神官たちは、彼らの手足を切り離し、首を切り落として外にいる者たちに投げつけた。

17 何事においても、我らの神は賛美されますように。不敬虔な者どもを、このように亡き者とされたのだから。

18 我々は今、キスレウの月の二十五日に、神殿の清めの祭りを祝おうとしている。あなたがたにも仮庵祭のように、この灯火の祭りを祝ってほしいので、この灯火の祭りについて説明しておこう。この灯火は、ネヘミヤが神殿と祭壇を築き、いけにえを献げたときに現れたものである。

19 我々の先祖がペルシアに捕らわれて行ったとき、当時の敬虔な祭司たちは祭壇の聖火を持ち出し、それを、水のかれたある井戸の中にひそかに隠したが、そこはよい隠し場所だったので、だれにも知られないままになっていた。

20 それからかなりの歳月がたち、神のよしとされるときとなって、ペルシア王からユダヤへ派遣されたネヘミヤが、その火を手に入れるため、それを隠した祭司たちの子孫をそこに送った。

21 ところが彼らは火ではなく、粘りけのある水を見つけたと報告してきた。そこで、ネヘミヤは、それをくんで来るように命じた。いけにえが積み上げられたとき、ネヘミヤはその水を、まきとその上のいけにえに振りかけるように、祭司たちに言いつけた。

22 しばらくして、雲に隠れていた太陽が照りだすと、大きな炎が噴き上がったので、人々は非常に驚いた。

23 いけにえが焼き尽くされるまで、祭司たちと参列者一同は祈り続けた。その祈りはヨナタンが先唱し、それに一同が、ネヘミヤと共に唱和する形で行われ、

24 次のような祈りであった。『主よ、主よ、神であり、万物の造り主、畏れと力と正義と憐れみに満ち満ちた、唯一にして善なる王、

25 唯一の指導者、唯一正しく全能にして限りなく、イスラエルをすべての災いから救い出す方、先祖たちを選び、聖なる者とされた方。

26 あなたの民、全イスラエルのために、このいけにえを受け入れ、あなたの取り分を御覧になり、清めてください。

27 離散した同胞を集め、異邦人のもとで奴隷にされている者たちを解放し、虐げられ、疎まれている者たちにも心を配ってください。そして、あなたこそ我々の神であることを、異邦人たちにも悟らせてください。

28 過酷で傲慢不遜なやからを痛めつけてください。

29 モーセの言葉のとおり、あなたの民をあなたの聖なる場所に植えてください。』

30 この間祭司たちは、賛歌をうたい続けた。

31 いけにえが燃え尽きると、ネヘミヤは残りの水を大きな石に注ぐように言いつけた。

32 そのようにすると、炎は激しく燃え上がったが、祭壇の上からの光がそれに対向して輝き、その炎を消してしまった。

33 この出来事は知れ渡った。かの捕らえられて行った祭司たちが火を隠した場所で発見された水で、ネヘミヤたちがいけにえを清めたということがペルシア王にも伝わると、

34 王はこの出来事を確認したうえで、その場所に垣を巡らし、そこを聖域とした。

35 また、王は、自らが所有する多くの宝物を分け与え、彼らに恩恵を施した。

36 ネヘミヤたちはこれを『ネフタル』と名付けたが、一般には『ネフタイ』と呼ばれている。『ネフタル』とは、清めを意味する言葉である。

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マカバイ記 二 書簡 2

1 記録によると、捕らえられて行く人々に、かの火種を取って置くように命じたのは預言者エレミヤであった。

2 また、この預言者は、捕らえられて行く人々に律法の書を与え、主の掟を忘れないよう、また金銀の偶像やその装飾を見ても心を動かされないように命じている。

3 彼は更に言葉を変えて、心を律法から引き離すことのないようにと励ました。

4 更にこの書によれば、預言者は彼に与えられた託宣に従って、幕屋と契約の箱を携えて山へ出かけたという。モーセが神から約束の地を示された所である。

5 そこに到着したエレミヤは、人の住むことのできる洞穴を見つけ、そこに幕屋と契約の箱と香壇を運び込み、入り口をふさいだ。

6 一行の中の何人かが、道標を作ろうとして戻ってみたが、もはや洞穴を見つけることはできなかった。

7 このことを知ったエレミヤは、彼らを叱責してこう言った。『神が民の集会を召集し、憐れみを下されるときまで、その場所は知られずにいるだろう。

8 そのときになれば、主はそこに運び入れたものを再び示してくださり、主の栄光が雲とともに現れるだろう。モーセに現れたように、また、ソロモンが神殿の聖別式を厳かに行ったとき現れたように。

9 知者ソロモンは、神殿の新築と完成を祝っていけにえを献げたと伝えられている。

10 モーセが主に祈ったとき、天から火が下ってきていけにえを焼き尽くしたように、ソロモンが祈ったときも、火が下ってきて焼き尽くす献げ物を焼き尽くした。

11 モーセは言っている。「贖罪の献げ物を食べなかったので、天からの火がそれを焼き尽くしたのだ」と。

12 ソロモンもまた、モーセ同様八日の間祭りを行った。』

13 ネヘミヤ時代の諸文書や覚書には同様なことが記述されているほか、ネヘミヤが書庫を建て、歴代の王と預言者に関する書物、ダビデの諸文書、更には奉納物についての王たちの勅令を集めたことも記されている。

14 ユダもまた戦争のため散逸した文書を、我々のためにすべて集めてくれたので、それは現在、我々の手もとにある。

15 そこでもし、これらの文書があなたがたに必要なら、使いをよこしなさい。

16 さて我々は今、清めの祭りを祝おうとして、あなたがたに手紙をしたためた。それというのも、あなたがたがこれらの日を祝う以上、立派に執り行ってほしいからである。

17 神こそは、御自分の民全体を救い、それぞれに約束の地を与え、王制と祭司制と聖所を与えてくださった方である。

18 我々は今、律法を通して約束されたように、神が我々を憐れみ、速やかに天が下すべての地から、我々を聖なる所に集めてくださることを希望している。実に神は、過酷な災禍から我々を救い出し、この場所を清められたのである。」

19 以下のことはキレネ人ヤソンが五巻の著作に明記していることである。すなわち、ユダ・マカバイとその兄弟たちに関する事柄、大いなる神殿の清めと祭壇の奉献、

20 更にアンティオコス・エピファネスとその息子エウパトルに対しての戦い、

21-22 ユダヤ人の宗教を守り抜くため雄々しく戦った者たちに天から示された数々のしるし、すなわち、寛大なる主の憐れみにより、彼らが少人数にもかかわらず、全地方を奪回し、野蛮な異邦人たちを追い払い、全世界に聞こえた神殿を取り戻し、都を解放し、まさに瀕死の律法を蘇生させたこと、等々。

23 以上の五巻の事柄を、我々は一巻に要約したい。

24 それというのもヤソンの書は、物語の展開のみに興味を持つ人には、数字が多すぎ、資料が煩雑すぎると思われるからである。

25 物語の筋を追ってみたい人を夢中にさせ、暗唱したい人にはそれを容易にさせ、ともかくこの本を手にするすべての人に役立つように努めたい。

26 要約を自らに課してみたものの、これは心を削り、身をそぐ仕事であって、容易なことではない。

27 ちょうど、他人のために宴会の裏方に徹するときの苦労のように、多くの人を喜ばすためには、進んでこの労苦を我慢もしよう。

28 事細かな著述は著者ヤソンに譲り、我々は要約を記すことに徹しよう。

29 というのも、家を新築する際、棟梁は、構造全体を配慮しさえすればよいが、装飾や塗装を担当する者は、その部分がうまく調和しているかどうか気を配らねばならないからだ。我々の場合もまさしく同じだ。

30 細部に立ち至り、あれこれと論議、詮索するのは、物語の原著者の仕事で、

31 他方、文章を簡潔にし、煩雑なことに立ち入らないのは、我々要約者の仕事として当然ではないか。

32 前置きはこれぐらいにして話を始めることにしよう。いつまでも物語の入り口にとどまって、本題をおろそかにするのは愚かなことである。

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マカバイ記 二 書簡 3

ヘリオドロスの物語(3 1―40)

シモンの裏切り

1 さて、聖なる都は、完全な平和のうちに治められ、律法も非常によく守られていた。それは大祭司オニアの敬虔と悪への憎しみによるものであった。

2 当時は、諸国の王も聖地に敬意を払い、最上の贈り物をもって神殿に栄光を増し加えていた。

3 アジアの王セレウコスでさえ、いけにえに要するすべての出費を、王国の歳入から提供していた。

4 ところがビルガ族の出身で、神殿総務の長であるシモンという男が、都の市場の経営方針をめぐって、大祭司と衝突した。

5 形勢不利と見た彼は、当時コイレ・シリアとフェニキアの総督であった、トラサイアスのアポロニオスのもとに行き、

6 「エルサレムの宝庫には莫大な金があふれています。しかもいけにえのために使われている様子はないので、これを王の権限下に置くことが可能です」と告げた。

7 アポロニオスは王に謁見のおり、自分に密告のあった金について報告した。すると王は、宰相ヘリオドロスを選び、くだんの金を運び出せとの命令を与えて派遣した。

8 コイレ・シリアとフェニキアの町々の視察という名目で、ヘリオドロスは即刻出立した。しかし、実は、王の命令を実行するためであった。

9 エルサレムに到着した彼は、都の大祭司から友好的な歓迎を受けた後、例の情報と来訪の真意を告げ、聞き及んだ事について問いただした。

10 大祭司は言った。「その金は、やもめや孤児たちのための預託金であり、

11 他にあるとすれば、非常に身分の高いトビヤ家のヒルカノスのものである。あの神を畏れぬシモンが何を言っているか知らぬが、全額では銀四百タラントン、金二百タラントンである。

12 人々はこの場所が神聖であり、全世界の崇敬の的であるので、不正など起こりえないと信じている。どうしてその人たちを裏切るような支出ができようか。」

13 それに対しヘリオドロスは、王命を盾に取って、これらのものは王の宝庫のために没収すべきだと主張してやまなかった。

14 彼は執行日を定めると、調査のために中に入って行った。町全体が、大きな不安に包まれた。

15 祭司たちは祭服を着ると祭壇の前に身を投げ出し、天に向かい、預託金に関する律法を定めた方に嘆願して、「預けた人々のために、預託金を無事に守ってください」と言った。

16 大祭司の姿は見る者の心を痛めた。そのふるまいや表情には、内面の苦悩が表れていた。

17 彼は全身恐怖に包まれ、体が小刻みに震えていた。彼を見るすべての人に、その心の苦悶が伝わってきた。

18 聖所が今にも汚されようとしているので、男たちはこぞって家から飛び出すと、一丸となって嘆願の祈りをした。

19 胸の下を粗布で覆った女たちが、ちまたに群れを成し、ふだんは家にこもっている未婚の娘たちの中には、門に群れ走り、あるいは城壁に駆け登り、あるいは窓辺に立って身を乗り出す者がいた。

20 いずれにしても全員が、両手を天に差し伸べて哀願していた。

21 入り乱れてひれ伏す群衆や、大祭司の激しい苦悩の姿は、まことに痛ましかった。

22 人々は、預託金に万一のことがないように、預託者のためにそれを必ず守ってください、と全能の主に呼び求めた。

23 しかし、ヘリオドロスは決意を実行に移した。

ヘリオドロス、罰せられる

24 彼がその護衛兵と共に宝庫に足を踏み入れたまさにそのとき、霊とすべての権威を支配する者のすさまじい出現があり、不遜な侵入者たちは皆、神の力の一撃におののいて腰を抜かした。

25 見る者を震え上がらせるような騎士を乗せ、絢爛たる馬具で飾り立てた馬が現れ、ヘリオドロス目がけて前足のひづめで猛然と襲いかかった。馬上には金の鎧で身を固めた者が見えた。

26 その前に、二人の若者がいた。筋骨隆々、眉目秀麗、燦然たる装いで、ヘリオドロスを挟んで鞭の雨を浴びせた。

27 彼はたちまち地に倒れ、深い闇が彼を覆った。兵士たちは彼を担ぎ上げ、そこにあった長持ちに入れて運び出した。

28 今し方、多くの随員と護衛兵とを従えて前記の宝庫に侵入した男は、武器に手をかけるいとまもなく、神の力をまざまざと見せつけられるはめになったのである。

29 彼は神の力に圧倒されて声もなく、一切の希望と救いを剥奪されて捨て置かれた。

30 他方、人々は、聖所で不思議な業をなさった主を賛美し続けていた。こうして、つい先程まで恐怖と混乱の支配した神殿が、全能の主の出現のおかげで、歓喜にあふれることになったのである。

31 ヘリオドロスの腹心の者たちは慌てて、オニアに嘆願した。「息も絶え絶えのこの者に、いと高きお方が命を恵んでくださるよう、祈ってください。」

32 大祭司は、これはヘリオドロスに対するユダヤ人の陰謀だ、と王に誤解されるのを恐れ、この男の助命のためにいけにえを献げた。

33 大祭司が神に贖いのいけにえを献げていると、さきの若者たちが同じ服装で再び現れ、ヘリオドロスの前に立って言った。「大祭司オニアにあつく感謝せよ。主は彼に免じて、お前に命を恵んでくださったのだ。

34 天からの鞭を思い知ったからには、お前は、率先して神の偉大な力を万人に宣べ伝えるのだ。」こう言って、彼らは消え去った。

35 ヘリオドロスは主にいけにえを献げ、命を救ってくださったことにあつい感謝の祈りをし、更にオニアにも感謝し、兵を率いて王のもとに帰った。

36 ヘリオドロスは、自分が目撃したばかりの大いなる神の業を、一部始終にわたって、すべての人に進んで証言した。

37 もう一度エルサレムに派遣するのには、どんな人物が適当か、と王に問われたとき、彼はこう答えた。

38 「もし王に敵対する者や謀反人がいるようでしたら、その者をお遣わしください。仮に命を落とさないまでも、さんざん鞭打たれて戻ってくることになるでしょう。間違いなくあそこには、神の軍勢が宿っているのです。

39 天にお住まいの方が、かの聖所の守護者、助け手であって、悪事をたくらんでやって来る者を討ち滅ぼしてしまわれます。」

40 以上がヘリオドロスと、宝庫の守護に関する物語である。

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マカバイ記 二 書簡 4

アンティオコス・エピファネスのもとでの迫害(4 1―10 8)

オニアとシモンの争い

1 さて財宝と祖国をざん訴した例のシモンは、今度はオニアの悪口を言い、「ヘリオドロスを襲い、諸悪の元になったのは彼だ」と言って、

2 この都の功労者、同胞の保護者、律法の熱愛者を、強引に謀反人呼ばわりした。

3 人々の間に敵意が広がり、ついにはシモンの腹心の一人が、暗殺に訴えようとした。

4 オニアはこのままでは戦いになると恐れ、またメネステウスの息子でコイレ・シリア、およびフェニキアの総督アポロニオスが、シモンのこの悪事に加担していることも察知し、

5 王のもとに出かけて行った。同胞市民を告発するためではなく、市民全体の、公私両面にわたる益を考えてのことである。

6 彼は、王の手を煩わせる以外には、平和裡に事態を収拾することも、シモンにその愚行を思いとどまらすことも不可能だと思ったからである。

大祭司ヤソン、ギリシア文化を導入する

7 セレウコスが他界し、エピファネスと呼ばれるアンティオコスが王位を継承したとき、オニアの弟ヤソンは大祭司職を卑劣なやり方で手に入れた。

8 彼は王に謁見のおり、銀三百六十タラントンと、そのほか別の収入源から八十タラントンを約束した。

9 その上、大祭司の職務のほかに、もし王が、錬成場を設立し、そこに若者を集め、エルサレムで住民をアンティオキア市民として登録する権限をも彼に与えてくれるなら、更に、百五十タラントンを渡すと約束した。

10 王の後ろ盾で大祭司の地位を得た彼は、直ちに同胞の生活をギリシア風に変えさせた。

11 ヤソンは、王がエウポレモスの父ヨハネを通してユダヤ人に与えていた数々の恩典を取り消し、律法に沿った生活様式を破壊し、律法に背く風習を新たに取り入れた。このエウポレモスとは、ローマ人との友好と同盟関係を図って使節の役をしたことのある人物である。

12 ヤソンは図に乗って城塞の下に錬成場を建設し、頑健な青年たちには、一斉につばの広いギリシア帽をかぶらせた。

13 こうしてギリシア化と異国の風習の蔓延は、不敬虔で、大祭司の資格のないヤソンの、常軌を逸した悪行によって、その極みに達した。

14 その結果、祭司たちももはや祭壇での務めに心を向けなくなり、神殿を疎んじ、いけにえを無視し、円盤が投げられて競技の開始が告げられると、格闘競技場で行われる律法に背く儀式にはせ参じる始末であった。

15 彼らは、父祖伝来の名誉をないがしろにした反面、ギリシア人の栄光には、最大限の評価を与えた。

16 こうしたことが原因となって、ひどい苦難が彼らを見舞うことになったのである。彼らがその生活様式にあこがれを抱き、万事において仲間に入りたいと願っていた人々がまさに、彼らの敵、彼らに対する迫害者となったのである。

17 神が定めた律法を冒涜して、ただで済むわけがない。それは間もなく明らかになるであろう。

18 ティルスでは、王の臨席の下に、五年ごとに行われる競技会があったので、

19 この汚れた男ヤソンは、エルサレム住民の中から、アンティオキア市民の資格を持っている人々を観客として送り込んだ。その際、ヘラクレスに献げるためのいけにえの費用として、銀三百ドラクメを彼らに持参させた。ところがこれを持参した男たちは、「いけにえに用いるのは適当ではない。むしろ他の費用のために取っておこう」と考えたのである。

20 実際、彼らを送った人が、ヘラクレスのためにいけにえ用としたはずのこの銀は、それを持参した人々によってガレー船を仕立てる船賃にあてがわれてしまった。

アンティオコス・エピファネス、エルサレムで歓迎される

21 アンティオコスは、メネステウスの子アポロニオスをフィロメトル王の即位式に参列させるために、エジプトに派遣した。この結果彼は、フィロメトルが彼のとった措置を快く思っていないという情報を得たので、用心のためヤッファを経て、エルサレムにやって来た。

22 彼は松明と歓呼のうちに、ヤソンとエルサレムの町の大歓迎を受け、その後、フェニキアに陣を敷いた。

メネラオス、大祭司となる

23 三年後、ヤソンは、前に触れたシモンの兄弟メネラオスをアンティオコス王のもとに派遣した。金を持参して、差し迫った事態について王の指示を仰ぐためであった。

24 王に会うと、メネラオスは王を褒めちぎり、大物を気取り、ヤソンよりも銀三百タラントンも多く出し、大祭司職を奪い取った。

25 彼は王のさまざまな命を受けて帰って来たが、彼には大祭司に値するものなど一かけらもなく、むしろ彼は残忍な暴君の激情と野蛮な気性だけの男にすぎなかった。

26 こうして、かつて兄を出し抜いたヤソンが、今や他人に出し抜かれ、アンモン人の国に逃亡を余儀なくされたのである。

27 一方、最高権力を握ったメネラオスは、王に約束した金をびた一文も払わずにすましていた。

28 城塞の総指揮官ソストラトスは、金銭に関する事項も任されていたので、その支払いを要求した。このため、二人とも王のもとに召喚された。

29 メネラオスは大祭司の代理として兄弟リシマコスを、一方ソストラトスは、キプロス人の長官クラテスを留守に残した。

オニアの殺害

30 そうこうしているうちに、王は、タルソス市とマロス市を側室のアンティオキスに贈り物として与えたので、両市が暴動を起こすという事件が起きた。

31 そこで王は直ちに鎮圧に向かい、重要な政務を代行させるためアンドロニコスを後に残した。

32 メネラオスは好機到来とみて、神殿に属する黄金製の祭具を幾つか横領し、アンドロニコスに贈った。彼は、ほかにも祭具を自分のものとし、ティルスとその周辺の町々に売り飛ばしていた。

33 オニアはこれをはっきり見届けたうえで、アンティオキアの近くのダフネの聖域に退き、公然と非難した。

34 そこでメネラオスはひそかにアンドロニコスに会って、オニアを手に掛けるよう説得した。そこでアンドロニコスはオニアのもとに行き、欺いて信頼させ、誓いの言葉と共に右手を差し伸べて挨拶をした。そしてためらうオニアを聖域から誘い出し、正義を顧みもせずにすぐさま彼を殺してしまった。

35 このため、ユダヤ人ばかりでなく、他の国々の人までが大勢、残忍な殺害に動揺し、憤慨した。

36 王がキリキア地方から戻ると、市内のユダヤ人たちは、共鳴したギリシア人ともども、理不尽なオニア殺害に憤慨して、王に訴え出た。

37 アンティオコスも心底から悲しみを催し、憐れみに突き動かされ、他界した者の思慮深さと節度ある人格のゆえに涙した。

38 そして彼は激怒した。彼は直ちにアンドロニコスの紫の衣をはぎ取り、下着を切り裂き、全市中を引き回し、オニアを汚したまさにその場所で、この血に汚れた者を殺した。主が当然の刑罰を彼に下されたのである。

リシマコスの殺害

39 市内では、メネラオスの入れ知恵で、リシマコスがさかんに神殿を荒らしていたが、その噂は外部にも広まった。大勢の者たちが結集してリシマコスに抗議したが、多くの黄金の祭具類は、既に外へ運び出された後であった。

40 群衆は決起し、怒りにあふれた。そこでリシマコスは三千人に上る兵士を武装させ、卑劣な手段を使いだした。そのとき、先頭に立ったのは、年はとっていながら、この上なく愚かな、アウラノスという男であった。

41 リシマコスの攻撃を見て、ある者たちは石を、ある者たちは棒切れを、ある者たちは手近の灰をつかんで、リシマコスの部下を目がけて手当りしだいに投げつけた。

42 こうして、群衆は多くの者に深手を負わせ、ある者たちを打ち倒し、全軍を敗走させた。その上この神殿荒らしの張本人を、宝庫の傍らで殺害した。

メネラオス、釈放される

43 こうした一連の事件について、メネラオスは裁かれることになった。

44 王がティルスに下ったとき、長老会議から派遣された三名の者が、王の前に訴えを起こした。

45 今や全く追い詰められたメネラオスは、ドリメネスの子プトレマイオスに十分な金品を約束して、王をこちら側に引き込んでくれ、と依頼した。

46 そこでプトレマイオスは、涼をとらせる振りをして王を柱廊の陰に連れ込み、王の心を翻させた。

47 こうして王は、諸悪の元凶メネラオスを、さまざまな訴えから自由にしてやり、一方ではこれらの不運な告訴人たちには、――たとえスキタイ人であったとしても彼らを無罪として釈放したにちがいないのに――死を宣告した。

48 このようにして、この町と市民と神殿の祭具を守るために訴え出た人々の方が、即刻不当に処刑されたのだ。

49 そのため、ティルスの市民たちさえ、この悪行を憎み、彼らのための葬儀を盛大に挙行した。

50 一方メネラオスは、権力にある者たちの欲望を利用してその職に居座り、ますます悪行を重ねていき、同胞に対しては策謀家となったのである。

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