エズラ記(ラテン語) 1

エズラの略歴 1 預言者エズラの書。エズラの父はセラヤ、祖父はアザルヤ、更にヒルキヤ、シャルム、ツァドク、アヒトブ、 2 アヒヤ、ピネハス、エリ、アマルヤ、アジヤ、マリモト、アルナ、ウジア、ボリト、アビシュア、ピネハス、エルアザル、 3 そしてレビ族アロンとさかのぼる。時にエズラは、ペルシア王アルタクセルクセスの治世に、メディア人の地で捕らわれの身となっていた。 エズラへの主の言葉 4 主の言葉がわたしに下った。 5 「行け。わたしの民にその悪行を告げ、彼らがわたしに対して犯した罪を、その子らに告げよ。子々孫々それを語り継がせよ。 6 実に、彼らは先祖よりも多く罪を犯し、彼らはわたしを忘れ、他の神々にいけにえを献げたのだ。 7 彼らを、エジプトの地、奴隷の家から導き出したのはわたしではなかったか。ところが彼らはわたしを怒らせ、わたしの戒めを軽んじた。 8 お前は髪をかきむしり、あらゆる災いを彼らに投げつけよ。彼らがわたしの律法に従わなかったからである。彼らは諭しを受けつけぬ民だ。 9 わたしは、いつまで耐えようか、これほど多くの恵みを与えた彼らを。 10 わたしは彼らのために多くの王を退け、ファラオとその子らを、またその全軍を討ち滅ぼした。 11 わたしは、彼らの前からあらゆる民族を滅ぼし、東方ではティルスとシドンの二つの州の民をけ散らして、彼らのすべての敵を殺した。 12 彼らに告げよ――主は言われる――。 13 わたしはお前たちに海を通らせ、荒れ野に備わった道をお前たちに示し、指導者としてモーセを、祭司としてアロンを与えた。 14 わたしは火の柱によって光を与え、大いなる不思議な業をお前たちの中で行った。だが、お前たちは、わたしを忘れた。」これは主の言葉。 15 全能の主はこう言われる。「わたしは奇跡としてうずらを、守りとして陣営をお前たちに与えた。それなのにお前たちは不平を言った。 16 敵が滅ぼされたときにわたしの名をたたえて祝うこともせず、今もなお不平を言っている。 17 わたしが与えた恵みを忘れたのか。お前たちは、荒れ野で飢え渇いたとき、わたしに呼ばわって、 18 『何のため、我々をこの荒れ野に導き、殺そうとするのか、こんな荒れ野で死ぬよりは、エジプト人に仕えていた方がよかったのに』と言った。 19 そのとき、わたしはお前たちの嘆きに心を痛め、マナを食べ物として与え、お前たちは天使のパンを食べたはずだ。 20 お前たちが渇ききったとき、わたしが岩を割って、飲み飽きるほどの水が流れ出たではないか。わたしは、暑さを避けるようにとお前たちのために木の葉を編んだ。 21 わたしは、お前たちに肥えた土地を分け与え、カナン人、ペレツ人、ペリシテ人を、お前たちの前から追い払った。これ以上お前たちのために何をすればよいのか。」これは主の言葉。 22 全能の主はこう言われる。「荒れ野で、川の水が苦く、お前たちが渇きに苦しんでわたしの名を汚したときも、 23 わたしは、冒涜の罰として火を下すようなことはせず、川に棒を投げ入れて、甘い水に変えた。 24 ヤコブよ、わたしはお前のために何をすればよいのか。ユダよ、お前は、わたしの言うことを聞こうとしなかった。だから、わたしはほかの民のところへ移り、彼らがわたしの戒めを守るように、わたしの名を彼らに与えよう。 25 お前たちがわたしを捨てたので、わたしもお前たちを捨てよう。わたしに憐れみを求めても、もう憐れむまい。 26 わたしに呼ばわっても、わたしは聞くまい。お前たちは手を血で汚し、お前たちの足は殺人を犯すことに軽やかだ。 27 […]

エズラ記(ラテン語) 2

1 主はこう言われる。「わたしはこの民を奴隷の状態から救い出し、わたしの僕、預言者たちを通して戒めを与えたが、彼らは預言者たちに聞くことを望まず、わたしの忠告を無視した。 2 彼らを産んだ母は言う。『子供たちよ、行きなさい。わたしはやもめで、捨てられた女です。 3 わたしは喜びをもってお前たちを育てたが、悲痛と悲嘆の中に失った。お前たちが、神である主に罪を犯し、わたしの前で悪事を行ったからです。 4 今更、お前たちのために何をしよう。わたしはやもめで、捨てられた女です。子供たちよ、行って、主に憐れみを願いなさい』と。 5 そこで、民の父エズラよ、彼らの母と共にあなたも、彼らがわたしの契約を守ろうとはしなかったことを証言せよ。 6 あなたは彼らを当惑させ、彼らから母を奪え。こうして、彼らは子孫がつくれなくなる。 7 彼らは異邦人の中に散らされ、その名も地上から消されてしまえばよいのだ。彼らがわたしの契約を軽んじたからである。 8 災いだ、アシュル、お前は、内に悪人どもを隠している。良からぬ連中よ、わたしがソドムとゴモラに対して、どんなことを行ったか、思い出せ。 9 その地はピッチの沼、灰の山と化している。わたしは同じことを、わたしに聞き従わない者どもにするであろう。」これは全能の主の言葉。 10 主はエズラにこう言われる。「わたしの民に告げよ。わたしはイスラエルに与えるはずであったエルサレムの王国を、彼らに与える、と。 11 わたしは、イスラエルから栄光を取り上げ、かつてイスラエルのために用意した永遠の幕屋を、彼らに与える。 12 そのとき命の木は、彼らを香油の香りの中に包み、彼らは苦労する必要もなく、疲れることもない。 13 お前たちは行って王国を受けよ。わずかな日々が、更に短縮されるように願え。王国は既に、お前たちのために用意されている。目覚めていよ。 14 お前は天を呼び、地を呼んで証人とせよ。わたしは悪を消し去り、善なるものを造った。わたしは生ける神である。」これは主の言葉。 15 「母よ、お前の子供を抱き、鳩のように喜びをもって彼らを育て、その足腰を強くせよ。わたしがお前を選んだのだ。」これは主の言葉。 16 「わたしは、死人をその場所からよみがえらせ、墓から引き上げる。彼らの中に、わたしの名が記されているのを認めたからである。 17 恐れてはいけない、子供たちの母よ、わたしはお前を選んだのだ。」これは主の言葉。 18 「わたしはお前のもとに、助け手としてわたしの僕イザヤとエレミヤを遣わす。わたしは彼らの預言を成就させ、お前を聖別し、いろいろな果実のたわわに実る十二の木々と、 19 乳と蜜が流れる十二の泉、ばらとゆりの咲く七つの大きな山々を、お前のために用意した。わたしはそこで、お前の子供たちを喜びで満たそう。 20 やもめを正しく扱い、孤児のために裁きを行い、乏しい人には与えよ。みなしごを保護し、裸の人に服を着せよ。 21 打ちひしがれた者、弱い者の世話をし、足の不自由な者をあざけることなく、体の不自由な人を守ってやれ。盲人にわたしの光を見させよ。 22 老人も若い者も、お前の垣の中に入れて守れ。 23 死人を見つけたらその場で印をして、墓に納めよ。そうすれば、わたしは人々を復活させるとき、お前に第一の座を与える。 24 わたしの民よ、歩みを止め、落ち着くがよい。お前の休息の時が来るからだ。 25 良き乳母よ、お前の子供たちを養い、彼らの足腰を強くせよ。 26 わたしがお前に与えた僕のうちだれ一人滅びはしないだろう。わたしはお前の民の中から彼らを選び出す。 27 動揺してはならない。圧迫と苦難の日が来て、人々が嘆き悲しむとしても、お前は喜々として、豊かでいられる。 28 […]

エズラ記(ラテン語) 3

第一の幻 1 都の陥落後三十年目のこと、わたしサラティエル、すなわちエズラはバビロンにいた。わたしは寝床に伏していて胸騒ぎを覚え、さまざまな思いが心をよぎった。 2 それは、シオンの荒廃とバビロンに住む人たちの豊かさを見たからである。 エズラの問い――この世の罪について 3 わたしの霊は激しく揺り動かされ、わたしはいと高き方に恐る恐る話しかけた。 4 「すべてを治められる主よ、世の初めに地を形づくられたとき、――あなたのみ、これがおできになりました――あなたは塵にお命じになりました。 5 塵はまだ命のない体、アダムを生じました。しかしそれは、あなたの御手によって造られたものであり、あなたはそれに命の息を吹き込まれ、体はあなたの御前に命あるものとなりました。 6 そして、陸が現れる前にあなたが力ある手でお造りになった楽園に、彼を置かれました。 7 あなたは彼に一つの掟を与えられましたが、彼はそれに背きました。そこであなたは直ちに、彼とその子孫とに死をお定めになりました。彼からは数知れない種族や部族、民族や家族が生まれました。 8 それぞれの種族は思いのままに歩み、御前に悪を行い、あなたの戒めを軽んじましたが、あなたはそれをとどめようとはされませんでした。 9 しかし時が来ると、あなたは世の人々の上に洪水を送り、彼らを滅ぼされました。 10 彼らは皆、同一の運命に遭ったのです。アダムに死が臨んだように、彼らには洪水が臨みました。 11 あなたは民の中からノアとその家族だけを残されました。また、彼から生まれるすべての義人をも。 12 地の面に住む人々が増え始め、子供たち、民族、多くの種族が増えたとき、人々は以前にも増して神に背く業を重ね始めました。 13 彼らが御前で悪を行うと、あなたは一人の人、アブラハムを御自分のために選ばれました。 14 あなたは彼を愛し、夜ひそかに、彼一人に時の終わりをお示しになりました。 15 あなたは彼と永遠の契約を結び、彼の子孫を決して見捨てることはないと約束されました。そして、彼にイサクを与え、イサクにヤコブとエサウを与えられました。 16 あなたはヤコブを選び、エサウを遠ざけられ、こうして、ヤコブは大きな民となりました。 17 あなたはヤコブの子孫をエジプトから連れ出し、シナイ山に導かれました。 18 あなたは天を傾け、地を固め、世界を揺り動かし、深淵をおののかせ、世を震え上がらせました。 19 あなたの栄光は火と地震と風と氷の四つの門を通り過ぎ、ヤコブの子孫に律法を、イスラエルの子らに掟をお与えになりました。 20 しかし、あなたは彼らからよこしまな心を取り除くことはせず、彼らが律法によって実を結ぶように計らわれました。 21 よこしまな心の重荷を担う最初の人アダムは掟に背いてその心に打ち負かされましたが、彼から生まれた人々も皆同様でした。 22 こうして弱さは永久に人々のうちにとどまり、律法もまた、悪の根を持つ人々の心とともにとどまるようになりました。こうして、善いことは消えうせ、よこしまなことが残るようになったのです。 23 そして時がたち、年が過ぎて、あなたはダビデという名の僕を起こされました。 24 あなたは彼に、御自分の御名のために都を建て、受けた賜物のうちから供え物を献げるようにと、お命じになりました。 25 これは長年にわたって行われましたが、都に住む人々は罪を犯し、 26 あらゆる点で、アダムとそのすべての子孫と同じことを行いました。彼らもよこしまな心を持っていたのです。 27 […]

エズラ記(ラテン語) 4

天使の答え 1 すると、わたしのもとに遣わされたウリエルという天使が答えた。 2 「あなたの心は、この世のことに、すっかりうろたえている。それでもあなたは、いと高き方の道を理解したいと思っているのか。」 3 わたしは、「はい、わが主よ」と答えた。すると天使はわたしに言った。「あなたに三つの道を示し、三つのたとえを提示するためにわたしは遣わされた。 4 あなたがもし、この中の一つでも解き明かしたなら、わたしも、あなたが見たいというその道を示し、よこしまな心とは何のことかを教えよう。」 5 そこでわたしは言った。「わが主よ、おっしゃってください。」すると天使はわたしに言った。「行って、炎の重さを量り、吹く風の大きさを計り、あるいは過ぎ去った日を取り戻して来なさい。」 6 わたしは言った。「人の世に生を受けた者のうち、いったいだれにそのようなことができるでしょう。」 7 そこで天使は言った。「もしわたしが、海の底にはどれだけの住まいがあるか、地下の海の源には幾つの流れがあるか、大空の上には幾つの流れがあるか、あるいは楽園の出口はどれか、といったことを尋ねたならば、 8 恐らくあなたは言ったであろう。『わたしは今まで、地下の海に下ったことも、陰府に降りたことも、天に昇ったことも一度もない』と。 9 だから今、わたしは、火と風とあなたが過ごした日々についてだけ、それなしには片ときもいられないものに限って尋ねたのである。しかしあなたはこれについて何も答えられなかった。」 10 そして天使は言った。「あなたは、生涯自分にかかわりをもつ事柄さえ知ることができないのだ。 11 それなのにどうしてあなたの力量で、いと高き方の道を理解できよう。腐敗した世にさえ恐れおののく者が、どうして不滅なものを理解することができようか。」これを聞いたとき、わたしは地上に伏して、 12 言った。「この世に生まれて神を恐れぬ人々の中に住み、苦しみを味わい、しかもこの苦しみが何なのか分からずにいるよりは、むしろ生まれなかった方がよかったのです。」 13 すると天使は言った。「わたしは、野の森の中に分け入ったことがあった。そのとき、木々ははかりごとをめぐらして、 14 言った。『さあ、行って海と戦いを交え、海を我々の前から退かせて、別の森を作ろうではないか。』 15 ところが、海の波も同様にはかりごとをめぐらして、言った。『さあ、上って行って、野の森に戦いを挑み、そこを我々の領分にしよう』と。 16 しかし、森のはかりごとは失敗した。火事になって森は焼き尽くされたからである。 17 また、海の波のはかりごとも同様に失敗した。砂が隆起し、海を阻んだからである。 18 ところで、もしあなたが両者を裁くとすれば、どちらを正しいとし、どちらを罪に定めるだろうか。」 19 わたしは言った。「どちらのはかりごともむなしいことです。森には陸が与えられ、海には波を運ぶ場所がそれぞれ与えられているのですから。」 20 そこで天使は言った。「その判断は正しい。ではどうして、あなた自身について同じように判断しないのか。 21 陸が森に与えられ、海が波に与えられているように、地上に住む者は地上のことだけを理解し、天上界の者は、天上界のことを理解するのである。」 人の思いと神の計画 22 そこでわたしは答えた。「主よ、お願いです。わたしには理解力が与えられているのです。 23 わたしは、高遠な道を尋ねているのではありません。常日ごろ、わたしたちの目の前に起こっている事柄について問いたかっただけなのです。なぜイスラエルは不名誉にも異邦人に渡されたのか、なぜあなたが愛された民を、神を恐れぬやからに渡されたのか、なぜわたしたちの先祖の律法は滅び去り、書き記された契約はうせたのか、ということなのです。 24 わたしたちは、この世からいなごのように移り行き、わたしたちの生命は朝もやのようになりました。もはやわたしたちは、憐れみを受ける資格もありません。 25 しかし、わたしたちに与えられた御名のために、神は何をなさろうとするのでしょうか。わたしはこのことを尋ねているのです。」 26 天使はわたしに答えた。「もしあなたが生きているならば見るであろうし、生き永らえるなら、度々驚くであろう。世はたちまち過ぎ去るということを。 27 […]

エズラ記(ラテン語) 5

終末のしるし 1 「では、しるしについて語ろう。見よ、その日が来て、地上に住む人々は大いなる恐怖に捕らえられ、真理の道は隠され、国土は信仰の不毛の地となるだろう。 2 そして不義が、あなた自身が見ている以上に、また、あなたがかつて聞いた以上に増えるだろう。 3 また、あなたが今見ているその国は世界を支配しているが、やがて乱れて廃虚となり、人はそこに荒れ地を見るようになる。 4 しかし、もしいと高き方があなたに生き残るのをお許しになるなら、三日の後に天変地異を見るであろう。突如として夜中に太陽が輝き、 5 真昼に月が照る。その上、木から血が滴り落ち、石が声を発し、人々は恐慌を来し、星は軌道を脱するだろう。 6 そして、地に住む人の望まぬ人物が支配するようになり、鳥さえもみな渡り去るだろう。 7 ソドムの海は魚を吐き出し、夜にはえたいの知れぬ妖怪が声を発し、すべての人がその声を耳にする。 8 方々で深淵が口を開き、そこから繰り返し炎が吹き上がる。野獣はその住みかを捨てて移り歩き、月経中の女は怪物を産むだろう。 9 淡水に塩が混じり、友人どうしがいがみ合うようになるだろう。分別は隠れ、知性は己の住みかに引きこもって、 10 多くの人がそれを捜すが見いだせない。地上には不義と放縦がはびこる。 11 一つの国は隣の国に、『だれか公正を行う人が、あなたの所を通りましたか』と尋ねる。するとその国は『否』と答えるだろう。 12 その時には、人々は望んでも得られず、働いても道は整えられない。 13 これらのしるしを、あなたに示すことは許されている。しかし、もしあなたが更に祈り、今のように涙をもって嘆願を続け、七日間の断食を行うならば、これよりも、更に大いなることが聞ける。」 結び 14 わたしは目を覚ました。わたしの体はひどく震えており、魂は疲労のあまり、消え入りそうになった。 15 すると、わたしのもとに来て語ったその天使が、わたしを力づけ、足で立たせてくれた。 16 二日目の夜、民の頭ファルティエルが来て、わたしに言った。「あなたはどこにいたのですか。なぜ、悲しそうな顔をしているのですか。 17 この強制移住の地でイスラエルの民はあなたにゆだねられていることを忘れたのですか。 18 さあ、起きて、少しパンを食べてください。羊飼いが自分の羊を見捨てて、どう猛な狼に渡してしまうかのように、わたしたちを見捨てないでください。」 19 わたしは彼に言った。「わたしから離れていなさい。七日間、わたしに近寄ってはいけない。その後で来なさい。」彼は、言うことを聞いて離れ去った。 20 そして天使ウリエルが命じたように、わたしは大声で泣きながら七日間の断食を行った。 第二の幻 エズラの問い――選びと苦難について 21 七日の後、わたしの心の思いは、わたしを再びひどく悩ました。 22 そしてわたしの魂は、理解力を取り戻して、再びいと高き方の前で話し始めた。 23 「統べ治める方、主よ、あなたは地のすべての森の中から、そのすべての木々の中から、一つのぶどうの木を選ばれました。 24 また、世界のすべての地から一つのくぼ地を選ばれ、世界のすべての花の中から、御自分のため一本のゆりを選ばれました。 25 また海のすべての深みから、御自分のために一つの小川を満たし、建てられたあらゆる町の中から、御自分のためシオンを聖別なさいました。 26 […]

エズラ記(ラテン語) 7

天使の答え――裁きと相応の報い 1 わたしがこれらのことを言い終えると、前の夜に遣わされた天使が再びわたしのところに遣わされて来た。 2 天使は言った。「エズラ、立ちなさい。わたしがあなたに告げに来た言葉を聞きなさい。」 3 わたしは言った。「わが主よ、お話しください。」天使は言った。「海は広い場所に置かれていて、深く限りない。 4 しかし、その入り口は狭い場所にあって、川のようである。 5 もしだれかが、海を見たり航海したりするために海に入ろうとしても、その狭い場所を通らなければ、どうして広い海原に行けるだろうか。 6 たとえをもう一つ。ある町が平らな地に建てられており、そこにはあらゆる物が豊富にある。 7 しかし、町の入り口は狭く、険しいところにあり、右に火が、左に深い淵がある。 8 その間、すなわち水と火の間には、たった一本の道しかなく、しかもそれは一人の人がやっと通れるくらいの小道である。 9 もしこの町が、ある人に遺産として与えられたとしても、その人が、目前の危険を乗り越えなければ、どうしてその遺産を相続できるだろうか。」 10 わたしは言った。「主よ、そのとおりです。」天使は言った。「イスラエルの相続分もこのようなものである。 11 わたしは彼らのために世を造った。アダムがわたしの戒めを破ったとき、被造物が裁かれた。 12 そして、この世の出入り口は、狭く、悲しみと労苦に満ちたものとなり、またその数も少なく、状態も悪く、危険をはらみ、大きな困難を強いるものとなった。 13 しかし大いなる世への入り口は、広く安全で、不死の実をもたらしてくれる。 14 だから、生きている者は、この狭くむなしい所に入らなければ、備えられたものを受けることができないのである。 15 それなのになぜあなたは、自分が朽ちるべきものだといって、心を乱すのか。なぜ、自分が死ぬべきものだといって、動揺するのか。 16 なぜ、今あるものにだけ心を留めて将来のものに心を留めないのか。」 17 わたしは答えた。「統べ治める方、主よ、あなたは、これらのものを受け継ぐのは正しい人々であり、不敬虔な人々は滅びると、律法に定められました。 18 正しい人々は広い所を希望しつつ、狭い所に耐えています。不敬虔に生きた者は、狭さに苦しみながら、広い所をも見ることはできませんでした。」 19 天使は言った。「あなたは主にまさる裁き手でもなく、いと高き方より賢くもない。 20 人々に与えられた神の律法が軽んじられるくらいなら、今いる多くの人々が滅びる方がましである。 21 主は、人々がこの世に生まれて来る度に、どうしたら生き永らえるか、何を守れば罰せられないで済むかを、諭された。 22 しかし人々は言うことを聞かず、主に逆らい、自分勝手にむなしいことを考え出し、 23 邪悪な欺きを企てた。そしていと高き方は存在しないと豪語し、その道を認めなかった。 24 また、律法を軽んじ、契約を拒み、その戒めに忠実でなく、いと高き方の御業を行わなかった。 25 このゆえに、エズラよ、むなしい者にはむなしいものが与えられ、豊かな人々には豊かなものが与えられるのである。 26 見よ、その時がやって来る。その時には、わたしが予告したしるしが現れ、町が花嫁となって姿を見せ、今はまだ隠されている地が見えてくる。 27 わたしが予告した悪から救われた人は皆、わたしのこの不思議な業を見る。 […]

エズラ記(ラテン語) 8

1 天使は言った。「いと高き方はこの世を多くの人のために造られた。しかし、来るべき世は、わずかな人のために造られている。 2 エズラよ、たとえを話そう。あなたが大地に尋ねると、大地は答えるだろう。『器を造る粘土は多くできるが、金を産み出す土はわずかしかできない』と。この世の有様もそうである。 3 確かに造られた者は多いが、救われる者は少ない。」 4 わたしは言った。「わたしの魂よ、知識を飲み、知ったことをむさぼり食え。 5 お前は欲せずしてこの世に生まれ、望まずに世を去る。お前は、ごくわずかの間しか生きられないのだ。 6 ああ、わたしたちの上におられる主よ、僕が御前で祈ることを許していただけますなら、どうか、わたしたちに心の種を与え、そしてわたしたちの知性を耕して実を結ばせてください。そうすれば、朽ちるべきすべての者が人としての場を得て、生きることができるでしょう。 7 あなたは唯一の方であり、わたしたちは、あなたが語られたとおり御手によって造られたものの一つです。 8 あなたは今、母胎の中に体を形づくってこれに命を与え、器官を与えられると、この被造物は火と水の中で守られます。そしてあなたが造られた母胎は、あなたがその中に造られた子を、九か月間宿します。 9 そして守るものも、守られるものも、共にあなたの守りによって守られます。母胎が、自分の中に育ったものを外に返す時には、 10 器官そのものから、すなわち、乳房からその実である乳を与えるようにと、あなたは命じられたのです。 11 形づくられた子は、それによって一定の期間育てられます。その後あなたは、その子に憐れみをかけ、 12 あなたの正しさではぐくみ、あなたの律法で教育し、あなたの知恵で戒められました。 13 それをあなたは、御自分が造られたものであるがゆえに死なせたり、御自分の作品であるがゆえに生かしたりされるのです。 14 あなたの命令に従い、これほどの苦労によって形づくられたものを、簡単なひと言で滅ぼされるなら、何のためにそれをお造りになったのでしょうか。」 エズラの祈り 15 「今こそ、申し上げます。人類一般のことをあなたはよくご存じです。しかし、わたしはあなたの民のことで心を痛め、 16 あなたの世継ぎのことで泣き、イスラエルのことで悲しい思いをし、ヤコブの子孫のことで心を乱しているのです。 17 ですから、わたしは、自分のため、また彼らのために御前に祈りましょう。わたしは地上に住むわたしたちの堕落を見、 18 また、来るべき裁きが速やかにやって来ると聞いているからです。 19 どうか、わたしの声に耳を傾け、わたしの言葉を理解してください。わたしは御前で語ります。」 20 天に上げられる前のエズラの祈りの初め。彼は言った。「永遠に生きられる主よ、あなたの目は天の高みにあり、 21 あなたの玉座は比類なく、栄光は計り知れません。天使の軍団はおののきつつあなたに仕え、 22 御命令に従って、風にでも火にでも変わります。御言葉は真実で、語られたことが変えられることはありません。 23 あなたの命令は力があり、あなたの定めは恐るべきものです。あなたが見据えると深淵は乾き、あなたが怒られると山々は熔け、あなたの真理は証しされます。 24 主よ、この僕の祈りを聞き入れてください。あなたがお造りになった者の祈りに耳を傾け、わたしの言葉に御心を向けてください。 25 わたしは生きるかぎりあなたに語り、わたしに分かるかぎりお答えします。 26 御民のとがに目を向けず、真実をもってあなたに仕えている人々を御覧ください。 27 不敬虔な業を行う者のたくらみではなく、苦しみながらもあなたの契約を守った人々に注意を向けてください。 […]

エズラ記(ラテン語) 9

1 天使は答えて言った。「自分でよく推し量ってみなさい。わたしがあらかじめ語ったしるしが幾らかでも起こるのを見たならば、 2 そのときこそ、いと高き方が自ら造られた世を訪れる時であると悟りなさい。 3 この世に地震、人々の騒乱、諸国民のはかりごと、指導者たちの不安定、君主たちの動揺などが現れてきたら、 4 そのとき、これこそいと高き方が前々から、初めのときから言われてきたことであると悟りなさい。 5 この世の出来事はすべて、始まりは終わりによって明らかになり、終わりがすべてを明らかにするが、 6 いと高き方の時もこれと同じであって、その始まりは前兆と力ある業において明らかにされ、終わりは行いとしるしにおいて明らかになる。 7 そのときには、救われた者、自分の業または誠実な信仰によって怒りから逃れることのできた者は皆、 8 わたしがあらかじめ語った危険を免れて生き残り、永遠の昔から聖別しておいたわたしの地と領域で救いを見るだろう。 9 そのときわたしの道を悪用した者は驚き、わたしの道をさげすんで捨てた者は、懲らしめの中にとどまるだろう。 10 生きていたとき、わたしの恩恵を受けていながら、わたしを認めなかった者、 11 まだ自由を持っていながら、律法をさげすんだ者、 12 悔い改めの余地がまだあったにもかかわらず、悟ろうとせずに軽んじた者はすべて、死後、懲らしめを受けながらそれを認めねばならないのである。 13 あなたは、不敬虔な人々がどのように懲らしめを受けるかということに好奇心を起こしたりせず、むしろ義人がどのように救われるのか、来るべき世はだれのもので、だれのためか、それはいつ来るのかを尋ねなさい。」 結び 14 わたしは言った。 15 「わたしが前に申し上げたことですが、今また申し上げ、今後も言い続けます。滅びる者の方が、救われる者よりも多いのです。 16 それは、流れる水が滴よりも多いのと同じです。」天使は答えた。 17 「種は畑しだい、色は花しだい、出来ぐあいは仕事しだい、脱穀は農夫しだいである。この世には時があり、 18 わたしが、この世のまだ造られぬ前、今生きている人たちのために準備をしていたときには、だれもわたしに逆らわなかった。 19 そのときは、だれもいなかったからである。しかし、この世界に人間が造られたとき、そこには不足することのない食卓と究め難い法則とが備えられていたのに、彼らの生活は堕落した。 20 わたしはわたしの世に思いを向けてみた。するとどうだろう、それは滅びていた。わたしの世界に思いを向けてみた。しかし、そこに生まれて来た者たちのはかりごとのために、それは危険にさらされていた。 21 わたしはそれを見て、ある人たちをかろうじて救った。わたしはぶどうの房から一粒の実を、大きな森から一本の木を救ったのである。 22 だから、理由もなく生まれてきた多くの人々は滅びるがよい。わたしの一粒のぶどうの実とわたしの一本の木が救われればよいのだ。わたしが大変な苦労をしてこれを完成させたのであるから。 23 あなたは更に七日間待ち、その間は断食をしないで、 24 家が建てられたことのない花咲く野原に行き、野の花だけを食べなさい。肉を食べず、ぶどう酒も飲まず、ただ花だけを食べなさい。 25 そして絶えずいと高き方に祈りなさい。そうすれば、わたしは来て、あなたと語ろう。」 第四の幻 エズラの祈り 26 わたしは天使が言ったように、アルダトと呼ばれる野原に行き、そこで花の中に座り、野原の草を食べた。わたしは満腹するまで食べた。 […]

エズラ記(ラテン語) 10

1 ところが息子は婚姻の寝室に入ったとき、倒れて死んでしまったのです。 2 私たちは皆、明かりを消しました。町の人々は皆、私を慰めに来てくれました。私は、次の日の夜まで気持を抑えていました。 3 しかし、私を落ち着かせようと慰めてくれた人々が皆寝静まったので、私は夜起きて、御覧のとおり、この野原に逃げ出して来たのです。 4 もう町には帰らず、ここにとどまっていようと思います。食べることも飲むこともしません。死ぬまで絶えず嘆き続けて断食をするつもりです。」 5 わたしは、ここまで話を聞いて、それを遮り、怒って彼女に答えた。 6 「愚か者、あなたは女の中で最も愚かだ。あなたにはわたしたちの嘆きや、わたしたちに起こったことが見えないのか。 7 わたしたち皆の母シオンは悲しみに打ちひしがれ、ひどく卑しめられているのだ。このため大いに嘆きなさい。 8 わたしたち皆の嘆きと悲しみを共にして、あなたも嘆くべきだ。ところがあなたは、たった一人の息子のために悲しんでいる。 9 大地に尋ねてみよ。そうすれば大地は言うだろう。『生まれて来るこれほど多くの者たちのために嘆かなければならないのは自分なのだ』と。 10 初めからすべての者は大地から生じ、これからも更に生ずるであろう。しかし、見よ、ほとんどすべての者は、滅びに向かって歩み、多くの者が滅びる。 11 そうすると、どちらの方が深く悲しまねばならないのだろうか。一人のために嘆いているあなたよりも、このように多くの人々を失った大地ではないのか。あなたは言うであろう。 12 『わたしの悲しみは大地のとは違います。わたしは自分の胎の実を失ったのです。わたしは、陣痛の中で、もだえ苦しみながら産んだ子を失ったのです。 13 大地は大地の法則に従っただけのことです。大地の多くの人々は、来たときのように行ってしまったのです』と。しかし、それならわたしは言おう。 14 あなたが苦しみながら子を産んだように、大地もそのようにして、初めからその実である人間を、大地の創造者のために産んだのだ。 15 それゆえ今、あなたの嘆きを自分の中に納めて、あなたにふりかかった災いを力強く受け止めなさい。 16 もしあなたが、神の定めを正しいと認めるなら、やがて時が来て再び子を与えられ、あなたは女の中でたたえられることになるだろう。 17 さあ、町へ戻り、夫のもとに帰りなさい。」女は言った。 18 「いいえ。町には戻らず、ここで死にます。」 19 わたしは更に言った。 20 「そんなことを言うものではない。シオンの失墜がどのようなものであるか、わたしの言うことを聞き分け、エルサレムの痛みを思って自分の慰めとしなさい。 21 あなたも見ているように、わたしたちの至聖所は荒らされ、祭壇は打ち壊され、神殿は破壊された。 22 わたしたちの竪琴の音は消え、賛美の歌はやみ、わたしたちの喜びはなくなった。燭台の明かりは消され、契約の箱は奪われ、聖なる器は汚された。わたしたちに授けられた名も全く冒涜され、わたしたちの指導者たちは侮辱を受け、祭司は焼き殺され、レビ人は捕虜として連れ去られた。おとめたちは汚され、わたしたちの妻は暴行を受け、義人たちは連れ去られ、幼子は捨てられ、若者は奴隷になり、力のある者たちは弱くなった。 23 そして最悪なのは、シオンの証印のことである。神の印を押されていたシオンのかつての栄光は取り消され、わたしたちを憎む者どもの手に渡されたのだ。 24 それゆえ、あなたは自分自身の大きな悲しみを振り払い、多くの苦悩を捨て去りなさい。そうすれば、力ある方が再びあなたを憐れみ、いと高き方があなたに安らぎを与えて、苦労をねぎらってくださる。」 幻の説明 25 わたしが女に話していたとき、驚いたことに、突然彼女の顔が強烈な光を放ち、その姿は稲妻のようにひらめいた。わたしは彼女に対して恐れを抱き、これはいったいどういうことなのだろうと思った。 26 すると突然女は恐ろしい大きな声をとどろかせた。大地がその音で揺れ動いたほどだった。わたしは目を上げた。 27 すると、どうしたことだろう、もう女の姿は見えず、そこには都が建てられつつあり、大きな土台が見えた。わたしは恐ろしくなり、大声で叫んで言った。 […]

エズラ記(ラテン語) 11

1 二日目の夜、わたしは夢を見た。見よ、一羽の鷲が海から昇って来た。その鷲には羽の生えた翼が十二と頭が三つあった。 2 わたしが見ていると、見よ、鷲は翼を全地の上に広げた。そして天の風はすべて、鷲に向かって吹き、雲が鷲の周りに集まった。 3 更に見ていると、羽の間から逆毛の羽が生えて来たが、それらは小さくて貧弱な羽となった。 4 鷲の頭はいずれも不動のままであった。真ん中の頭は他の頭より大きかったが、それも他の頭と一緒にじっと動かなかった。 5 更に見ていると、見よ、鷲はその羽を使って飛び、地とそこに住む人々を支配した。 6 わたしは、天の下のものすべてが、鷲に従っている有様を見た。だれも、地上にある被造物のうち一つとしてこれに逆らうものがなかった。 7 更に見ていると、見よ、鷲はつめをたてて立ち上がり、羽に向かって声を発して言った。 8 「皆が同時に見張りをするな。めいめいが自分のところで眠り、順に見張りをするがよい。 9 頭は最後に用立てる」と。 10 見よ、その声が出ているのは頭からではなく、体の真ん中からであった。 11 わたしは逆毛の羽を数えたが、それは八つあった。 12 更に見ていると、右側から一つの羽が起き上がり、全地を支配した。 13 その羽は支配していたけれども、終わりが来て消えうせ、その在りかすら見えなくなった。そして次の羽が起き上がって支配し、その時代は長く続いた。 14 しかしこの羽も支配しているうちに終わりが来て、前の羽と同様に姿を消そうとしていた。 15 すると、見よ、声が聞こえてきて、その羽に言った。 16 「長い間地を支配していた羽よ、聞くがよい。お前が消えうせる前に、言っておくことがある。 17 お前の後だれも、お前ほど長い間、いや、その半分すらも支配する者はいないだろう。」 18 そして三番目の羽が起き上がり、前の二つの羽のように主権を握ったが、これも消えうせた。 19 このように、すべての翼は代わる代わる主権を行使していったが、再び現れることは決してなかった。 20 更に見ていると、見よ、時が来て、次の羽が自分たちも主権を握ろうとして右側から起き上がった。これらの中には、支配したものもあったが、すぐに消えうせた。 21 またあるものは起き上がったが、主権を握るに至らなかった。 22 この後更に見ていると、見よ、十二の羽と二つの小さな羽が消えうせた。 23 そして、鷲の体には、じっとしている三つの頭と六つの小さな羽以外には、何も残らなかった。 24 更に見ていると、六つの小さな羽から二つが離れて、右側の頭の下にとどまった。四つの小さな羽はそのまま元の場所にとどまっていた。 25 見ていると、見よ、この四つの下の羽は立ち上がって主権を握ろうと企てていた。 26 更に見ていると、その一つが立ち上がった。しかし、すぐ消えうせた。 27 それから第二のものが立ち上がったが、これは、第一のものより早く消えうせた。 28 […]