エズラ記(ラテン語) 1

エズラの略歴

1 預言者エズラの書。エズラの父はセラヤ、祖父はアザルヤ、更にヒルキヤ、シャルム、ツァドク、アヒトブ、

2 アヒヤ、ピネハス、エリ、アマルヤ、アジヤ、マリモト、アルナ、ウジア、ボリト、アビシュア、ピネハス、エルアザル、

3 そしてレビ族アロンとさかのぼる。時にエズラは、ペルシア王アルタクセルクセスの治世に、メディア人の地で捕らわれの身となっていた。

エズラへの主の言葉

4 主の言葉がわたしに下った。

5 「行け。わたしの民にその悪行を告げ、彼らがわたしに対して犯した罪を、その子らに告げよ。子々孫々それを語り継がせよ。

6 実に、彼らは先祖よりも多く罪を犯し、彼らはわたしを忘れ、他の神々にいけにえを献げたのだ。

7 彼らを、エジプトの地、奴隷の家から導き出したのはわたしではなかったか。ところが彼らはわたしを怒らせ、わたしの戒めを軽んじた。

8 お前は髪をかきむしり、あらゆる災いを彼らに投げつけよ。彼らがわたしの律法に従わなかったからである。彼らは諭しを受けつけぬ民だ。

9 わたしは、いつまで耐えようか、これほど多くの恵みを与えた彼らを。

10 わたしは彼らのために多くの王を退け、ファラオとその子らを、またその全軍を討ち滅ぼした。

11 わたしは、彼らの前からあらゆる民族を滅ぼし、東方ではティルスとシドンの二つの州の民をけ散らして、彼らのすべての敵を殺した。

12 彼らに告げよ――主は言われる――。

13 わたしはお前たちに海を通らせ、荒れ野に備わった道をお前たちに示し、指導者としてモーセを、祭司としてアロンを与えた。

14 わたしは火の柱によって光を与え、大いなる不思議な業をお前たちの中で行った。だが、お前たちは、わたしを忘れた。」これは主の言葉。

15 全能の主はこう言われる。「わたしは奇跡としてうずらを、守りとして陣営をお前たちに与えた。それなのにお前たちは不平を言った。

16 敵が滅ぼされたときにわたしの名をたたえて祝うこともせず、今もなお不平を言っている。

17 わたしが与えた恵みを忘れたのか。お前たちは、荒れ野で飢え渇いたとき、わたしに呼ばわって、

18 『何のため、我々をこの荒れ野に導き、殺そうとするのか、こんな荒れ野で死ぬよりは、エジプト人に仕えていた方がよかったのに』と言った。

19 そのとき、わたしはお前たちの嘆きに心を痛め、マナを食べ物として与え、お前たちは天使のパンを食べたはずだ。

20 お前たちが渇ききったとき、わたしが岩を割って、飲み飽きるほどの水が流れ出たではないか。わたしは、暑さを避けるようにとお前たちのために木の葉を編んだ。

21 わたしは、お前たちに肥えた土地を分け与え、カナン人、ペレツ人、ペリシテ人を、お前たちの前から追い払った。これ以上お前たちのために何をすればよいのか。」これは主の言葉。

22 全能の主はこう言われる。「荒れ野で、川の水が苦く、お前たちが渇きに苦しんでわたしの名を汚したときも、

23 わたしは、冒涜の罰として火を下すようなことはせず、川に棒を投げ入れて、甘い水に変えた。

24 ヤコブよ、わたしはお前のために何をすればよいのか。ユダよ、お前は、わたしの言うことを聞こうとしなかった。だから、わたしはほかの民のところへ移り、彼らがわたしの戒めを守るように、わたしの名を彼らに与えよう。

25 お前たちがわたしを捨てたので、わたしもお前たちを捨てよう。わたしに憐れみを求めても、もう憐れむまい。

26 わたしに呼ばわっても、わたしは聞くまい。お前たちは手を血で汚し、お前たちの足は殺人を犯すことに軽やかだ。

27 お前たちが見捨てたのは、わたしではなく、お前たち自身である。」これは主の言葉。

28 全能の主は、こう言われる。「父が息子に願うように、また、母が娘に、乳母が子供に願うように、わたしはお前たちに願ったではないか。

29 お前たちがわたしの民となり、わたしがお前たちの神となることを、また、お前たちがわたしの子供となり、わたしがお前たちの父となることを。

30 わたしは、ちょうどめんどりが雛を翼の下に集めるようにお前たちを集めた。しかし今となっては、お前たちのために何をすればよいのか。わたしはお前たちを退けよう。

31 供え物をわたしに献げても、わたしは顔を背けよう。わたしは、お前たちの祝祭日と新月と割礼を拒んだ。

32 わたしは、わが僕、預言者たちを、お前たちのもとに遣わしたが、お前たちは彼らを迎えて殺し、その体を切り刻んだ。わたしは彼らの血について復讐する。」これは主の言葉。

33 全能の主はこう言われる。「お前たちの家は荒れ果てた。風がわらを吹き飛ばすように、わたしはお前たちを散らす。

34 子供たちは子孫をつくれなくなる。わたしの命令を軽んじ、わたしの前に悪事を行ったからである。

35 わたしは、やがて来る民にお前たちの家を渡す。彼らは聞かずともわたしを信じ、奇跡が与えられなくとも、わたしが命じたことを行うだろう。

36 彼らは預言者を見たことはないが、かつて預言者たちが語ったことを心に留めるだろう。

37 わたしは、やがて来る民への恵みを保障する。その子供たちは、喜びに小躍りし、わたしを肉眼で見ることはなくとも、わたしが語ったことを霊によって信じるだろう。

38 民の父エズラよ、今こそ、誇りをもって目を上げ、東から来る民を見よ。

39 わたしが彼らに与える指導者は、アブラハム、イサク、ヤコブ、それにホセア、アモス、ミカ、ヨエル、オバデヤ、ヨナ、

40 ナホム、ハバクク、ゼファニヤ、ハガイ、ゼカリヤ、そして、主の使いとも呼ばれたマラキである。」

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エズラ記(ラテン語) 2

1 主はこう言われる。「わたしはこの民を奴隷の状態から救い出し、わたしの僕、預言者たちを通して戒めを与えたが、彼らは預言者たちに聞くことを望まず、わたしの忠告を無視した。

2 彼らを産んだ母は言う。『子供たちよ、行きなさい。わたしはやもめで、捨てられた女です。

3 わたしは喜びをもってお前たちを育てたが、悲痛と悲嘆の中に失った。お前たちが、神である主に罪を犯し、わたしの前で悪事を行ったからです。

4 今更、お前たちのために何をしよう。わたしはやもめで、捨てられた女です。子供たちよ、行って、主に憐れみを願いなさい』と。

5 そこで、民の父エズラよ、彼らの母と共にあなたも、彼らがわたしの契約を守ろうとはしなかったことを証言せよ。

6 あなたは彼らを当惑させ、彼らから母を奪え。こうして、彼らは子孫がつくれなくなる。

7 彼らは異邦人の中に散らされ、その名も地上から消されてしまえばよいのだ。彼らがわたしの契約を軽んじたからである。

8 災いだ、アシュル、お前は、内に悪人どもを隠している。良からぬ連中よ、わたしがソドムとゴモラに対して、どんなことを行ったか、思い出せ。

9 その地はピッチの沼、灰の山と化している。わたしは同じことを、わたしに聞き従わない者どもにするであろう。」これは全能の主の言葉。

10 主はエズラにこう言われる。「わたしの民に告げよ。わたしはイスラエルに与えるはずであったエルサレムの王国を、彼らに与える、と。

11 わたしは、イスラエルから栄光を取り上げ、かつてイスラエルのために用意した永遠の幕屋を、彼らに与える。

12 そのとき命の木は、彼らを香油の香りの中に包み、彼らは苦労する必要もなく、疲れることもない。

13 お前たちは行って王国を受けよ。わずかな日々が、更に短縮されるように願え。王国は既に、お前たちのために用意されている。目覚めていよ。

14 お前は天を呼び、地を呼んで証人とせよ。わたしは悪を消し去り、善なるものを造った。わたしは生ける神である。」これは主の言葉。

15 「母よ、お前の子供を抱き、鳩のように喜びをもって彼らを育て、その足腰を強くせよ。わたしがお前を選んだのだ。」これは主の言葉。

16 「わたしは、死人をその場所からよみがえらせ、墓から引き上げる。彼らの中に、わたしの名が記されているのを認めたからである。

17 恐れてはいけない、子供たちの母よ、わたしはお前を選んだのだ。」これは主の言葉。

18 「わたしはお前のもとに、助け手としてわたしの僕イザヤとエレミヤを遣わす。わたしは彼らの預言を成就させ、お前を聖別し、いろいろな果実のたわわに実る十二の木々と、

19 乳と蜜が流れる十二の泉、ばらとゆりの咲く七つの大きな山々を、お前のために用意した。わたしはそこで、お前の子供たちを喜びで満たそう。

20 やもめを正しく扱い、孤児のために裁きを行い、乏しい人には与えよ。みなしごを保護し、裸の人に服を着せよ。

21 打ちひしがれた者、弱い者の世話をし、足の不自由な者をあざけることなく、体の不自由な人を守ってやれ。盲人にわたしの光を見させよ。

22 老人も若い者も、お前の垣の中に入れて守れ。

23 死人を見つけたらその場で印をして、墓に納めよ。そうすれば、わたしは人々を復活させるとき、お前に第一の座を与える。

24 わたしの民よ、歩みを止め、落ち着くがよい。お前の休息の時が来るからだ。

25 良き乳母よ、お前の子供たちを養い、彼らの足腰を強くせよ。

26 わたしがお前に与えた僕のうちだれ一人滅びはしないだろう。わたしはお前の民の中から彼らを選び出す。

27 動揺してはならない。圧迫と苦難の日が来て、人々が嘆き悲しむとしても、お前は喜々として、豊かでいられる。

28 異邦人がねたみを起こしても、お前に対しては何もできないだろう。」これは主の言葉。

29 「わたしの手がお前を覆い、お前の子供たちはゲヘナを見ることはないであろう。

30 母よ、子供らと共に喜べ。わたしがお前を救い出す。」これは主の言葉。

31 「永眠したお前の子供たちを思い出せ。わたしは地の隠れ場から彼らを連れ出して、彼らに憐れみの業を行おう。わたしは憐れみ深い神。」これは全能の主の言葉。

32 「わたしが来るまで、お前の子供たちを抱き、彼らに憐れみを告げよ。わたしの泉は絶えずわきいで、恵みは尽きることがないからである。」

ホレブの山のエズラ

33 わたしエズラは、ホレブの山で、イスラエルへ行けという命令を主から受けた。そこでわたしはイスラエルの人々のもとに行ったが、彼らはわたしを拒み、主の言いつけを軽んじた。

34 だから、わたしは言う。「聞いて理解する異邦の民よ、あなたたちの牧者を待ち望みなさい。彼はあなたたちに永遠の休みを与えてくださる。世の終わりに来られるはずの牧者は、近くにおられるからである。

35 報いとして王国を受ける準備をしなさい。やがて永遠の光が永久にあなたたちを照らすからである。

36 この世の陰を逃れ、輝く喜びを受けなさい。わたしは救い主を公に証しする。

37 主が指名された者を受け入れなさい。あなたたちを天の国に招いてくださった方に感謝して喜びなさい。

38 起きて立ち、主の宴にあずかるべく刻印を押された人々の群れを見なさい。

39 彼らはこの世の陰から身を移し、主から輝く衣を受けた人々である。

40 シオンよ、定められた人数を受け、主の律法を全うし、輝く白衣を身にまとう人々の名簿を閉じなさい。

41 あなたが切に望んだ子供たちの数は満ちている。世の初めから招かれたあなたの民が、主のものとして聖別されるように、主の御国の到来を願いなさい。」

シオンの山のエズラ

42 わたしエズラは、数知れぬ大群衆を、シオンの山で見た。皆は歌をうたって主をたたえていた。

43 その中央には丈の高い若者がいた。彼はだれよりも秀でており、一人一人の頭に冠をかぶせていた。彼はひときわぬきんでていた。わたしは、この光景に魅せられた。

44 そこで、天使に、「主よ、この人たちは、だれですか」と尋ねた。

45 天使は答えた。「この人たちは、死すべき衣を脱ぎ捨て、不死の衣をまとい、神の御名を告白した人々である。今や、冠をいただき、しゅろの葉を受ける。」

46 わたしは天使に尋ねた。「彼らに冠をかぶせ、しゅろの葉を手渡しているあの若者はだれですか。」

47 天使は答えた。「あの方は、彼らがこの世で告白した神の子である」と。そこで、わたしは、主の御名のために雄々しく踏みとどまったその人々をたたえ始めた。

48 そのとき天使は言った。「あなたが見た神である主の業が、いかなるもので、どれほどすばらしいかを、行って、わたしの民に告げなさい。」

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エズラ記(ラテン語) 3

第一の幻

1 都の陥落後三十年目のこと、わたしサラティエル、すなわちエズラはバビロンにいた。わたしは寝床に伏していて胸騒ぎを覚え、さまざまな思いが心をよぎった。

2 それは、シオンの荒廃とバビロンに住む人たちの豊かさを見たからである。

エズラの問い――この世の罪について

3 わたしの霊は激しく揺り動かされ、わたしはいと高き方に恐る恐る話しかけた。

4 「すべてを治められる主よ、世の初めに地を形づくられたとき、――あなたのみ、これがおできになりました――あなたは塵にお命じになりました。

5 塵はまだ命のない体、アダムを生じました。しかしそれは、あなたの御手によって造られたものであり、あなたはそれに命の息を吹き込まれ、体はあなたの御前に命あるものとなりました。

6 そして、陸が現れる前にあなたが力ある手でお造りになった楽園に、彼を置かれました。

7 あなたは彼に一つの掟を与えられましたが、彼はそれに背きました。そこであなたは直ちに、彼とその子孫とに死をお定めになりました。彼からは数知れない種族や部族、民族や家族が生まれました。

8 それぞれの種族は思いのままに歩み、御前に悪を行い、あなたの戒めを軽んじましたが、あなたはそれをとどめようとはされませんでした。

9 しかし時が来ると、あなたは世の人々の上に洪水を送り、彼らを滅ぼされました。

10 彼らは皆、同一の運命に遭ったのです。アダムに死が臨んだように、彼らには洪水が臨みました。

11 あなたは民の中からノアとその家族だけを残されました。また、彼から生まれるすべての義人をも。

12 地の面に住む人々が増え始め、子供たち、民族、多くの種族が増えたとき、人々は以前にも増して神に背く業を重ね始めました。

13 彼らが御前で悪を行うと、あなたは一人の人、アブラハムを御自分のために選ばれました。

14 あなたは彼を愛し、夜ひそかに、彼一人に時の終わりをお示しになりました。

15 あなたは彼と永遠の契約を結び、彼の子孫を決して見捨てることはないと約束されました。そして、彼にイサクを与え、イサクにヤコブとエサウを与えられました。

16 あなたはヤコブを選び、エサウを遠ざけられ、こうして、ヤコブは大きな民となりました。

17 あなたはヤコブの子孫をエジプトから連れ出し、シナイ山に導かれました。

18 あなたは天を傾け、地を固め、世界を揺り動かし、深淵をおののかせ、世を震え上がらせました。

19 あなたの栄光は火と地震と風と氷の四つの門を通り過ぎ、ヤコブの子孫に律法を、イスラエルの子らに掟をお与えになりました。

20 しかし、あなたは彼らからよこしまな心を取り除くことはせず、彼らが律法によって実を結ぶように計らわれました。

21 よこしまな心の重荷を担う最初の人アダムは掟に背いてその心に打ち負かされましたが、彼から生まれた人々も皆同様でした。

22 こうして弱さは永久に人々のうちにとどまり、律法もまた、悪の根を持つ人々の心とともにとどまるようになりました。こうして、善いことは消えうせ、よこしまなことが残るようになったのです。

23 そして時がたち、年が過ぎて、あなたはダビデという名の僕を起こされました。

24 あなたは彼に、御自分の御名のために都を建て、受けた賜物のうちから供え物を献げるようにと、お命じになりました。

25 これは長年にわたって行われましたが、都に住む人々は罪を犯し、

26 あらゆる点で、アダムとそのすべての子孫と同じことを行いました。彼らもよこしまな心を持っていたのです。

27 そこであなたは都を敵の手に渡されました。

28 わたしはそのとき、心の中で言いました。『バビロンに住む人たちは、わたしたちよりも善いことをしているのだろうか、それゆえ、彼らがシオンを支配するのだろうか』と。

29 しかし、わたしはここに来たとき、数知れない神に背く業を見、この三十年間わたしの魂は、多くの罪人を見てきました。わたしの心はめいりました。

30 罪を犯す彼らをどれほどあなたが耐え忍び、神に背く者たちを放任し、御民を滅ぼして御自分の敵を守っておられるかを見たからです。

31 どのようにしてこの道を捨て去るべきかを、あなたはだれにも何も示されませんでした。いったいバビロンはシオンよりも善いことをしているのでしょうか。

32 また、イスラエル以外に、あなたを知っている民があるのでしょうか。あるいは、どのような部族が、このヤコブの部族のように、契約に信頼したでしょうか。

33 しかもヤコブの部族は何の報いも受けず、彼らの苦労も実を結びませんでした。わたしは諸国を経巡り、あなたの戒めを心に留めていないのに繁栄している人々を見ました。

34 今、わたしたちの悪と世に住む人々の悪とを、秤にかけてください。そうすれば、秤がどちらに傾くかが明らかになるでしょう。

35 地に住む人々が、御前に罪を犯さなかったことがあったでしょうか。また、あなたの戒めをこのように守った民がほかにあったでしょうか。

36 あなたの戒めを守った人は個人としてはいるでしょう。しかし、民全体としては見つからないでしょう。」

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エズラ記(ラテン語) 4

天使の答え

1 すると、わたしのもとに遣わされたウリエルという天使が答えた。

2 「あなたの心は、この世のことに、すっかりうろたえている。それでもあなたは、いと高き方の道を理解したいと思っているのか。」

3 わたしは、「はい、わが主よ」と答えた。すると天使はわたしに言った。「あなたに三つの道を示し、三つのたとえを提示するためにわたしは遣わされた。

4 あなたがもし、この中の一つでも解き明かしたなら、わたしも、あなたが見たいというその道を示し、よこしまな心とは何のことかを教えよう。」

5 そこでわたしは言った。「わが主よ、おっしゃってください。」すると天使はわたしに言った。「行って、炎の重さを量り、吹く風の大きさを計り、あるいは過ぎ去った日を取り戻して来なさい。」

6 わたしは言った。「人の世に生を受けた者のうち、いったいだれにそのようなことができるでしょう。」

7 そこで天使は言った。「もしわたしが、海の底にはどれだけの住まいがあるか、地下の海の源には幾つの流れがあるか、大空の上には幾つの流れがあるか、あるいは楽園の出口はどれか、といったことを尋ねたならば、

8 恐らくあなたは言ったであろう。『わたしは今まで、地下の海に下ったことも、陰府に降りたことも、天に昇ったことも一度もない』と。

9 だから今、わたしは、火と風とあなたが過ごした日々についてだけ、それなしには片ときもいられないものに限って尋ねたのである。しかしあなたはこれについて何も答えられなかった。」

10 そして天使は言った。「あなたは、生涯自分にかかわりをもつ事柄さえ知ることができないのだ。

11 それなのにどうしてあなたの力量で、いと高き方の道を理解できよう。腐敗した世にさえ恐れおののく者が、どうして不滅なものを理解することができようか。」これを聞いたとき、わたしは地上に伏して、

12 言った。「この世に生まれて神を恐れぬ人々の中に住み、苦しみを味わい、しかもこの苦しみが何なのか分からずにいるよりは、むしろ生まれなかった方がよかったのです。」

13 すると天使は言った。「わたしは、野の森の中に分け入ったことがあった。そのとき、木々ははかりごとをめぐらして、

14 言った。『さあ、行って海と戦いを交え、海を我々の前から退かせて、別の森を作ろうではないか。』

15 ところが、海の波も同様にはかりごとをめぐらして、言った。『さあ、上って行って、野の森に戦いを挑み、そこを我々の領分にしよう』と。

16 しかし、森のはかりごとは失敗した。火事になって森は焼き尽くされたからである。

17 また、海の波のはかりごとも同様に失敗した。砂が隆起し、海を阻んだからである。

18 ところで、もしあなたが両者を裁くとすれば、どちらを正しいとし、どちらを罪に定めるだろうか。」

19 わたしは言った。「どちらのはかりごともむなしいことです。森には陸が与えられ、海には波を運ぶ場所がそれぞれ与えられているのですから。」

20 そこで天使は言った。「その判断は正しい。ではどうして、あなた自身について同じように判断しないのか。

21 陸が森に与えられ、海が波に与えられているように、地上に住む者は地上のことだけを理解し、天上界の者は、天上界のことを理解するのである。」

人の思いと神の計画

22 そこでわたしは答えた。「主よ、お願いです。わたしには理解力が与えられているのです。

23 わたしは、高遠な道を尋ねているのではありません。常日ごろ、わたしたちの目の前に起こっている事柄について問いたかっただけなのです。なぜイスラエルは不名誉にも異邦人に渡されたのか、なぜあなたが愛された民を、神を恐れぬやからに渡されたのか、なぜわたしたちの先祖の律法は滅び去り、書き記された契約はうせたのか、ということなのです。

24 わたしたちは、この世からいなごのように移り行き、わたしたちの生命は朝もやのようになりました。もはやわたしたちは、憐れみを受ける資格もありません。

25 しかし、わたしたちに与えられた御名のために、神は何をなさろうとするのでしょうか。わたしはこのことを尋ねているのです。」

26 天使はわたしに答えた。「もしあなたが生きているならば見るであろうし、生き永らえるなら、度々驚くであろう。世はたちまち過ぎ去るということを。

27 時に適って約束されたことを、この世は実現できないであろう。それは、この世が悲しみと弱さに満ちているからである。

28 あなたがわたしに尋ねているその悪は既に蒔かれた。しかし、その摘み取りはまだである。

29 蒔かれたものが刈り取られ、悪の蒔かれた畑が消え去らなければ、善が蒔かれた畑は来ないであろう。

30 悪の種が最初にアダムの心に蒔かれたために、今までどれほど多くの不信仰を実らせたことだろう。それは、脱穀の時が来るまで実らせ続けるだろう。

31 考えてみなさい、この悪の種がどれだけ多くの不信仰を実らせたかを。

32 数知れないもみが蒔かれた場合、どれほど大がかりな脱穀が始まるであろうか。」

33 そこでわたしは言った。「それはいつ、どのようにして起こるのですか。なぜわたしたちの年月は短く、不幸なのですか。」

34 天使は言った。「いと高き方を差し置いて、心をせかせてはならない。あなたは自分のために心をせかせるが、かの優れたお方は多くの人のためを考えておられるのである。

35 このことについては、義人の魂も、陰府の住まいで尋ねたではないか。『いつまでわたしは、このように待てばよいのですか。わたしたちの報いの収穫の実は、いつ来るのですか』と。

36 彼らに、大天使エレミエルが答えている。『あなたたちのような人の数が満ちるときである。神は世を秤で量り、

37 時の大きさを測り、時の数を数えておられる。それゆえ、予定された升目が満たされるまで、神は動ずることも、焦られることもないのである』と。」

38 そこでわたしは言った。「しかし統べ治められる方、主よ、わたしたちも皆、不信仰な者です。

39 わたしたちのため、地上に住む者の罪のために、義人の収穫が妨げられてはいませんか。」

40 すると天使は言った。「行って、身重の婦人に尋ねてみなさい。九か月が満ちたとき、胎児をなお胎の中にとどめておくことができるのか、と。」

41 そこでわたしは言った。「主よ、とどめておくことはできません。」すると彼は言った。「陰府の魂の住まいも、女の胎と似たものである。

42 産婦が産みの苦しみを早く終わらせようとするように、この陰府の住まいも同じで、世の初めから預けられた人たちを早く返したいのである。

43 その時には、あなたが見たいと望んでいることが示される。」

44 わたしは言った。「もし御好意にあずかっているのでしたら、またそれが可能であり、わたしがふさわしいとお思いでしたら、

45 お示しください。これからの時は過ぎ去った時よりも長いのですか、それとも、大半の時はもう過ぎたのでしょうか。

46 なぜなら、わたしは、既に過ぎた時のことは知っていますが、未来のことは何も知らないからです。」

47 すると天使は言った。「右側に立ちなさい。あなたにたとえの意味を示そう。」

48 そこでわたしは立って、見ていると、燃え盛るかまどが目の前を通り過ぎた。炎が通り過ぎた後に、幾らか煙が残ったのを見た。

49 この後、更に水をいっぱい含んだ雲が目の前を通り過ぎ、激しい雨を降らせていった。激しい雨が通り過ぎた後、そこに滴が残った。

50 そこで天使は言った。「自分で考えてみなさい。雨が滴よりも多く、炎が煙よりも多いように、過ぎ去った時の量ははるかに多い。しかし、まだ滴と煙が残っている。」

51 わたしは願った。「その日まで、わたしは生き永らえるとお思いですか。その日に居合わせるのはだれでしょうか。」

52 天使は答えた。「あなたが次々と尋ねるしるしについてならば、ある程度のことはあなたに言うことができる。しかし、わたしは、あなたの生命について告げるため遣わされたのではない。わたしはそれを知らないのだ。」

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エズラ記(ラテン語) 5

終末のしるし

1 「では、しるしについて語ろう。見よ、その日が来て、地上に住む人々は大いなる恐怖に捕らえられ、真理の道は隠され、国土は信仰の不毛の地となるだろう。

2 そして不義が、あなた自身が見ている以上に、また、あなたがかつて聞いた以上に増えるだろう。

3 また、あなたが今見ているその国は世界を支配しているが、やがて乱れて廃虚となり、人はそこに荒れ地を見るようになる。

4 しかし、もしいと高き方があなたに生き残るのをお許しになるなら、三日の後に天変地異を見るであろう。突如として夜中に太陽が輝き、

5 真昼に月が照る。その上、木から血が滴り落ち、石が声を発し、人々は恐慌を来し、星は軌道を脱するだろう。

6 そして、地に住む人の望まぬ人物が支配するようになり、鳥さえもみな渡り去るだろう。

7 ソドムの海は魚を吐き出し、夜にはえたいの知れぬ妖怪が声を発し、すべての人がその声を耳にする。

8 方々で深淵が口を開き、そこから繰り返し炎が吹き上がる。野獣はその住みかを捨てて移り歩き、月経中の女は怪物を産むだろう。

9 淡水に塩が混じり、友人どうしがいがみ合うようになるだろう。分別は隠れ、知性は己の住みかに引きこもって、

10 多くの人がそれを捜すが見いだせない。地上には不義と放縦がはびこる。

11 一つの国は隣の国に、『だれか公正を行う人が、あなたの所を通りましたか』と尋ねる。するとその国は『否』と答えるだろう。

12 その時には、人々は望んでも得られず、働いても道は整えられない。

13 これらのしるしを、あなたに示すことは許されている。しかし、もしあなたが更に祈り、今のように涙をもって嘆願を続け、七日間の断食を行うならば、これよりも、更に大いなることが聞ける。」

結び

14 わたしは目を覚ました。わたしの体はひどく震えており、魂は疲労のあまり、消え入りそうになった。

15 すると、わたしのもとに来て語ったその天使が、わたしを力づけ、足で立たせてくれた。

16 二日目の夜、民の頭ファルティエルが来て、わたしに言った。「あなたはどこにいたのですか。なぜ、悲しそうな顔をしているのですか。

17 この強制移住の地でイスラエルの民はあなたにゆだねられていることを忘れたのですか。

18 さあ、起きて、少しパンを食べてください。羊飼いが自分の羊を見捨てて、どう猛な狼に渡してしまうかのように、わたしたちを見捨てないでください。」

19 わたしは彼に言った。「わたしから離れていなさい。七日間、わたしに近寄ってはいけない。その後で来なさい。」彼は、言うことを聞いて離れ去った。

20 そして天使ウリエルが命じたように、わたしは大声で泣きながら七日間の断食を行った。

第二の幻

エズラの問い――選びと苦難について

21 七日の後、わたしの心の思いは、わたしを再びひどく悩ました。

22 そしてわたしの魂は、理解力を取り戻して、再びいと高き方の前で話し始めた。

23 「統べ治める方、主よ、あなたは地のすべての森の中から、そのすべての木々の中から、一つのぶどうの木を選ばれました。

24 また、世界のすべての地から一つのくぼ地を選ばれ、世界のすべての花の中から、御自分のため一本のゆりを選ばれました。

25 また海のすべての深みから、御自分のために一つの小川を満たし、建てられたあらゆる町の中から、御自分のためシオンを聖別なさいました。

26 また造られたすべての鳥の中から、一羽の鳩を御自分のものと呼び、造られたあらゆる家畜の中から、御自分のため、一匹の羊を取って置かれました。

27 また、大きくなったあらゆる民の中から、一つの民を御自分のものとされ、お愛しになったこの民に万人に認められた律法を与えられました。

28 しかし今、主よ、どうしてあなたは、この一つの民を多くの民に渡し、この一つの根を他の根よりも遠ざけ、あなたの唯一の民を多くの民の間に散らされたのですか。

29 あなたとの約束に反対した者どもが、あなたの契約を信頼した人々を踏みにじりました。

30 もし、あなたの民にそれほど憎悪を抱かれるのでしたら、御自分の手で懲らしめるべきでしょう。」

天使の答え

31 わたしがこう言い終えたとき、昨晩わたしのもとに来たあの天使が遣わされて、

32 言った。「聞きなさい。わたしは教えよう。耳を傾けなさい。もっと聞かせてあげよう。」

33 そこでわたしは言った。「わが主よ、お話しください。」天使は言った。「あなたはイスラエルのことになると、気が変になるのか。あなたは、イスラエルを造られた方以上にイスラエルを愛するというのか。」

34 わたしは言った。「いいえ、主よ、悲しみのあまり申し上げたのです。いと高き方の道をとらえ、その裁きの一部でも究めようとすると、わたしの心はいつも痛むのです。」

35 すると彼は、「それはあなたにはできない」と言った。わたしは尋ねた。「主よ、なぜですか。それではどうして、わたしは生まれて来たのです。なぜ、わたしの母の胎が、わたしの墓とならなかったのですか。そうすれば、わたしはヤコブの労苦もイスラエル民族が疲れ果てるのも見ないで済んだでしょうに。」

36 そこで天使は言った。「まだこの世に来ていない人たちを数え、飛び散った滴を集め、枯れた花を元の緑にしてみなさい。

37 陰府の閉ざされた扉を開け、中に封じられていた風を放ちなさい。あるいは、声の形を示してみなさい。そうしたら、わたしも、あなたが見たいと願う苦難の理由を示そう。」

38 わたしは言った。「統べ治める方、主よ、だれがこのようなことを知りえましょうか。人と住みかを異にする方にしかできません。

39 わたしは愚かな者です。あなたがお尋ねになるこれらのことに、どうして答えることができましょう。」

40 すると天使は言った。「あなたは、わたしの言ったただ一つのこともなすことはできない。同じように、わたしの裁きや、わたしが自分の民に約束した愛の目的をも究めることはできないのだ。」

被造物の継起性と終末の裁き

41 わたしは言った。「主よ、終わりの時に居合わせる人々にとって、あなたは主人となられるでしょう。しかし、わたしの前の人々やわたしたち自身、あるいは、わたしたちのすぐ後の人々は、どうしたらよいのでしょう。」

42 天使は言った。「わたしの裁きを輪のようにしよう。最後の者たちが遅れるわけでもなく、先頭の者たちが早くなるわけでもない。」

43 そこでわたしは答えた。「あなたの裁きをもっと早く明らかにするために、あなたは過去の人々、今いる人々、将来生まれてくる人々を一度にお造りになることはできなかったのですか。」

44 天使は答えた。「被造物は創造主の先回りをすることはできない。また、この世はそこで造られる人々すべてを一度に支えることもできはしない。」

45 わたしは言った。「それではなぜ、お造りになった被造物を終わりの時、一度に生かすであろうと、僕におっしゃったのですか。もし生きる者が一度に生きて、被造世界がそれを支えるようになるのでしたら、今からでも、現在いる人々を一度に受け入れることができるはずです。」

46 しかし天使は言った。「女の胎に尋ねてみよ。『十人を産むのに、なぜ順番に産むのか』と。彼女に一度に十人を産むよう求めてみなさい。」

47 わたしは言った。「それはできないでしょう。それぞれの時に従わねばなりません。」

48 天使は言った。「わたしも、順に種蒔かれたものに、大地の胎を与えたのである。

49 幼子は子を産めず、既に年老いた女も子を産めない。わたしは自分で造った世界をこのように定めたのである。」

老年期を迎える被造世界

50 わたしは尋ねた。「既にわたしに道を示してくださったので、申し上げることがあります。あなたの言われたわたしたちの母とは、まだ若いのですか、あるいは老年にさしかかっているのですか。」

51 天使は答えた。「子を産む女に尋ねれば、答えてくれるだろう。

52 彼女に言いなさい。『今度産んだ子供たちは、どうして前に産んだ子供たちと違って背が低いのか』と。

53 彼女は言うだろう。『若くて元気なときに生まれた子供たちと、年とって胎が衰えてから生まれた子供たちとは、違うものなのです』と。

54 だから、あなたも考えてみなさい。あなたたちは、前に生まれた人たちよりも背が低いし、

55 後に生まれる人たちは、あなたたちよりも背が低いだろう。被造物は老化して、若いときの力を失っていくからである。」

被造世界に直接かかわる神

わたしは言った。「主よ、お願いします。もし御好意にあずかっているのでしたら、この僕にお示しください。あなたはだれを用いて被造物の前に現れてくださるのですか。」

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エズラ記(ラテン語) 7

天使の答え――裁きと相応の報い

1 わたしがこれらのことを言い終えると、前の夜に遣わされた天使が再びわたしのところに遣わされて来た。

2 天使は言った。「エズラ、立ちなさい。わたしがあなたに告げに来た言葉を聞きなさい。」

3 わたしは言った。「わが主よ、お話しください。」天使は言った。「海は広い場所に置かれていて、深く限りない。

4 しかし、その入り口は狭い場所にあって、川のようである。

5 もしだれかが、海を見たり航海したりするために海に入ろうとしても、その狭い場所を通らなければ、どうして広い海原に行けるだろうか。

6 たとえをもう一つ。ある町が平らな地に建てられており、そこにはあらゆる物が豊富にある。

7 しかし、町の入り口は狭く、険しいところにあり、右に火が、左に深い淵がある。

8 その間、すなわち水と火の間には、たった一本の道しかなく、しかもそれは一人の人がやっと通れるくらいの小道である。

9 もしこの町が、ある人に遺産として与えられたとしても、その人が、目前の危険を乗り越えなければ、どうしてその遺産を相続できるだろうか。」

10 わたしは言った。「主よ、そのとおりです。」天使は言った。「イスラエルの相続分もこのようなものである。

11 わたしは彼らのために世を造った。アダムがわたしの戒めを破ったとき、被造物が裁かれた。

12 そして、この世の出入り口は、狭く、悲しみと労苦に満ちたものとなり、またその数も少なく、状態も悪く、危険をはらみ、大きな困難を強いるものとなった。

13 しかし大いなる世への入り口は、広く安全で、不死の実をもたらしてくれる。

14 だから、生きている者は、この狭くむなしい所に入らなければ、備えられたものを受けることができないのである。

15 それなのになぜあなたは、自分が朽ちるべきものだといって、心を乱すのか。なぜ、自分が死ぬべきものだといって、動揺するのか。

16 なぜ、今あるものにだけ心を留めて将来のものに心を留めないのか。」

17 わたしは答えた。「統べ治める方、主よ、あなたは、これらのものを受け継ぐのは正しい人々であり、不敬虔な人々は滅びると、律法に定められました。

18 正しい人々は広い所を希望しつつ、狭い所に耐えています。不敬虔に生きた者は、狭さに苦しみながら、広い所をも見ることはできませんでした。」

19 天使は言った。「あなたは主にまさる裁き手でもなく、いと高き方より賢くもない。

20 人々に与えられた神の律法が軽んじられるくらいなら、今いる多くの人々が滅びる方がましである。

21 主は、人々がこの世に生まれて来る度に、どうしたら生き永らえるか、何を守れば罰せられないで済むかを、諭された。

22 しかし人々は言うことを聞かず、主に逆らい、自分勝手にむなしいことを考え出し、

23 邪悪な欺きを企てた。そしていと高き方は存在しないと豪語し、その道を認めなかった。

24 また、律法を軽んじ、契約を拒み、その戒めに忠実でなく、いと高き方の御業を行わなかった。

25 このゆえに、エズラよ、むなしい者にはむなしいものが与えられ、豊かな人々には豊かなものが与えられるのである。

26 見よ、その時がやって来る。その時には、わたしが予告したしるしが現れ、町が花嫁となって姿を見せ、今はまだ隠されている地が見えてくる。

27 わたしが予告した悪から救われた人は皆、わたしのこの不思議な業を見る。

28 すなわち、わが子イエスが、彼に従う人々と共に現れ、生き残った人々に四百年の間喜びを与える。

29 その後、わが子キリストも息ある人も皆死ぬ。

30 そして世は、初めのときのように、七日間、太古の静寂に戻り、一人も生き残ってはいない。

31 七日間が過ぎたとき、まだ目覚めていない世は揺り起こされて、朽ちるべき世界は滅びる。

32 大地は地中に眠る人々を地上に返し、塵はその中に黙して住んでいる人々を戻し、陰府の部屋はそこに預けられていた魂を外に出す。

33 そしていと高き方が、裁きの座に姿を現す。もはや憐れみはなく、寛大さは跡形もない。

34 そこには裁きあるのみである。真理は立ち、信仰は力を得る。

35 そして、裁きは執行され、報いが示される。正義は目覚め、不正は眠っていられなくなる。

36 懲らしめの穴が現れ、その反対側には安息の場所がある。また、地獄のかまどが示され、その反対側には喜びの楽園が見える。

37 そのとき、いと高き方は、揺り起こされた諸民族に告げる。『よく見て、思い知れ、あなたたちが拒んだのはだれなのか、だれに仕えなかったのか、だれの心遣いを軽んじたのかを。

38 あちらとこちらとを見比べるがよい。こちらには喜びと安らぎがあり、あちらには火と懲らしめがある』と。これが裁きの日に彼らに告げられる主の言葉である。

39 その日には、太陽も月も星もなく、

40 雲も雷も稲妻もなく、風も水も大気もなく、闇も夕暮れも朝もない。

41 また、夏も春も暑さもなく、冬も霜も寒さもなく、雹も雨も露もない。

42 真昼も夜も夜明けもなく、きらめきも、明るさも、光もない。ただあるのはいと高き方の栄光の輝きのみであり、この輝きによって、人は皆、自分の目の前にあるものを見る。

43 その期間は七年である。

44 これがわたしの裁きであり、裁きの定めである。わたしはあなたにだけ、これを示したのである。」

救われる人の多少について

45 わたしは答えた。「主よ、前にも申しましたが、今また申します。今、あなたの定めを守って生きている人々は幸いです。

46 しかし、わたしが祈った人たちはどうでしょう。今生きている人々の中で、罪を犯さなかった者がいるでしょうか。生まれて来た人々の中で、あなたの契約を破らなかった者がいるでしょうか。

47 わたしは、今分かりました。来るべき世に喜びを受けるのはごくわずかな人々であり、多くの人々は懲らしめを受けるのです。

48 実にわたしたちの中には悪い心が増大し、あなたの定めからわたしたちを引き離し、腐敗へと導き、また、わたしたちに死への旅路、滅びへの道を示して、わたしたちを生命から遠ざけたからです。しかもそれは少数の人ではなく、造られた人ほとんどすべてなのです。」

49 天使は答えた。「よく聞きなさい。あなたに教えよう。次の事柄について誤りを正そう。

50 まさにあなたが言った理由のゆえに、いと高き方は一つではなく、二つの世を造られたのである。

51 正しい人は多くはなく、むしろ少数であり、その一方で不敬虔な人が増えているとあなたは言ったが、この問題の答えを聞きなさい。

52 もしあなたが宝石をごくわずかしか持っていなかったとしたら、それを増やすためにあなたは、鉛や土をこれに加えるであろうか。」

53 わたしは言った。「主よ、そんなことはできません。」

54 そこで天使は言った。「更に進んで地に尋ねてみよ。答えてくれるだろう。丁重に尋ねてみれば、語ってくれるだろう。

55 地に言いなさい。『金と銀と銅と鉄と鉛と粘土を造り出している。

56 しかし、銀は金よりも多く、銅は銀よりも多く、鉄は銅よりも多く、鉛は鉄よりも多く、粘土は鉛よりも多い。』

57 あなたは、たくさんあるものとわずかしかないものとで、どちらが高価で望ましいと思うか。」

58 わたしは言った。「統べ治める方、主よ、ふんだんにある方は価値がなく、少ないものほど価値があります。」

59 天使は答えた。「このことから引き出される結論をよく考えなさい。手に入れにくいものを持っている人は、いくらでも手に入るものを持っている人よりも大きな喜びを味わうものである。

60 わたしも、約束した新しい創造を行うときに、わずかしかいなくとも救われる人たちのことを喜ぶだろう。彼らは今やわたしの栄光を優先させ、今やわたしの名をたたえるようになったからである。

61 わたしは、滅びに至る多くの人々のために嘆いたりはしない。彼らは、霧のようであり、炎や煙に等しい者である。焼かれて、燃え上がり、消えてしまったのだ。」

裁きの必然性

62 わたしは言った。「ああ、大地よ、お前は何を生み出したのか。もし知性が他の被造物とおなじように塵から造られたのなら、

63 塵そのものも生じない方がよかったであろう。そうすれば、知性が塵から生まれてくることもなかったからだ。

64 しかし、今や知性は、わたしたちと共に成長し、このためにわたしたちは苦しめられるのだ。自分たちが滅びることを知りつつ滅びるからである。

65 人類は嘆き、野の獣は喜ぶがよい。生まれてきた人間は皆嘆き、獣と家畜は楽しむがよい。

66 獣の方がわたしたちよりはるかにましなのだから。獣は裁きを待つこともなく、死んだ後に約束されている苦しみや救いを知ることもないからである。

67 懲らしめにさいなまれることになるなら、救いの約束は何の役に立つであろうか。

68 生まれ出た人は皆、不正に染まり、罪に満ち、過ちの重荷を負っているからである。

69 もし、わたしたちが、死んで後に裁きを受けなくてもよかったのなら、恐らくもっと幸せだったかもしれない。」

70 天使は答えた。「いと高き方は、この世とアダムと、アダムから生まれたすべての人々を造られるに際して、まず、裁きと裁きにかかわることを前もって備えられたのである。

71 さて、あなたは知性が自分たちと共に成長すると言ったが、このことから問題の解決が得られる。

72 地に住む人たちは、懲らしめを受ける。彼らは知性を持ちながら不正な行いをし、戒めを受けながらそれを守らず、律法を与えられていながらそれをないがしろにしたからである。

73 彼らはいったい、裁きの際に何と申し開きするだろうか。終末の時にどう答えようというのだろうか。

74 いと高き方は、どんなに長期間、世に住む人々のことを寛大に耐えられたことだろう。それも彼らのためではなく、あらかじめ定められた時のためである。」

75 わたしは答えた。「主よ、もし、御好意にあずかっているのでしたら、僕に教えてください。死んだ後でも、あるいは今でも、もし、わたしたちがおのおの自分の魂をお返ししたなら、あなたが新たに天地を創造されるときまで、わたしたちは安らぎの中でしっかりと守られることになるのでしょうか、あるいは、すぐに懲らしめを受けるのでしょうか。」

76 天使は答えた。「そのことも教えよう。しかし、あなたは自分が律法をあざけった人々の一人であると思ったり、苦しみを受けるべき人々の一人であると考えたりしてはならない。

77 あなたの行いの宝は、いと高き者のもとに蓄えられているからである。もっともその宝は、終わりの時にならなければあなたに示されることはない。

死後の霊のたどる道

78 さて、死についての話をしよう。ある人が死ぬという最終決定をいと高き方が下されるとき、霊が体から出て、自分をお与えになった方のもとに、再び帰って行く。まず、いと高き方の栄光をたたえるためである。

79 しかし、もしその霊が、いと高き方の道を軽んじて、それを守らなかった者、律法を軽蔑した者、神を畏れ敬う人々を憎んだ者の霊であった場合、

80 その霊は安らぎの場所に落ち着くことができず、以後苦しみの中で常に嘆き悲しみながら、七つの道をさまよい歩くだろう。

81 第一の道は、人がいと高き方の律法を軽んじたゆえに備えられた道である。

82 第二の道は、生きるために良い悔い改めをもはや行うことができない道である。

83 第三の道では、いと高き方の契約に忠実であった人々に蓄えられた報いを見せつけられる。

84 第四の道では、終わりの時のために自分に用意されている懲らしめを思い浮かべる。

85 第五の道では、他の人々の住まいが天使たちによって守られて深い静けさに包まれているのを見せつけられる。

86 第六の道では、彼らの中のだれかが苦しみの中へと移って行くのを見る。

87 第七の道は、以上のどの道よりもつらい道である。この道では、いと高き者の栄光を見て、うろたえながら衰えてゆき、恥ずかしい思いをしてやつれ果て、恐ろしさのあまりしおれてしまう。彼らは生きていたときには、この方の前で罪を犯したのであり、終わりの時には、この方の前で裁かれるのである。

88 さて、いと高き方の道を守った人々の霊が、朽ちる体の器から離れるときの次第はこうである。

89 彼らはその器の中にいたとき、いと高き方に苦労して仕え、立法者の律法を完全に守ろうと、絶えず危険を冒した。

90 だから、彼らに対する言葉はこうである。

91 まず彼らは、自分たちを受け入れてくださったお方の栄光を見て大いに喜び、七つの段階を通って、安らぎを得ることになる。

92 第一段階は、人が自分たちと共に造られた悪い思いによって生から死へと誘われないように、それに打ち勝つため、大いに苦労して闘ったゆえに備えられている。

93 第二段階では、不敬虔な人々の魂がさまよう有様を見、彼らを待ち受けている罰を眺める。

94 第三段階では、生前、信仰をもって受け取った律法を彼らが守ったという造り主の証言が承認されるのを見る。

95 第四段階では、陰府の部屋の中で、天使たちに守られて、深い静けさの中に集まって味わう安らぎと、終わりの時に自分たちを待ち受けている栄光とを知る。

96 第五段階では、今や自分たちが朽ちるべきものから逃れたこと、やがて相続財産を受け継ぐことを喜び、更に、自分たちが窮屈で労苦に満ちた世から救い出されたことを見、今や、不死となって喜びながら、ゆとりを得る。

97 第六段階では、彼らの顔が太陽のように輝き、また、彼ら自身が、星の光のようになっているのが示される。彼らはもはや朽ちるべきものではない。

98 第七段階は、以上のどの段階よりも偉大である。ここでは、人は安心して喜び、信頼して迷うことなく、恐れることなく喜びを味わう。彼らは、生前に仕えた方、やがてその栄光にあずかり、報いをいただくその方の御顔を見に急ぐ。

99 これが、やがて告げ知らされる義人の魂の段階であり、さきに述べたことは、律法をないがしろにした人々がやがて受ける苦しみの道である。」

100 わたしは言った。「それでは魂には、体から離れた後、今言われたことを見る時間が与えられるのですね。」

101 天使は言った。「彼らには七日間の余裕が与えられ、さきに語ったことをその七日間で見て、その後、自分たちの住まいに集められるだろう。」

代願の不可能なこと

102 そこでわたしは言った。「もし御好意にあずかっているのでしたら、更に僕にお教えください。裁きの日に、義人たちは、不敬虔な人たちのために執り成しをしたり、彼らのためにいと高き方にお願いしたりすることができるでしょうか。

103 父が子のために、子が両親のために、兄弟が兄弟のために、親族が身内のために、友がその愛する人のためにそうすることができるでしょうか。」

104 天使は答えた。「あなたはわたしの好意を受けたのだから、このことも教えよう。裁きの日は厳かなもので、すべての人に真理の印を示すのである。今でも、父が子に代わり、子が父に代わり、主人が僕に代わり、親友が大切な人に代わって悟ったり、眠ったり、食べたり、病気を治してもらったりすることができない。

105 それと同様に、だれも他人のために赦しを願うことは決してない。人は皆おのおの自分の不正な行い、あるいは正しい行いの責任を負うのである。」

106 そこでわたしは言った。「それでは、どうなのでしょうか。まずアブラハムはソドムの人たちのため、モーセは荒れ野で罪を犯した父祖たちのために祈りました。

107 モーセの後を継いだヨシュアはアカンの時代にイスラエルのため、サムエルはサウルの時代にイスラエルのために祈りました。

108 またダビデは災害のゆえに民のため、ソロモンは聖所にいる人々のために祈りました。

109 エリヤは雨を待つ人々のために、また死人のため生き返るように祈りました。

110 ヒゼキヤはセンナケリブの時代に民のために祈り、またその他の多くの人たちが、多くの人々のために祈ったではありませんか。

111 ですから、滅びる者がはびこり、不正が増し加わっている今、義人たちが不敬虔な人たちのため祈っているのに、どうしてあの裁きの日には、それができないのでしょうか。」

112 天使は答えた。「今の世は到達点ではないのだ。神の栄光は、今の世に常にとどまるものではない。それゆえ力のある者は弱い者のため祈ったのである。

113 裁きの日はこの世の終わりであり、来るべき不死の時代の始まりとなる。その時には、腐敗はもはやなくなる。

114 放縦は解消し、不信仰は断たれ、正義が成長し、真理が現れる。

115 だからその時、だれも、裁きに敗れた者を憐れむことはないし、勝った者を滅ぼすこともできないのである。」

救われる人は少ない

116 わたしは言った。「これは、最初にして最後の言葉です。大地はアダムを産み出さない方がよかったのです。あるいは、産み出したとしても、彼が罪を犯さないように引き留めればよかったのです。

117 今の世では、生きていても悲しむほかなく、死んでからも刑罰しか待ち望めないとしたら、すべての人に何のよいことがありましょう。

118 ああ、アダムよ、あなたはいったい何ということをしたのか。あなたが罪を犯したとき、あなただけが堕落したのではなく、あなたから生まれたわたしたちも堕落したのである。

119 わたしたちに不死の世が約束されていても、いったい何の役に立つでしょう。わたしたちが死をもたらす悪行をしているのですから。

120 永遠の希望が約束されているとしても、わたしたちは最悪なことに、むなしい存在になっているではありませんか。

121 また、快適で安全な住まいが用意されているとしても、わたしたちは悪い方に傾いているではありませんか。

122 また、いと高き方の栄光が清く生きる人たちを守るとしても、わたしたちは最も邪悪な道を歩んでしまったではありませんか。

123 更に、楽園が示されて、そこでは実が腐ることなく実り続け、満足といやしとをもたらしてくれるとしても、

124 わたしたちは忘恩の地で暮らしてきたので、そこに行くことができないではありませんか。

125 あるいはそこでは節制を守った人たちの顔が星よりも輝くとしても、わたしたちの顔は闇よりも暗いではありませんか。

126 この世に生きて不正を行っていたときわたしたちは、死後にどのような苦しみを受けるかなどと、考えてもみませんでした。」

127 天使は言った。「地上に人間として生まれた者は人生の戦いについて、次のことを考えておくべきである。

128 戦いに負ける者はあなたが言った苦しみを受け、勝つ者はわたしの言っている報いを受けるであろう。

129 なぜなら、これこそモーセが存命中、民に教えた道だからである。彼は言った。『あなたは命を選びなさい。そうすれば生きる』と。

130 しかし彼らは、モーセもモーセの後に来た預言者たちも、彼らに語ったわたしをも信じなかった。

131 彼らが滅んでもだれも悲しまないであろう。救いを確実に受ける人々のことで喜びがあるであろう。」

132 わたしは言った。「主よ、わたしは知っています。いと高き方は、今、憐れみ深い方と呼ばれています。それは、まだこの世に生まれて来ない人々を憐れまれるからです。

133 また、情け深い方と呼ばれています。それは、悔い改めてあなたの律法に立ち帰る人々に情けをかけられるからです。

134 また忍耐強い方と呼ばれています。それは、罪を犯した人々を御自分の作品として耐え忍ばれるからです。

135 雅量に富んだ方と呼ばれています。それは求めることよりも与えることを望まれるからです。

136 また、憐れみに富む方と呼ばれています。それは、今の人にも、過去の人にも、将来の人にも憐れみを増し加えられるからです。

137 もし憐れみを増し加えてくださらなければ、この世もそこに住む人々も、生かされることはないでしょう。

138 また赦すお方と呼ばれています。それは、もし不正を犯した人たちをその不正から助け出して慈しみ深く赦してくださるのでなければ、人々の一万分の一も生かされることはないからです。

139 そして、裁き主と呼ばれています。もし、御言葉によって造られた人々を赦さず、多くの罪を消してくださらなかったら、恐らく、数えきれないほどの人の群れの中で、ごくわずかの人々しか生き残れないでしょう。」

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エズラ記(ラテン語) 8

1 天使は言った。「いと高き方はこの世を多くの人のために造られた。しかし、来るべき世は、わずかな人のために造られている。

2 エズラよ、たとえを話そう。あなたが大地に尋ねると、大地は答えるだろう。『器を造る粘土は多くできるが、金を産み出す土はわずかしかできない』と。この世の有様もそうである。

3 確かに造られた者は多いが、救われる者は少ない。」

4 わたしは言った。「わたしの魂よ、知識を飲み、知ったことをむさぼり食え。

5 お前は欲せずしてこの世に生まれ、望まずに世を去る。お前は、ごくわずかの間しか生きられないのだ。

6 ああ、わたしたちの上におられる主よ、僕が御前で祈ることを許していただけますなら、どうか、わたしたちに心の種を与え、そしてわたしたちの知性を耕して実を結ばせてください。そうすれば、朽ちるべきすべての者が人としての場を得て、生きることができるでしょう。

7 あなたは唯一の方であり、わたしたちは、あなたが語られたとおり御手によって造られたものの一つです。

8 あなたは今、母胎の中に体を形づくってこれに命を与え、器官を与えられると、この被造物は火と水の中で守られます。そしてあなたが造られた母胎は、あなたがその中に造られた子を、九か月間宿します。

9 そして守るものも、守られるものも、共にあなたの守りによって守られます。母胎が、自分の中に育ったものを外に返す時には、

10 器官そのものから、すなわち、乳房からその実である乳を与えるようにと、あなたは命じられたのです。

11 形づくられた子は、それによって一定の期間育てられます。その後あなたは、その子に憐れみをかけ、

12 あなたの正しさではぐくみ、あなたの律法で教育し、あなたの知恵で戒められました。

13 それをあなたは、御自分が造られたものであるがゆえに死なせたり、御自分の作品であるがゆえに生かしたりされるのです。

14 あなたの命令に従い、これほどの苦労によって形づくられたものを、簡単なひと言で滅ぼされるなら、何のためにそれをお造りになったのでしょうか。」

エズラの祈り

15 「今こそ、申し上げます。人類一般のことをあなたはよくご存じです。しかし、わたしはあなたの民のことで心を痛め、

16 あなたの世継ぎのことで泣き、イスラエルのことで悲しい思いをし、ヤコブの子孫のことで心を乱しているのです。

17 ですから、わたしは、自分のため、また彼らのために御前に祈りましょう。わたしは地上に住むわたしたちの堕落を見、

18 また、来るべき裁きが速やかにやって来ると聞いているからです。

19 どうか、わたしの声に耳を傾け、わたしの言葉を理解してください。わたしは御前で語ります。」

20 天に上げられる前のエズラの祈りの初め。彼は言った。「永遠に生きられる主よ、あなたの目は天の高みにあり、

21 あなたの玉座は比類なく、栄光は計り知れません。天使の軍団はおののきつつあなたに仕え、

22 御命令に従って、風にでも火にでも変わります。御言葉は真実で、語られたことが変えられることはありません。

23 あなたの命令は力があり、あなたの定めは恐るべきものです。あなたが見据えると深淵は乾き、あなたが怒られると山々は熔け、あなたの真理は証しされます。

24 主よ、この僕の祈りを聞き入れてください。あなたがお造りになった者の祈りに耳を傾け、わたしの言葉に御心を向けてください。

25 わたしは生きるかぎりあなたに語り、わたしに分かるかぎりお答えします。

26 御民のとがに目を向けず、真実をもってあなたに仕えている人々を御覧ください。

27 不敬虔な業を行う者のたくらみではなく、苦しみながらもあなたの契約を守った人々に注意を向けてください。

28 あなたの御前で、道を踏み外した者のことを思わず、畏れることを心から認めた人々のことを思い出してください。

29 家畜のような生き方をした者を滅ぼそうとはなさらずに、律法を立派に教えた人々を顧みてください。

30 獣にも劣ると見なされた者のことをお怒りにならず、常にあなたの栄光に信頼した人々を慈しんでください。

31 わたしたちもわたしたちの父祖たちも死をもたらす生き方をしてきましたが、あなたは、罪人であるわたしたちのゆえに憐れみ深い方と呼ばれるのです。

32 もし、あなたがわたしたちを憐れむことを望まれるのでしたら、正しい業を行わないわたしたちを憐れんでこそ、あなたは憐れみ深い方と呼ばれるでしょう。

33 正しい人たちは、あなたのもとにたくさんの業を蓄えており、自分たちの業のゆえに報いを受けるからです。

34 人とはいったい何ものですか。なぜ、あなたは怒られるのですか。朽ちるべきものゆえに、あなたはこれを厳しくあしらわれるのですか。

35 実際には、生まれてきた人の中で不敬虔なふるまいをしなかった者は一人もいません。信仰を告白する人の中にさえ、罪を犯さなかった人はいません。

36 主よ、よい業を蓄えていない人々をあなたが憐れまれてこそ、あなたの正しさと善良さとが、宣べ伝えられるでしょう。」

終末について

37 天使は言った。「あなたの言ったことはある程度正しい。あなたの言葉どおりになるだろう。

38 確かに、罪を犯した者たちについて、彼らを創造したことも、その死も裁きも滅びも気にしないことにしよう。

39 むしろわたしは、義人について、彼らを創造したことと彼らの人生の旅と救いと、彼らが報いを受けることとを喜ぼう。

40 それゆえわたしが語ったとおりになる。

41 農夫が地に多くの種を蒔き、多くの苗を植えるが、時が来ても、蒔かれたものがすべて無事に芽を出すわけでなく、植えられたものがすべて根づくわけでもない。それと同じく、この世に蒔かれた人々がすべて救われるわけではない。」

42 わたしは言った。「もし許していただけるなら、申し上げたいことがあります。

43 農夫の種は、もし適当なときに雨が降らず芽を出さなかったとき、また、雨が多すぎて腐ってしまったとき、

44 死んでしまいます。しかし人はあなたの手によって造られ、あなたの似姿ゆえに特に名付けられ、すべてのものは人のために造られたのです。それにもかかわらずあなたは、人を農夫の種と同じに扱われたのです。

45 わたしたちではなく、あなたの民を惜しみ、あなたの世継ぎの民を憐れんでください。あなたは御自分の造られたものを憐れまれるからです。」

46 天使は答えた。「今在るものは、今いる人たちのためであり、将来のものは、将来の人たちのためにある。

47 わたしにまさってわたしの被造物を愛することなど、あなたには到底できない。ところであなたはしばしば自分を不正な人々の仲間扱いするが、そんなことをしてはならない。

48 もっともこの点でも、あなたはいと高き方の前で褒められるだろう。

49 あなたは自分にふさわしくへりくだって、自分を正しい人々の中に数えなかったからである。このことで、あなたはもっと栄光を受けるだろう。

50 この世に住む人々は、おごり高ぶって歩んでいたので、終わりの時には、多くの悲惨な目に遭うであろう。

51 しかしあなたは自分のことをよく考え、自分と同じような人々の受ける栄光について思い巡らしなさい。

52 あなたたちには楽園が開かれており、生命の木が植えられ、来るべき時が備えられて、豊かな富が用意されており、都が建てられ、安らぎが保障されており、恵みが全きものとなり、完全な知恵が与えられる。

53 悪の根は、あなたたちに近づかないように封じられ、病は消え去り、死は姿を隠し、地獄は遠ざかり、腐敗は忘れ去られる。

54 悲しみは過ぎ去って、最後に不滅の宝が示される。

55 それゆえ、滅びる者が多いことについて尋ねるのは、もうやめなさい。

56 彼らは自由を与えられていながら、いと高き方を侮り、律法を軽蔑し、その道を捨てたのである。

57 その上、彼らは義人を踏みにじった。

58 そして心の中で、神はいないと言った。こんなことをすれば死ぬと知っていながらである。

59 前もって話しておいたことがあなたたちを待ち受けているように、彼らには、用意された渇きと懲らしめが待ち構えている。いと高き方が人の滅びを望まれたのではなく、

60 造られた人々自らが、自分たちをお造りになった方の名を汚し、今の命を与えてくださった方の恩を忘れたのである。

61 それゆえ、わたしの裁きは間近い。

62 わたしはこのことをすべての人に示すのではなく、あなたとあなたと同じようなわずかの人々にだけ示したのである。」わたしは答えた。

63 「主よ、確かに今、あなたは終わりの時になさろうとする多くのしるしを示してくださいました。でもそれがいつかということは示してくださいませんでした。」

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エズラ記(ラテン語) 9

1 天使は答えて言った。「自分でよく推し量ってみなさい。わたしがあらかじめ語ったしるしが幾らかでも起こるのを見たならば、

2 そのときこそ、いと高き方が自ら造られた世を訪れる時であると悟りなさい。

3 この世に地震、人々の騒乱、諸国民のはかりごと、指導者たちの不安定、君主たちの動揺などが現れてきたら、

4 そのとき、これこそいと高き方が前々から、初めのときから言われてきたことであると悟りなさい。

5 この世の出来事はすべて、始まりは終わりによって明らかになり、終わりがすべてを明らかにするが、

6 いと高き方の時もこれと同じであって、その始まりは前兆と力ある業において明らかにされ、終わりは行いとしるしにおいて明らかになる。

7 そのときには、救われた者、自分の業または誠実な信仰によって怒りから逃れることのできた者は皆、

8 わたしがあらかじめ語った危険を免れて生き残り、永遠の昔から聖別しておいたわたしの地と領域で救いを見るだろう。

9 そのときわたしの道を悪用した者は驚き、わたしの道をさげすんで捨てた者は、懲らしめの中にとどまるだろう。

10 生きていたとき、わたしの恩恵を受けていながら、わたしを認めなかった者、

11 まだ自由を持っていながら、律法をさげすんだ者、

12 悔い改めの余地がまだあったにもかかわらず、悟ろうとせずに軽んじた者はすべて、死後、懲らしめを受けながらそれを認めねばならないのである。

13 あなたは、不敬虔な人々がどのように懲らしめを受けるかということに好奇心を起こしたりせず、むしろ義人がどのように救われるのか、来るべき世はだれのもので、だれのためか、それはいつ来るのかを尋ねなさい。」

結び

14 わたしは言った。

15 「わたしが前に申し上げたことですが、今また申し上げ、今後も言い続けます。滅びる者の方が、救われる者よりも多いのです。

16 それは、流れる水が滴よりも多いのと同じです。」天使は答えた。

17 「種は畑しだい、色は花しだい、出来ぐあいは仕事しだい、脱穀は農夫しだいである。この世には時があり、

18 わたしが、この世のまだ造られぬ前、今生きている人たちのために準備をしていたときには、だれもわたしに逆らわなかった。

19 そのときは、だれもいなかったからである。しかし、この世界に人間が造られたとき、そこには不足することのない食卓と究め難い法則とが備えられていたのに、彼らの生活は堕落した。

20 わたしはわたしの世に思いを向けてみた。するとどうだろう、それは滅びていた。わたしの世界に思いを向けてみた。しかし、そこに生まれて来た者たちのはかりごとのために、それは危険にさらされていた。

21 わたしはそれを見て、ある人たちをかろうじて救った。わたしはぶどうの房から一粒の実を、大きな森から一本の木を救ったのである。

22 だから、理由もなく生まれてきた多くの人々は滅びるがよい。わたしの一粒のぶどうの実とわたしの一本の木が救われればよいのだ。わたしが大変な苦労をしてこれを完成させたのであるから。

23 あなたは更に七日間待ち、その間は断食をしないで、

24 家が建てられたことのない花咲く野原に行き、野の花だけを食べなさい。肉を食べず、ぶどう酒も飲まず、ただ花だけを食べなさい。

25 そして絶えずいと高き方に祈りなさい。そうすれば、わたしは来て、あなたと語ろう。」

第四の幻

エズラの祈り

26 わたしは天使が言ったように、アルダトと呼ばれる野原に行き、そこで花の中に座り、野原の草を食べた。わたしは満腹するまで食べた。

27 七日の後、草の上に横になっていたとき、わたしの心が前と同じように再び乱れてきた。

28 わたしは口を開き、いと高き方の御前に語り始めた。

29 「ああ主よ、あなたは、わたしたちの中で、わたしたちの祖先に御自身を現されました。それは、わたしたちの祖先がエジプトから出て、人が足を踏み入れない不毛の荒れ野を進んでいたときのことでした。あなたはこう言われたのです。

30 『イスラエルよ、聞け。ヤコブの子孫よ、わたしの言葉に耳を傾けなさい。

31 見よ、わたしはあなたたちの中に、わたしの律法を蒔く。それはあなたたちの中で実を結び、それによってあなたたちは、永久にたたえられるだろう。』

32 しかしわたしたちの祖先は、律法を受けながらもそれを守らず、掟を守りませんでした。ところが、律法の実は滅びませんでした。滅びるはずがありませんでした。それは、あなたの律法だったからです。

33 律法を受けた人々の方は、滅びました。自分の中に蒔かれたものを守らなかったからです。

34 世のきまりでは、大地が種を受けるとき、あるいは海が舟を、器が食べ物や飲み物を受けるとき、

35 蒔かれたもの、浮かべられたもの、器に入ったものがなくなっても、器はそのまま残ります。しかしわたしたちの場合はそうではありませんでした。

36 律法を受けたわたしたちの方が、罪を犯しているので滅び、律法を受けたわたしたちの心の方が滅びるのです。

37 律法は滅びることなく、その栄光を保ち続けるのです。」

泣く女の幻

38 心の中でこう言って、目を上げると、右手の方に一人の女が見えた。この女は悲しんで大声で泣いており、深く心を痛めていた。その衣は引き裂かれ、頭に灰をかぶっていた。

39 わたしは思い巡らすのをやめて、彼女に向かって言った。

40 「なぜ泣いているのか。何に心を悩ませているのか。」女は言った。

41 「主よ、私に構わないでください。泣かせてください。悲しくてしかたがないのです。私の心はひどく痛み、私はひどく卑しめられました。」

42 わたしは言った。「何をされたのか。言ってみなさい。」そこで女はわたしに言った。

43 「あなたのはしため、私は、うまずめで三十年の間、夫と暮らしましたが子どもが生まれませんでした。

44 私はこの三十年間、毎日、毎時間、夜も昼もいと高き方にお願いしておりました。

45 三十年の後、神はあなたのはしため、私の願いを聞き入れられ、私の惨めな様を御覧になり、私の苦しみに心を留めてくださり、男の子を授けてくださいました。私も夫も町の人たちも皆、この子のことをとても喜び、私たちは、力ある方を大いにほめたたえました。

46 私はこの子を大変苦労して育てました。

47 この子が成長したとき、私は息子のために嫁を迎えに行き、婚礼の日取りも決めました。

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エズラ記(ラテン語) 10

1 ところが息子は婚姻の寝室に入ったとき、倒れて死んでしまったのです。

2 私たちは皆、明かりを消しました。町の人々は皆、私を慰めに来てくれました。私は、次の日の夜まで気持を抑えていました。

3 しかし、私を落ち着かせようと慰めてくれた人々が皆寝静まったので、私は夜起きて、御覧のとおり、この野原に逃げ出して来たのです。

4 もう町には帰らず、ここにとどまっていようと思います。食べることも飲むこともしません。死ぬまで絶えず嘆き続けて断食をするつもりです。」

5 わたしは、ここまで話を聞いて、それを遮り、怒って彼女に答えた。

6 「愚か者、あなたは女の中で最も愚かだ。あなたにはわたしたちの嘆きや、わたしたちに起こったことが見えないのか。

7 わたしたち皆の母シオンは悲しみに打ちひしがれ、ひどく卑しめられているのだ。このため大いに嘆きなさい。

8 わたしたち皆の嘆きと悲しみを共にして、あなたも嘆くべきだ。ところがあなたは、たった一人の息子のために悲しんでいる。

9 大地に尋ねてみよ。そうすれば大地は言うだろう。『生まれて来るこれほど多くの者たちのために嘆かなければならないのは自分なのだ』と。

10 初めからすべての者は大地から生じ、これからも更に生ずるであろう。しかし、見よ、ほとんどすべての者は、滅びに向かって歩み、多くの者が滅びる。

11 そうすると、どちらの方が深く悲しまねばならないのだろうか。一人のために嘆いているあなたよりも、このように多くの人々を失った大地ではないのか。あなたは言うであろう。

12 『わたしの悲しみは大地のとは違います。わたしは自分の胎の実を失ったのです。わたしは、陣痛の中で、もだえ苦しみながら産んだ子を失ったのです。

13 大地は大地の法則に従っただけのことです。大地の多くの人々は、来たときのように行ってしまったのです』と。しかし、それならわたしは言おう。

14 あなたが苦しみながら子を産んだように、大地もそのようにして、初めからその実である人間を、大地の創造者のために産んだのだ。

15 それゆえ今、あなたの嘆きを自分の中に納めて、あなたにふりかかった災いを力強く受け止めなさい。

16 もしあなたが、神の定めを正しいと認めるなら、やがて時が来て再び子を与えられ、あなたは女の中でたたえられることになるだろう。

17 さあ、町へ戻り、夫のもとに帰りなさい。」女は言った。

18 「いいえ。町には戻らず、ここで死にます。」

19 わたしは更に言った。

20 「そんなことを言うものではない。シオンの失墜がどのようなものであるか、わたしの言うことを聞き分け、エルサレムの痛みを思って自分の慰めとしなさい。

21 あなたも見ているように、わたしたちの至聖所は荒らされ、祭壇は打ち壊され、神殿は破壊された。

22 わたしたちの竪琴の音は消え、賛美の歌はやみ、わたしたちの喜びはなくなった。燭台の明かりは消され、契約の箱は奪われ、聖なる器は汚された。わたしたちに授けられた名も全く冒涜され、わたしたちの指導者たちは侮辱を受け、祭司は焼き殺され、レビ人は捕虜として連れ去られた。おとめたちは汚され、わたしたちの妻は暴行を受け、義人たちは連れ去られ、幼子は捨てられ、若者は奴隷になり、力のある者たちは弱くなった。

23 そして最悪なのは、シオンの証印のことである。神の印を押されていたシオンのかつての栄光は取り消され、わたしたちを憎む者どもの手に渡されたのだ。

24 それゆえ、あなたは自分自身の大きな悲しみを振り払い、多くの苦悩を捨て去りなさい。そうすれば、力ある方が再びあなたを憐れみ、いと高き方があなたに安らぎを与えて、苦労をねぎらってくださる。」

幻の説明

25 わたしが女に話していたとき、驚いたことに、突然彼女の顔が強烈な光を放ち、その姿は稲妻のようにひらめいた。わたしは彼女に対して恐れを抱き、これはいったいどういうことなのだろうと思った。

26 すると突然女は恐ろしい大きな声をとどろかせた。大地がその音で揺れ動いたほどだった。わたしは目を上げた。

27 すると、どうしたことだろう、もう女の姿は見えず、そこには都が建てられつつあり、大きな土台が見えた。わたしは恐ろしくなり、大声で叫んで言った。

28 「初めにわたしのところに来られた天使ウリエルは、どこにおられますか。あの方が、わたしの心をこんなに耐え難いほどに乱されたのですから。わたしの望みは打ち砕かれ、わたしの祈りはかえってむなしくなりました。」

29 わたしがこのように言っていると、見よ、初めにわたしのところに来た天使がやって来て、わたしを見た。

30 そのときわたしは死人のように横たわっており、考える力がなくなっていた。天使はわたしの右手を取り、わたしを力づけ、立ち上がらせて言った。

31 「どうしたというのだ。なぜ取り乱しているのか。なぜ知性も心の思いも乱しているのか。」わたしは言った。

32 「あなたがわたしのことを見捨てられたからです。わたしは実際、あなたの言われたとおりに野原に出ました。すると、どうでしょう。何とも言いようのないものをわたしは見たのです。いや、今も見ているのです。」天使は言った。

33 「男らしく立ちなさい。教えてあげよう。」わたしは言った。

34 「主よ、お話しください。わたしが無益に死ぬことのないように、わたしを見捨てることだけはしないでください。

35 わたしは未知のことを見、未知のことを聞いているのですから。

36 それとも、わたしの心が欺かれ、わたしの魂が夢を見ているのでしょうか。

37 どうかお願いします。僕にこの幻を解き明かしてください。」

38 天使は答えた。「よく聞きなさい。あなたが恐れているものについて説明しよう。いと高き方はあなたに多くの奥義を示されたのだ。

39 いと高き方はあなたがまっすぐに歩んでいるのを御覧になった。あなたが絶えず民のために悲しみ、シオンのために大いに嘆いたからである。

40 幻の意味はこうである。少し前にあなたに現れた女のことであるが、

41 あなたは、その女が泣いているのを見て、慰めようとした。

42 しかし女の姿は今はもう見えず、建設中の都が現れた。

43 彼女は息子の身に起こった不幸についてあなたに話したが、その解き明かしはこうである。

44 すなわち、あなたが見たあの女はシオンであり、あなたが今眺めているのは都として建てられたシオンの姿である。

45 女は三十年の間うまずめだったと、あなたに言ったが、これはシオンにまだ犠牲が献げられていなかった期間が三千年間あったということである。

46 それから三年後にソロモンは都を建て、犠牲を献げた。うまずめが子を産んだというのは、この時のことである。

47 女が息子を苦労して育てたと言ったのは、エルサレムに人が住んでいたときのことである。

48 女は、息子が婚姻の寝室に入ったときに死んで、自分に災難が襲ったことを語ったが、これは、エルサレムの滅亡のことである。

49 さあ、あなたは、シオンがその子のことをどんなに嘆いているかというたとえを見て、起こったことについて彼女を慰めようとしたのである。これがあなたに明らかにされねばならなかったことである。

50 今、いと高き方は、あなたがシオンのために心から悲しみ、心の底から苦しんでいるのを御覧になって、あなたにシオンの輝かしい栄光と、端麗な美しさを示されたのである。

51 家の建てられたことのない野原にとどまるようにと、わたしが言ったのはこのためである。

52 わたしは、いと高き方があなたにこれを示そうとされていたことを知っていた。

53 だからこそ、わたしはあなたに、建物の土台のない野原に来るよう言ったのである。

54 いと高き方の都が示されようとしている所には、人間の手になる建物があってはならないからである。

55 それゆえ恐れてはならない。心を騒がしてはならない。それよりも、建物の中に入って、あなたの目で見ることができるかぎり、その輝かしく壮大なる様を眺めなさい。

56 その後で、あなたは耳で聞くことができるかぎりのことを聞きなさい。

57 あなたは多くの人よりも幸いである。あなたはいと高き方のもとに呼ばれているが、これはごくわずかの人にしかないことである。

58 明日の夜まで、ここにとどまっていなさい。

59 そうすればいと高き方は、終わりの時に地上に住む人々になさろうとしていることを、夢の中の幻であなたに示されるであろう。」

第五の幻

鷲の幻

60 わたしは言われたとおり、その夜も次の夜もそこで眠った。

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エズラ記(ラテン語) 11

1 二日目の夜、わたしは夢を見た。見よ、一羽の鷲が海から昇って来た。その鷲には羽の生えた翼が十二と頭が三つあった。

2 わたしが見ていると、見よ、鷲は翼を全地の上に広げた。そして天の風はすべて、鷲に向かって吹き、雲が鷲の周りに集まった。

3 更に見ていると、羽の間から逆毛の羽が生えて来たが、それらは小さくて貧弱な羽となった。

4 鷲の頭はいずれも不動のままであった。真ん中の頭は他の頭より大きかったが、それも他の頭と一緒にじっと動かなかった。

5 更に見ていると、見よ、鷲はその羽を使って飛び、地とそこに住む人々を支配した。

6 わたしは、天の下のものすべてが、鷲に従っている有様を見た。だれも、地上にある被造物のうち一つとしてこれに逆らうものがなかった。

7 更に見ていると、見よ、鷲はつめをたてて立ち上がり、羽に向かって声を発して言った。

8 「皆が同時に見張りをするな。めいめいが自分のところで眠り、順に見張りをするがよい。

9 頭は最後に用立てる」と。

10 見よ、その声が出ているのは頭からではなく、体の真ん中からであった。

11 わたしは逆毛の羽を数えたが、それは八つあった。

12 更に見ていると、右側から一つの羽が起き上がり、全地を支配した。

13 その羽は支配していたけれども、終わりが来て消えうせ、その在りかすら見えなくなった。そして次の羽が起き上がって支配し、その時代は長く続いた。

14 しかしこの羽も支配しているうちに終わりが来て、前の羽と同様に姿を消そうとしていた。

15 すると、見よ、声が聞こえてきて、その羽に言った。

16 「長い間地を支配していた羽よ、聞くがよい。お前が消えうせる前に、言っておくことがある。

17 お前の後だれも、お前ほど長い間、いや、その半分すらも支配する者はいないだろう。」

18 そして三番目の羽が起き上がり、前の二つの羽のように主権を握ったが、これも消えうせた。

19 このように、すべての翼は代わる代わる主権を行使していったが、再び現れることは決してなかった。

20 更に見ていると、見よ、時が来て、次の羽が自分たちも主権を握ろうとして右側から起き上がった。これらの中には、支配したものもあったが、すぐに消えうせた。

21 またあるものは起き上がったが、主権を握るに至らなかった。

22 この後更に見ていると、見よ、十二の羽と二つの小さな羽が消えうせた。

23 そして、鷲の体には、じっとしている三つの頭と六つの小さな羽以外には、何も残らなかった。

24 更に見ていると、六つの小さな羽から二つが離れて、右側の頭の下にとどまった。四つの小さな羽はそのまま元の場所にとどまっていた。

25 見ていると、見よ、この四つの下の羽は立ち上がって主権を握ろうと企てていた。

26 更に見ていると、その一つが立ち上がった。しかし、すぐ消えうせた。

27 それから第二のものが立ち上がったが、これは、第一のものより早く消えうせた。

28 更に見ていると、残った二つの羽は、自分たちも支配しようと企てていた。

29 彼らがこのようなことを考えていたとき、見よ、じっとしていた頭のうちの一つで、真ん中のものが目を覚ました。これは他の二つよりも大きかった。

30 見ていると、この頭は、他の二つを味方に引き入れた。

31 この頭は、味方にした他の頭と一緒に振り向き、支配しようと企てていた下の二つの羽を食べてしまった。

32 この頭は全地を制圧し、地に住む人々を支配して大いに苦しめた。そして、それまでのどの翼よりも大きな権力を全世界に振るった。

33 この後、更に見ていると、真ん中の頭が、翼のときと同じように、突然消えうせた。

34 さて、二つの頭が残った。この二つの頭も同様に、地とそこに住む人々を、支配した。

35 更に見ていると、見よ、右側の頭が左側の頭を食べてしまった。

36 わたしに話しかける声が聞こえてきた。「目の前をよく見て、見えるものについて考えなさい」と。

37 わたしは見た。すると、森から獅子のようなものがほえながら起き上がって出て来た。そして、それが鷲に向かって人の声を発して言うのが聞こえた。

38 「聞け、お前に言うことがある。いと高き方はお前にこう言われる。

39 『お前は、わたしが世を支配させ、わたしの時の終わりを来させるために造った四つの獣の生き残りではないか』と。

40 お前は四番目にやって来て、それまでの獣をすべて征服し、権力を振るって世を大いに震え上がらせ、全世界をひどく苦しめ、またこれほど長い間、世に住み着いて欺いた。

41 お前は地を裁いたが、真理によってではなかった。

42 お前は柔和な人を苦しめ、黙している人を傷つけ、真実を語る人を憎み、うそつきを愛し、栄える者の住居を壊し、お前に何の害も及ぼさなかった人の城壁を打ち倒した。

43 お前の非道はいと高き方に、お前の傲慢は力ある者に達した。

44 そこでいと高き方は、御自分の定めた時を顧みられた。すると、時は終わり、世は完了していた。

45 それゆえ、鷲よ、お前は消えうせるのだ。お前の恐ろしい翼も、最も邪悪な小さな羽も、悪意に満ちたお前の頭も、最も邪悪なつめも、むなしいお前の体全体も消えうせるのだ。

46 そうすれば、全地は、お前の暴力から解放されて力を取り戻し、地を造られた方の裁きと憐れみを待ち望むことができるであろう。」

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