ヨブ記 1

事の起こり 1 ウツの地にヨブという人がいた。無垢な正しい人で、神を畏れ、悪を避けて生きていた。 2 七人の息子と三人の娘を持ち、 3 羊七千匹、らくだ三千頭、牛五百くびき、雌ろば五百頭の財産があり、使用人も非常に多かった。彼は東の国一番の富豪であった。 4 息子たちはそれぞれ順番に、自分の家で宴会の用意をし、三人の姉妹も招いて食事をすることにしていた。 5 この宴会が一巡りするごとに、ヨブは息子たちを呼び寄せて聖別し、朝早くから彼らの数に相当するいけにえをささげた。「息子たちが罪を犯し、心の中で神を呪ったかもしれない」と思ったからである。ヨブはいつもこのようにした。 6 ある日、主の前に神の使いたちが集まり、サタンも来た。 7 主はサタンに言われた。「お前はどこから来た。」「地上を巡回しておりました。ほうぼうを歩きまわっていました」とサタンは答えた。 8 主はサタンに言われた。「お前はわたしの僕ヨブに気づいたか。地上に彼ほどの者はいまい。無垢な正しい人で、神を畏れ、悪を避けて生きている。」 9 サタンは答えた。「ヨブが、利益もないのに神を敬うでしょうか。 10 あなたは彼とその一族、全財産を守っておられるではありませんか。彼の手の業をすべて祝福なさいます。お陰で、彼の家畜はその地に溢れるほどです。 11 ひとつこの辺で、御手を伸ばして彼の財産に触れてごらんなさい。面と向かってあなたを呪うにちがいありません。」 12 主はサタンに言われた。「それでは、彼のものを一切、お前のいいようにしてみるがよい。ただし彼には、手を出すな。」サタンは主のもとから出て行った。 13 ヨブの息子、娘が、長兄の家で宴会を開いていた日のことである。 14-15 ヨブのもとに、一人の召使いが報告に来た。「御報告いたします。わたしどもが、牛に畑を耕させ、その傍らでろばに草を食べさせておりますと、シェバ人が襲いかかり、略奪していきました。牧童たちは切り殺され、わたしひとりだけ逃げのびて参りました。」 16 彼が話し終らないうちに、また一人が来て言った。「御報告いたします。天から神の火が降って、羊も羊飼いも焼け死んでしまいました。わたしひとりだけ逃げのびて参りました。」 17 彼が話し終らないうちに、また一人来て言った。「御報告いたします。カルデア人が三部隊に分かれてらくだの群れを襲い、奪っていきました。牧童たちは切り殺され、わたしひとりだけ逃げのびて参りました。」 18 彼が話し終らないうちに、更にもう一人来て言った。「御報告いたします。御長男のお宅で、御子息、御息女の皆様が宴会を開いておられました。 19 すると、荒れ野の方から大風が来て四方から吹きつけ、家は倒れ、若い方々は死んでしまわれました。わたしひとりだけ逃げのびて参りました。」 20 ヨブは立ち上がり、衣を裂き、髪をそり落とし、地にひれ伏して言った。 21 「わたしは裸で母の胎を出た。裸でそこに帰ろう。主は与え、主は奪う。主の御名はほめたたえられよ。」 22 このような時にも、ヨブは神を非難することなく、罪を犯さなかった。 —https://cdn-youversionapi.global.ssl.fastly.net/audio-bible-youversionapi/531/32k/JOB/1-a3f5d9a5f0beb8efd08c1319b1f132a7.mp3?version_id=1819—

ヨブ記 2

1 またある日、主の前に神の使いたちが集まり、サタンも来て、主の前に進み出た。 2 主はサタンに言われた。「お前はどこから来た。」「地上を巡回しておりました。ほうぼうを歩きまわっていました」とサタンは答えた。 3 主はサタンに言われた。「お前はわたしの僕ヨブに気づいたか。地上に彼ほどの者はいまい。無垢な正しい人で、神を畏れ、悪を避けて生きている。お前は理由もなく、わたしを唆して彼を破滅させようとしたが、彼はどこまでも無垢だ。」 4 サタンは答えた。「皮には皮を、と申します。まして命のためには全財産を差し出すものです。 5 手を伸ばして彼の骨と肉に触れてごらんなさい。面と向かってあなたを呪うにちがいありません。」 6 主はサタンに言われた。「それでは、彼をお前のいいようにするがよい。ただし、命だけは奪うな。」 7 サタンは主の前から出て行った。サタンはヨブに手を下し、頭のてっぺんから足の裏までひどい皮膚病にかからせた。 8 ヨブは灰の中に座り、素焼きのかけらで体中をかきむしった。 9 彼の妻は、/「どこまでも無垢でいるのですか。神を呪って、死ぬ方がましでしょう」と言ったが、 10 ヨブは答えた。「お前まで愚かなことを言うのか。わたしたちは、神から幸福をいただいたのだから、不幸もいただこうではないか。」このようになっても、彼は唇をもって罪を犯すことをしなかった。 11 さて、ヨブと親しいテマン人エリファズ、シュア人ビルダド、ナアマ人ツォファルの三人は、ヨブにふりかかった災難の一部始終を聞くと、見舞い慰めようと相談して、それぞれの国からやって来た。 12 遠くからヨブを見ると、それと見分けられないほどの姿になっていたので、嘆きの声をあげ、衣を裂き、天に向かって塵を振りまき、頭にかぶった。 13 彼らは七日七晩、ヨブと共に地面に座っていたが、その激しい苦痛を見ると、話しかけることもできなかった。 —https://cdn-youversionapi.global.ssl.fastly.net/audio-bible-youversionapi/531/32k/JOB/2-53e1a9951e6094fe44fed63835141906.mp3?version_id=1819—

ヨブ記 3

ヨブの嘆き 1 やがてヨブは口を開き、自分の生まれた日を呪って、 2 言った。 3 わたしの生まれた日は消えうせよ。男の子をみごもったことを告げた夜も。 4 その日は闇となれ。神が上から顧みることなく/光もこれを輝かすな。 5 暗黒と死の闇がその日を贖って取り戻すがよい。密雲がその上に立ちこめ/昼の暗い影に脅かされよ。 6 闇がその夜をとらえ/その夜は年の日々に加えられず/月の一日に数えられることのないように。 7 その夜は、はらむことなく/喜びの声もあがるな。 8 日に呪いをかける者/レビヤタンを呼び起こす力ある者が/その日を呪うがよい。 9 その日には、夕べの星も光を失い/待ち望んでも光は射さず/曙のまばたきを見ることもないように。 10 その日が、わたしをみごもるべき腹の戸を閉ざさず/この目から労苦を隠してくれなかったから。 11 なぜ、わたしは母の胎にいるうちに/死んでしまわなかったのか。せめて、生まれてすぐに息絶えなかったのか。 12 なぜ、膝があってわたしを抱き/乳房があって乳を飲ませたのか。 13 それさえなければ、今は黙して伏し/憩いを得て眠りについていたであろうに。 14 今は廃虚となった町々を築いた/地の王や参議らと共に 15 金を蓄え、館を銀で満たした諸侯と共に。 16 なぜわたしは、葬り去られた流産の子/光を見ない子とならなかったのか。 17 そこでは神に逆らう者も暴れ回ることをやめ/疲れた者も憩いを得 18 捕われ人も、共にやすらぎ/追い使う者の声はもう聞こえない。 19 そこには小さい人も大きい人も共にいて/奴隷も主人から自由になる。 20 なぜ、労苦する者に光を賜り/悩み嘆く者を生かしておかれるのか。 21 彼らは死を待っているが、死は来ない。地に埋もれた宝にもまさって/死を探し求めているのに。 22 墓を見いだすことさえできれば/喜び躍り、歓喜するだろうに。 23 行くべき道が隠されている者の前を/神はなお柵でふさがれる。 24 日ごとのパンのように嘆きがわたしに巡ってくる。湧き出る水のようにわたしの呻きはとどまらない。 25 恐れていたことが起こった/危惧していたことが襲いかかった。 26 静けさも、やすらぎも失い/憩うこともできず、わたしはわななく。 —https://cdn-youversionapi.global.ssl.fastly.net/audio-bible-youversionapi/531/32k/JOB/3-d5b35eef85dbe82bd0ae320116c4382f.mp3?version_id=1819—

ヨブ記 4

ヨブと三人の友の議論一 1 テマン人エリファズは話し始めた。 2 あえてひとこと言ってみよう。あなたを疲れさせるだろうが/誰がものを言わずにいられようか。 3 あなたは多くの人を諭し/力を失った手を強めてきた。 4 あなたの言葉は倒れる人を起こし/くずおれる膝に力を与えたものだった。 5 だが、そのあなたの上に何事かふりかかると/あなたは弱ってしまう。それがあなたの身に及ぶと、おびえる。 6 神を畏れる生き方が/あなたの頼みではなかったのか。完全な道を歩むことが/あなたの希望ではなかったのか。 7 考えてみなさい。罪のない人が滅ぼされ/正しい人が絶たれたことがあるかどうか。 8 わたしの見てきたところでは/災いを耕し、労苦を蒔く者が/災いと労苦を収穫することになっている。 9 彼らは神の息によって滅び/怒りの息吹によって消えうせる。 10 獅子がほえ、うなっても/その子らの牙は折られてしまう。 11 雄が獲物がなくて滅びれば/雌の子らはちりぢりにされる。 12 忍び寄る言葉があり/わたしの耳はそれをかすかに聞いた。 13 夜の幻が人を惑わし/深い眠りが人を包むころ 14 恐れとおののきが臨み/わたしの骨はことごとく震えた。 15 風が顔をかすめてゆき/身の毛がよだった。 16 何ものか、立ち止まったが/その姿を見分けることはできなかった。ただ、目の前にひとつの形があり/沈黙があり、声が聞こえた。 17 「人が神より正しくありえようか。造り主より清くありえようか。 18 神はその僕たちをも信頼せず/御使いたちをさえ賞賛されない。 19 まして人は/塵の中に基を置く土の家に住む者。しみに食い荒らされるように、崩れ去る。 20 日の出から日の入りまでに打ち砕かれ/心に留める者もないままに、永久に滅び去る。 21 天幕の綱は引き抜かれ/施すすべも知らず、死んでゆく。」 —https://cdn-youversionapi.global.ssl.fastly.net/audio-bible-youversionapi/531/32k/JOB/4-182065094f3a3ae2aad510eaa1a76dfb.mp3?version_id=1819—

ヨブ記 5

1 呼んでみよ/あなたに答える者がいるかどうか。聖なるものをおいて、誰に頼ろうというのか。 2 愚か者は怒って自ら滅び/無知な者はねたんで死に至る。 3 愚か者が根を張るのを見て/わたしは直ちにその家を呪った。 4 「その子らは安全な境遇から遠ざけられ/助ける者もなく町の門で打ち砕かれるがよい。 5 彼らの収穫は、飢えた人が食い尽くし/その富は、渇いた人が飲み尽くし/その財産は、やせ衰えた人が奪うがよい。」 6 塵からは、災いは出てこない。土からは、苦しみは生じない。 7 それなのに、人間は生まれれば必ず苦しむ。火花が必ず上に向かって飛ぶように。 8 わたしなら、神に訴え/神にわたしの問題を任せるだろう。 9 計り難く大きな業を/数知れぬ不思議な業を成し遂げられる方に。 10 神は地の面に雨を降らせ/野に水を送ってくださる。 11 卑しめられている者を高く上げ/嘆く者を安全な境遇に引き上げてくださる。 12 こざかしい者の企てを砕いて/彼らの手の業が成功することを許されない。 13 知恵ある者はさかしさの罠にかかり/よこしまな者はたくらんでも熟さない。 14 真昼にも、暗黒に出会い/昼も、夜であるかのように手探りする。 15 神は貧しい人を剣の刃から/権力者の手から救い出してくださる。 16 だからこそ、弱い人にも希望がある。不正はその口を閉ざすであろう。 17 見よ、幸いなのは/神の懲らしめを受ける人。全能者の戒めを拒んではならない。 18 彼は傷つけても、包み/打っても、その御手で癒してくださる。 19 六度苦難が襲っても、あなたを救い/七度襲っても/災いがあなたに触れないようにしてくださる。 20 飢饉の時には死から/戦いの時には剣から助け出してくださる。 21 あなたは、陥れる舌からも守られている。略奪する者が襲っても/恐怖を抱くことはない。 22 略奪や飢饉を笑っていられる。地の獣に恐怖を抱くこともない。 23 野の石とは契約を結び/野の獣とは和解する。 24 あなたは知るだろう/あなたの天幕は安全で/牧場の群れを数えて欠けるもののないことを。 25 あなたは知るだろう/あなたの子孫は増え/一族は野の草のように茂ることを。 26 麦が実って収穫されるように/あなたは天寿を全うして墓に入ることだろう。 27 見よ、これが我らの究めたところ。これこそ確かだ。よく聞いて、悟るがよい。 —https://cdn-youversionapi.global.ssl.fastly.net/audio-bible-youversionapi/531/32k/JOB/5-0b937a6b461f53ab9cc13b8b71cab000.mp3?version_id=1819—

ヨブ記 6

1 ヨブは答えた。 2 わたしの苦悩を秤にかけ/わたしを滅ぼそうとするものを/すべて天秤に載せるなら 3 今や、それは海辺の砂よりも重いだろう。わたしは言葉を失うほどだ。 4 全能者の矢に射抜かれ/わたしの霊はその毒を吸う。神はわたしに対して脅迫の陣を敷かれた。 5 青草があるのに野ろばが鳴くだろうか。飼葉があるのに牛がうなるだろうか。 6 味のない物を塩もつけずに食べられようか。玉子の白身に味があろうか。 7 わたしのパンが汚れたもののようになれば/わたしの魂は触れることを拒むだろう。 8 神よ、わたしの願いをかなえ/望みのとおりにしてください。 9 神よ、どうかわたしを打ち砕き/御手を下し、滅ぼしてください。 10 仮借ない苦痛の中でもだえても/なお、わたしの慰めとなるのは/聖なる方の仰せを覆わなかったということです。 11 わたしはなお待たなければならないのか。そのためにどんな力があるというのか。なお忍耐しなければならないのか。そうすればどんな終りが待っているのか。 12 わたしに岩のような力があるというのか。このからだが青銅のようだというのか。 13 いや、わたしにはもはや助けとなるものはない。力も奪い去られてしまった。 14 絶望している者にこそ/友は忠実であるべきだ。さもないと/全能者への畏敬を失わせることになる。 15 わたしの兄弟は流れのようにわたしを欺く。流れが去った後の川床のように。 16 流れは氷に暗く覆われることもあり/雪が解けて流れることもある。 17 季節が変わればその流れも絶え/炎暑にあえば、どこかへ消えてしまう。 18 そのために隊商は道に迷い/混沌に踏み込んで道を失う。 19 テマの隊商はその流れを目当てにし/シェバの旅人はそれに望みをかけて来るが 20 確信していたのに、裏切られ/そこまで来て、うろたえる。 21 今や、あなたたちもそのようになった。破滅を見て、恐れている。 22 わたしが言ったことがあろうか/「頼む、わたしのために/あなたたちの財産を割いて 23 苦しめる者の手から救い出し/暴虐な者の手からわたしを贖ってくれ」と。 24 間違っているなら分からせてくれ/教えてくれれば口を閉ざそう。 25 率直な話のどこが困難なのか。あなたたちの議論は何のための議論なのか。 26 言葉数が議論になると思うのか。絶望した者の言うことを風にすぎないと思うのか。 27 あなたたちは孤児をすらくじで取り引きし/友をさえ売り物にするのか。 28 […]

ヨブ記 7

1 この地上に生きる人間は兵役にあるようなもの。傭兵のように日々を送らなければならない。 2 奴隷のように日の暮れるのを待ち焦がれ/傭兵のように報酬を待ち望む。 3 そうだ/わたしの嗣業はむなしく過ぎる月日。労苦の夜々が定められた報酬。 4 横たわればいつ起き上がれるのかと思い/夜の長さに倦み/いらだって夜明けを待つ。 5 肉は蛆虫とかさぶたに覆われ/皮膚は割れ、うみが出ている。 6 わたしの一生は機の梭よりも速く/望みもないままに過ぎ去る。 7 忘れないでください/わたしの命は風にすぎないことを。わたしの目は二度と幸いを見ないでしょう。 8 わたしを見ている目は、やがてわたしを見失い/あなたが目を注がれても/わたしはもういないでしょう。 9 密雲も薄れ、やがて消え去る。そのように、人も陰府に下れば/もう、上ってくることはない。 10 再びその家に帰ることはなく/住みかもまた、彼を忘れてしまう。 11 わたしも口を閉じてはいられない。苦悶のゆえに語り、悩み嘆いて訴えよう。 12 わたしは海の怪物なのか竜なのか/わたしに対して見張りを置かれるとは。 13 「床に入れば慰めもあろう/横たわれば嘆きも治まる」と思ったが 14 あなたは夢をもってわたしをおののかせ/幻をもって脅かされる。 15 わたしの魂は息を奪われることを願い/骨にとどまるよりも死を選ぶ。 16 もうたくさんだ、いつまでも生きていたくない。ほうっておいてください/わたしの一生は空しいのです。 17 人間とは何なのか。なぜあなたはこれを大いなるものとし/これに心を向けられるのか。 18 朝ごとに訪れて確かめ/絶え間なく調べられる。 19 いつまでもわたしから目をそらされない。唾を飲み込む間すらも/ほうっておいてはくださらない。 20 人を見張っている方よ/わたしが過ちを犯したとしても/あなたにとってそれが何だというのでしょう。なぜ、わたしに狙いを定められるのですか。なぜ、わたしを負担とされるのですか。 21 なぜ、わたしの罪を赦さず/悪を取り除いてくださらないのですか。今や、わたしは横たわって塵に返る。あなたが捜し求めても/わたしはもういないでしょう。 —https://cdn-youversionapi.global.ssl.fastly.net/audio-bible-youversionapi/531/32k/JOB/7-daa471f299d93934fccbea909effc52b.mp3?version_id=1819—

ヨブ記 8

1 シュア人ビルダドは話し始めた。 2 いつまで、そんなことを言っているのか。あなたの口の言葉は激しい風のようだ。 3 神が裁きを曲げられるだろうか。全能者が正義を曲げられるだろうか。 4 あなたの子らが/神に対して過ちを犯したからこそ/彼らをその罪の手にゆだねられたのだ。 5 あなたが神を捜し求め/全能者に憐れみを乞うなら 6 また、あなたが潔白な正しい人であるなら/神は必ずあなたを顧み/あなたの権利を認めて/あなたの家を元どおりにしてくださる。 7 過去のあなたは小さなものであったが/未来のあなたは非常に大きくなるであろう。 8 過去の世代に尋ねるがよい。父祖の究めたところを確かめてみるがよい。 9 わたしたちはほんの昨日からの存在で/何も分かってはいないのだから。地上での日々は影にすぎない。 10 父祖はあなたを教え導き/心に悟ったところから語りかけるであろう。 11 沼地でもない所で、パピルスが育とうか/水もないところで葦が茂ろうか。 12 芽を出すや否や、切られもしないのに/どんな草よりも早く枯れる。 13 すべて神を忘れる者の道はこのようだ。神を無視する者の望みは消えうせ 14 頼みの綱は断ち切られる。よりどころはくもの巣のようなもの。 15 家によりかかっても家はそれに堪えず/すがりついてもそれは立ちえない。 16 水があれば葦は太陽にも負けず/園に若枝を芽生えさせる。 17 根を石にまつわらせ/その石と石の奥にまで入り込み 18 その場所では呑み込まれたようでも/お前など知らない、と拒まれても 19 葦は、生き生きと道を探り/ほかの土から芽を出す。 20 そのように、無垢な人を退けることもせず/悪を行う者の手を取って/支えることもなさらない神は 21 なお、あなたの口に笑いを満たし/あなたの唇に歓びの叫びを与えてくださる。 22 あなたを憎む者は恥を被り/神に逆らう者の天幕は消えうせるであろう。 —https://cdn-youversionapi.global.ssl.fastly.net/audio-bible-youversionapi/531/32k/JOB/8-1c15ad622406ad8dff6a036c2f272623.mp3?version_id=1819—

ヨブ記 9

1 ヨブは答えた。 2 それは確かにわたしも知っている。神より正しいと主張できる人間があろうか。 3 神と論争することを望んだとしても/千に一つの答えも得られないだろう。 4 御心は知恵に満ち、力に秀でておられる。神に対して頑になりながら/なお、無傷でいられようか。 5 神は山をも移される。怒りによって山を覆されるのだと誰が知ろう。 6 神は大地をその立つ所で揺り動かし/地の柱は揺らぐ。 7 神が禁じられれば太陽は昇らず/星もまた、封じ込められる。 8 神は自ら天を広げ、海の高波を踏み砕かれる。 9 神は北斗やオリオンを/すばるや、南の星座を造られた。 10 神は計り難く大きな業を/数知れぬ不思議な業を成し遂げられる。 11 神がそばを通られてもわたしは気づかず/過ぎ行かれてもそれと悟らない。 12 神が奪うのに誰が取り返せよう。「何をするのだ」と誰が言いえよう。 13 神は怒りを抑えられることなく/ラハブに味方する者も/神の足もとにひれ伏すであろう。 14 わたしのようなものがどうして神に答え/神に対して言うべき言葉を選び出せよう。 15 わたしの方が正しくても、答えることはできず/わたしを裁く方に憐れみを乞うだけだ。 16 しかし、わたしが呼びかけても返事はなさるまい。わたしの声に耳を傾けてくださるとは思えない。 17 神は髪の毛一筋ほどのことでわたしを傷つけ/理由もなくわたしに傷を加えられる。 18 息つく暇も与えず、苦しみに苦しみを加えられる。 19 力に訴えても、見よ、神は強い。正義に訴えても/証人となってくれるものはいない。 20 わたしが正しいと主張しているのに/口をもって背いたことにされる。無垢なのに、曲がった者とされる。 21 無垢かどうかすら、もうわたしは知らない。生きていたくない。 22 だからわたしは言う、同じことなのだ、と/神は無垢な者も逆らう者も/同じように滅ぼし尽くされる、と。 23 罪もないのに、突然、鞭打たれ/殺される人の絶望を神は嘲笑う。 24 この地は神に逆らう者の手にゆだねられている。神がその裁判官の顔を覆われたのだ。ちがうというなら、誰がそうしたのか。 25 わたしの人生の日々は/飛脚よりも速く飛び去り/幸せを見ることはなかった。 26 葦の小舟に乗せられたかのように流れ去り/獲物を襲う鷲のように速い。 27 嘆きを忘れよう/この有様を離れて立ち直りたいと言ってみても 28 […]

ヨブ記 10

1 わたしの魂は生きることをいとう。嘆きに身をゆだね、悩み嘆いて語ろう。 2 神にこう言おう。「わたしに罪があると言わないでください。なぜわたしと争われるのかを教えてください。 3 手ずから造られたこのわたしを虐げ退けて/あなたに背く者のたくらみには光を当てられる。それでいいのでしょうか。 4 あなたも肉の目を持ち/人間と同じ見方をなさるのですか。 5 人間同様に一生を送り/男の一生に似た歳月を送られるのですか。 6 なぜわたしをとがめ立てし/過ちを追及なさるのですか 7 わたしが背く者ではないと知りながら/あなたの手から/わたしを救いうる者はないと知りながら。 8 御手をもってわたしを形づくってくださったのに/あなたはわたしを取り巻くすべてのものをも/わたしをも、呑み込んでしまわれる。 9 心に留めてください/土くれとしてわたしを造り/塵に戻されるのだということを。 10 あなたはわたしを乳のように注ぎ出し/チーズのように固め 11 骨と筋を編み合わせ/それに皮と肉を着せてくださった。 12 わたしに命と恵みを約束し/あなたの加護によって/わたしの霊は保たれていました。 13 しかし、あなたの心に隠しておられたことが/今、わたしに分かりました。 14 もし過ちを犯そうものなら/あなたはそのわたしに目をつけ/悪から清めてはくださらないのです。 15 逆らおうものなら、わたしは災いを受け/正しくても、頭を上げることはできず/辱めに飽き、苦しみを見ています。 16 わたしが頭をもたげようものなら/あなたは獅子のように襲いかかり/繰り返し、わたしを圧倒し 17 わたしに対して次々と証人を繰り出し/いよいよ激しく怒り/新たな苦役をわたしに課せられます。 18 なぜ、わたしを母の胎から引き出したのですか。わたしなど、だれの目にも止まらぬうちに/死んでしまえばよかったものを。 19 あたかも存在しなかったかのように/母の胎から墓へと運ばれていればよかったのに。 20 わたしの人生など何ほどのこともないのです。わたしから離れ去り、立ち直らせてください。 21 二度と帰って来られない暗黒の死の闇の国に/わたしが行ってしまう前に。 22 その国の暗さは全くの闇で/死の闇に閉ざされ、秩序はなく/闇がその光となるほどなのだ。」 —https://cdn-youversionapi.global.ssl.fastly.net/audio-bible-youversionapi/531/32k/JOB/10-e8bafd61e63d27342100b9f24b29ac12.mp3?version_id=1819—