ヨハネによる福音書 1

言が肉となった 1 初めに言があった。言は神と共にあった。言は神であった。 2 この言は、初めに神と共にあった。 3 万物は言によって成った。成ったもので、言によらずに成ったものは何一つなかった。 4 言の内に命があった。命は人間を照らす光であった。 5 光は暗闇の中で輝いている。暗闇は光を理解しなかった。 6 神から遣わされた一人の人がいた。その名はヨハネである。 7 彼は証しをするために来た。光について証しをするため、また、すべての人が彼によって信じるようになるためである。 8 彼は光ではなく、光について証しをするために来た。 9 その光は、まことの光で、世に来てすべての人を照らすのである。 10 言は世にあった。世は言によって成ったが、世は言を認めなかった。 11 言は、自分の民のところへ来たが、民は受け入れなかった。 12 しかし、言は、自分を受け入れた人、その名を信じる人々には神の子となる資格を与えた。 13 この人々は、血によってではなく、肉の欲によってではなく、人の欲によってでもなく、神によって生まれたのである。 14 言は肉となって、わたしたちの間に宿られた。わたしたちはその栄光を見た。それは父の独り子としての栄光であって、恵みと真理とに満ちていた。 15 ヨハネは、この方について証しをし、声を張り上げて言った。「『わたしの後から来られる方は、わたしより優れている。わたしよりも先におられたからである』とわたしが言ったのは、この方のことである。」 16 わたしたちは皆、この方の満ちあふれる豊かさの中から、恵みの上に、更に恵みを受けた。 17 律法はモーセを通して与えられたが、恵みと真理はイエス・キリストを通して現れたからである。 18 いまだかつて、神を見た者はいない。父のふところにいる独り子である神、この方が神を示されたのである。 洗礼者ヨハネの証し 19 さて、ヨハネの証しはこうである。エルサレムのユダヤ人たちが、祭司やレビ人たちをヨハネのもとへ遣わして、「あなたは、どなたですか」と質問させたとき、 20 彼は公言して隠さず、「わたしはメシアではない」と言い表した。 21 彼らがまた、「では何ですか。あなたはエリヤですか」と尋ねると、ヨハネは、「違う」と言った。更に、「あなたは、あの預言者なのですか」と尋ねると、「そうではない」と答えた。 22 そこで、彼らは言った。「それではいったい、だれなのです。わたしたちを遣わした人々に返事をしなければなりません。あなたは自分を何だと言うのですか。」 23 ヨハネは、預言者イザヤの言葉を用いて言った。「わたしは荒れ野で叫ぶ声である。『主の道をまっすぐにせよ』と。」 24 遣わされた人たちはファリサイ派に属していた。 25 彼らがヨハネに尋ねて、「あなたはメシアでも、エリヤでも、またあの預言者でもないのに、なぜ、洗礼を授けるのですか」と言うと、 26 ヨハネは答えた。「わたしは水で洗礼を授けるが、あなたがたの中には、あなたがたの知らない方がおられる。 27 […]

ヨハネによる福音書 2

カナでの婚礼 1 三日目に、ガリラヤのカナで婚礼があって、イエスの母がそこにいた。 2 イエスも、その弟子たちも婚礼に招かれた。 3 ぶどう酒が足りなくなったので、母がイエスに、「ぶどう酒がなくなりました」と言った。 4 イエスは母に言われた。「婦人よ、わたしとどんなかかわりがあるのです。わたしの時はまだ来ていません。」 5 しかし、母は召し使いたちに、「この人が何か言いつけたら、そのとおりにしてください」と言った。 6 そこには、ユダヤ人が清めに用いる石の水がめが六つ置いてあった。いずれも二ないし三メトレテス入りのものである。 7 イエスが、「水がめに水をいっぱい入れなさい」と言われると、召し使いたちは、かめの縁まで水を満たした。 8 イエスは、「さあ、それをくんで宴会の世話役のところへ持って行きなさい」と言われた。召し使いたちは運んで行った。 9 世話役はぶどう酒に変わった水の味見をした。このぶどう酒がどこから来たのか、水をくんだ召し使いたちは知っていたが、世話役は知らなかったので、花婿を呼んで、 10 言った。「だれでも初めに良いぶどう酒を出し、酔いがまわったころに劣ったものを出すものですが、あなたは良いぶどう酒を今まで取って置かれました。」 11 イエスは、この最初のしるしをガリラヤのカナで行って、その栄光を現された。それで、弟子たちはイエスを信じた。 12 この後、イエスは母、兄弟、弟子たちとカファルナウムに下って行き、そこに幾日か滞在された。 神殿から商人を追い出す 13 ユダヤ人の過越祭が近づいたので、イエスはエルサレムへ上って行かれた。 14 そして、神殿の境内で牛や羊や鳩を売っている者たちと、座って両替をしている者たちを御覧になった。 15 イエスは縄で鞭を作り、羊や牛をすべて境内から追い出し、両替人の金をまき散らし、その台を倒し、 16 鳩を売る者たちに言われた。「このような物はここから運び出せ。わたしの父の家を商売の家としてはならない。」 17 弟子たちは、「あなたの家を思う熱意がわたしを食い尽くす」と書いてあるのを思い出した。 18 ユダヤ人たちはイエスに、「あなたは、こんなことをするからには、どんなしるしをわたしたちに見せるつもりか」と言った。 19 イエスは答えて言われた。「この神殿を壊してみよ。三日で建て直してみせる。」 20 それでユダヤ人たちは、「この神殿は建てるのに四十六年もかかったのに、あなたは三日で建て直すのか」と言った。 21 イエスの言われる神殿とは、御自分の体のことだったのである。 22 イエスが死者の中から復活されたとき、弟子たちは、イエスがこう言われたのを思い出し、聖書とイエスの語られた言葉とを信じた。 イエスは人間の心を知っておられる 23 イエスは過越祭の間エルサレムにおられたが、そのなさったしるしを見て、多くの人がイエスの名を信じた。 24 しかし、イエス御自身は彼らを信用されなかった。それは、すべての人のことを知っておられ、 25 人間についてだれからも証ししてもらう必要がなかったからである。イエスは、何が人間の心の中にあるかをよく知っておられたのである。 —https://cdn-youversionapi.global.ssl.fastly.net/audio-bible-youversionapi/531/32k/JHN/2-05f1c5e0e1434d940746acd444e8b8fe.mp3?version_id=1819—

ヨハネによる福音書 3

イエスとニコデモ 1 さて、ファリサイ派に属する、ニコデモという人がいた。ユダヤ人たちの議員であった。 2 ある夜、イエスのもとに来て言った。「ラビ、わたしどもは、あなたが神のもとから来られた教師であることを知っています。神が共におられるのでなければ、あなたのなさるようなしるしを、だれも行うことはできないからです。」 3 イエスは答えて言われた。「はっきり言っておく。人は、新たに生まれなければ、神の国を見ることはできない。」 4 ニコデモは言った。「年をとった者が、どうして生まれることができましょう。もう一度母親の胎内に入って生まれることができるでしょうか。」 5 イエスはお答えになった。「はっきり言っておく。だれでも水と霊とによって生まれなければ、神の国に入ることはできない。 6 肉から生まれたものは肉である。霊から生まれたものは霊である。 7 『あなたがたは新たに生まれねばならない』とあなたに言ったことに、驚いてはならない。 8 風は思いのままに吹く。あなたはその音を聞いても、それがどこから来て、どこへ行くかを知らない。霊から生まれた者も皆そのとおりである。」 9 するとニコデモは、「どうして、そんなことがありえましょうか」と言った。 10 イエスは答えて言われた。「あなたはイスラエルの教師でありながら、こんなことが分からないのか。 11 はっきり言っておく。わたしたちは知っていることを語り、見たことを証ししているのに、あなたがたはわたしたちの証しを受け入れない。 12 わたしが地上のことを話しても信じないとすれば、天上のことを話したところで、どうして信じるだろう。 13 天から降って来た者、すなわち人の子のほかには、天に上った者はだれもいない。 14 そして、モーセが荒れ野で蛇を上げたように、人の子も上げられねばならない。 15 それは、信じる者が皆、人の子によって永遠の命を得るためである。 16 神は、その独り子をお与えになったほどに、世を愛された。独り子を信じる者が一人も滅びないで、永遠の命を得るためである。 17 神が御子を世に遣わされたのは、世を裁くためではなく、御子によって世が救われるためである。 18 御子を信じる者は裁かれない。信じない者は既に裁かれている。神の独り子の名を信じていないからである。 19 光が世に来たのに、人々はその行いが悪いので、光よりも闇の方を好んだ。それが、もう裁きになっている。 20 悪を行う者は皆、光を憎み、その行いが明るみに出されるのを恐れて、光の方に来ないからである。 21 しかし、真理を行う者は光の方に来る。その行いが神に導かれてなされたということが、明らかになるために。」 イエスと洗礼者ヨハネ 22 その後、イエスは弟子たちとユダヤ地方に行って、そこに一緒に滞在し、洗礼を授けておられた。 23 他方、ヨハネは、サリムの近くのアイノンで洗礼を授けていた。そこは水が豊かであったからである。人々は来て、洗礼を受けていた。 24 ヨハネはまだ投獄されていなかったのである。 25 ところがヨハネの弟子たちと、あるユダヤ人との間で、清めのことで論争が起こった。 26 彼らはヨハネのもとに来て言った。「ラビ、ヨルダン川の向こう側であなたと一緒にいた人、あなたが証しされたあの人が、洗礼を授けています。みんながあの人の方へ行っています。」 27 […]

ヨハネによる福音書 4

イエスとサマリアの女 1 さて、イエスがヨハネよりも多くの弟子をつくり、洗礼を授けておられるということが、ファリサイ派の人々の耳に入った。イエスはそれを知ると、 2 ――洗礼を授けていたのは、イエス御自身ではなく、弟子たちである―― 3 ユダヤを去り、再びガリラヤへ行かれた。 4 しかし、サマリアを通らねばならなかった。 5 それで、ヤコブがその子ヨセフに与えた土地の近くにある、シカルというサマリアの町に来られた。 6 そこにはヤコブの井戸があった。イエスは旅に疲れて、そのまま井戸のそばに座っておられた。正午ごろのことである。 7 サマリアの女が水をくみに来た。イエスは、「水を飲ませてください」と言われた。 8 弟子たちは食べ物を買うために町に行っていた。 9 すると、サマリアの女は、「ユダヤ人のあなたがサマリアの女のわたしに、どうして水を飲ませてほしいと頼むのですか」と言った。ユダヤ人はサマリア人とは交際しないからである。 10 イエスは答えて言われた。「もしあなたが、神の賜物を知っており、また、『水を飲ませてください』と言ったのがだれであるか知っていたならば、あなたの方からその人に頼み、その人はあなたに生きた水を与えたことであろう。」 11 女は言った。「主よ、あなたはくむ物をお持ちでないし、井戸は深いのです。どこからその生きた水を手にお入れになるのですか。 12 あなたは、わたしたちの父ヤコブよりも偉いのですか。ヤコブがこの井戸をわたしたちに与え、彼自身も、その子供や家畜も、この井戸から水を飲んだのです。」 13 イエスは答えて言われた。「この水を飲む者はだれでもまた渇く。 14 しかし、わたしが与える水を飲む者は決して渇かない。わたしが与える水はその人の内で泉となり、永遠の命に至る水がわき出る。」 15 女は言った。「主よ、渇くことがないように、また、ここにくみに来なくてもいいように、その水をください。」 16 イエスが、「行って、あなたの夫をここに呼んで来なさい」と言われると、 17 女は答えて、「わたしには夫はいません」と言った。イエスは言われた。「『夫はいません』とは、まさにそのとおりだ。 18 あなたには五人の夫がいたが、今連れ添っているのは夫ではない。あなたは、ありのままを言ったわけだ。」 19 女は言った。「主よ、あなたは預言者だとお見受けします。 20 わたしどもの先祖はこの山で礼拝しましたが、あなたがたは、礼拝すべき場所はエルサレムにあると言っています。」 21 イエスは言われた。「婦人よ、わたしを信じなさい。あなたがたが、この山でもエルサレムでもない所で、父を礼拝する時が来る。 22 あなたがたは知らないものを礼拝しているが、わたしたちは知っているものを礼拝している。救いはユダヤ人から来るからだ。 23 しかし、まことの礼拝をする者たちが、霊と真理をもって父を礼拝する時が来る。今がその時である。なぜなら、父はこのように礼拝する者を求めておられるからだ。 24 神は霊である。だから、神を礼拝する者は、霊と真理をもって礼拝しなければならない。」 25 女が言った。「わたしは、キリストと呼ばれるメシアが来られることは知っています。その方が来られるとき、わたしたちに一切のことを知らせてくださいます。」 26 イエスは言われた。「それは、あなたと話をしているこのわたしである。」 27 ちょうどそのとき、弟子たちが帰って来て、イエスが女の人と話をしておられるのに驚いた。しかし、「何か御用ですか」とか、「何をこの人と話しておられるのですか」と言う者はいなかった。 […]

ヨハネによる福音書 5

ベトザタの池で病人をいやす 1 その後、ユダヤ人の祭りがあったので、イエスはエルサレムに上られた。 2 エルサレムには羊の門の傍らに、ヘブライ語で「ベトザタ」と呼ばれる池があり、そこには五つの回廊があった。 3a この回廊には、病気の人、目の見えない人、足の不自由な人、体の麻痺した人などが、大勢横たわっていた。 3b-4 † 5 さて、そこに三十八年も病気で苦しんでいる人がいた。 6 イエスは、その人が横たわっているのを見、また、もう長い間病気であるのを知って、「良くなりたいか」と言われた。 7 病人は答えた。「主よ、水が動くとき、わたしを池の中に入れてくれる人がいないのです。わたしが行くうちに、ほかの人が先に降りて行くのです。」 8 イエスは言われた。「起き上がりなさい。床を担いで歩きなさい。」 9 すると、その人はすぐに良くなって、床を担いで歩きだした。その日は安息日であった。 10 そこで、ユダヤ人たちは病気をいやしていただいた人に言った。「今日は安息日だ。だから床を担ぐことは、律法で許されていない。」 11 しかし、その人は、「わたしをいやしてくださった方が、『床を担いで歩きなさい』と言われたのです」と答えた。 12 彼らは、「お前に『床を担いで歩きなさい』と言ったのはだれだ」と尋ねた。 13 しかし、病気をいやしていただいた人は、それがだれであるか知らなかった。イエスは、群衆がそこにいる間に、立ち去られたからである。 14 その後、イエスは、神殿の境内でこの人に出会って言われた。「あなたは良くなったのだ。もう、罪を犯してはいけない。さもないと、もっと悪いことが起こるかもしれない。」 15 この人は立ち去って、自分をいやしたのはイエスだと、ユダヤ人たちに知らせた。 16 そのために、ユダヤ人たちはイエスを迫害し始めた。イエスが、安息日にこのようなことをしておられたからである。 17 イエスはお答えになった。「わたしの父は今もなお働いておられる。だから、わたしも働くのだ。」 18 このために、ユダヤ人たちは、ますますイエスを殺そうとねらうようになった。イエスが安息日を破るだけでなく、神を御自分の父と呼んで、御自身を神と等しい者とされたからである。 御子の権威 19 そこで、イエスは彼らに言われた。「はっきり言っておく。子は、父のなさることを見なければ、自分からは何事もできない。父がなさることはなんでも、子もそのとおりにする。 20 父は子を愛して、御自分のなさることをすべて子に示されるからである。また、これらのことよりも大きな業を子にお示しになって、あなたたちが驚くことになる。 21 すなわち、父が死者を復活させて命をお与えになるように、子も、与えたいと思う者に命を与える。 22 また、父はだれをも裁かず、裁きは一切子に任せておられる。 23 すべての人が、父を敬うように、子をも敬うようになるためである。子を敬わない者は、子をお遣わしになった父をも敬わない。 24 はっきり言っておく。わたしの言葉を聞いて、わたしをお遣わしになった方を信じる者は、永遠の命を得、また、裁かれることなく、死から命へと移っている。 25 はっきり言っておく。死んだ者が神の子の声を聞く時が来る。今やその時である。その声を聞いた者は生きる。 26 父は、御自身の内に命を持っておられるように、子にも自分の内に命を持つようにしてくださったからである。 27 […]

ヨハネによる福音書 6

五千人に食べ物を与える 1 その後、イエスはガリラヤ湖、すなわちティベリアス湖の向こう岸に渡られた。 2 大勢の群衆が後を追った。イエスが病人たちになさったしるしを見たからである。 3 イエスは山に登り、弟子たちと一緒にそこにお座りになった。 4 ユダヤ人の祭りである過越祭が近づいていた。 5 イエスは目を上げ、大勢の群衆が御自分の方へ来るのを見て、フィリポに、「この人たちに食べさせるには、どこでパンを買えばよいだろうか」と言われたが、 6 こう言ったのはフィリポを試みるためであって、御自分では何をしようとしているか知っておられたのである。 7 フィリポは、「めいめいが少しずつ食べるためにも、二百デナリオン分のパンでは足りないでしょう」と答えた。 8 弟子の一人で、シモン・ペトロの兄弟アンデレが、イエスに言った。 9 「ここに大麦のパン五つと魚二匹とを持っている少年がいます。けれども、こんなに大勢の人では、何の役にも立たないでしょう。」 10 イエスは、「人々を座らせなさい」と言われた。そこには草がたくさん生えていた。男たちはそこに座ったが、その数はおよそ五千人であった。 11 さて、イエスはパンを取り、感謝の祈りを唱えてから、座っている人々に分け与えられた。また、魚も同じようにして、欲しいだけ分け与えられた。 12 人々が満腹したとき、イエスは弟子たちに、「少しも無駄にならないように、残ったパンの屑を集めなさい」と言われた。 13 集めると、人々が五つの大麦パンを食べて、なお残ったパンの屑で、十二の籠がいっぱいになった。 14 そこで、人々はイエスのなさったしるしを見て、「まさにこの人こそ、世に来られる預言者である」と言った。 15 イエスは、人々が来て、自分を王にするために連れて行こうとしているのを知り、ひとりでまた山に退かれた。 湖の上を歩く 16 夕方になったので、弟子たちは湖畔へ下りて行った。 17 そして、舟に乗り、湖の向こう岸のカファルナウムに行こうとした。既に暗くなっていたが、イエスはまだ彼らのところには来ておられなかった。 18 強い風が吹いて、湖は荒れ始めた。 19 二十五ないし三十スタディオンばかり漕ぎ出したころ、イエスが湖の上を歩いて舟に近づいて来られるのを見て、彼らは恐れた。 20 イエスは言われた。「わたしだ。恐れることはない。」 21 そこで、彼らはイエスを舟に迎え入れようとした。すると間もなく、舟は目指す地に着いた。 イエスは命のパン 22 その翌日、湖の向こう岸に残っていた群衆は、そこには小舟が一そうしかなかったこと、また、イエスは弟子たちと一緒に舟に乗り込まれず、弟子たちだけが出かけたことに気づいた。 23 ところが、ほかの小舟が数そうティベリアスから、主が感謝の祈りを唱えられた後に人々がパンを食べた場所へ近づいて来た。 24 群衆は、イエスも弟子たちもそこにいないと知ると、自分たちもそれらの小舟に乗り、イエスを捜し求めてカファルナウムに来た。 25 そして、湖の向こう岸でイエスを見つけると、「ラビ、いつ、ここにおいでになったのですか」と言った。 26 イエスは答えて言われた。「はっきり言っておく。あなたがたがわたしを捜しているのは、しるしを見たからではなく、パンを食べて満腹したからだ。 […]

ヨハネによる福音書 7

イエスの兄弟たちの不信仰 1 その後、イエスはガリラヤを巡っておられた。ユダヤ人が殺そうとねらっていたので、ユダヤを巡ろうとは思われなかった。 2 ときに、ユダヤ人の仮庵祭が近づいていた。 3 イエスの兄弟たちが言った。「ここを去ってユダヤに行き、あなたのしている業を弟子たちにも見せてやりなさい。 4 公に知られようとしながら、ひそかに行動するような人はいない。こういうことをしているからには、自分を世にはっきり示しなさい。」 5 兄弟たちも、イエスを信じていなかったのである。 6 そこで、イエスは言われた。「わたしの時はまだ来ていない。しかし、あなたがたの時はいつも備えられている。 7 世はあなたがたを憎むことができないが、わたしを憎んでいる。わたしが、世の行っている業は悪いと証ししているからだ。 8 あなたがたは祭りに上って行くがよい。わたしはこの祭りには上って行かない。まだ、わたしの時が来ていないからである。」 9 こう言って、イエスはガリラヤにとどまられた。 仮庵祭でのイエス 10 しかし、兄弟たちが祭りに上って行ったとき、イエス御自身も、人目を避け、隠れるようにして上って行かれた。 11 祭りのときユダヤ人たちはイエスを捜し、「あの男はどこにいるのか」と言っていた。 12 群衆の間では、イエスのことがいろいろとささやかれていた。「良い人だ」と言う者もいれば、「いや、群衆を惑わしている」と言う者もいた。 13 しかし、ユダヤ人たちを恐れて、イエスについて公然と語る者はいなかった。 14 祭りも既に半ばになったころ、イエスは神殿の境内に上って行って、教え始められた。 15 ユダヤ人たちが驚いて、「この人は、学問をしたわけでもないのに、どうして聖書をこんなによく知っているのだろう」と言うと、 16 イエスは答えて言われた。「わたしの教えは、自分の教えではなく、わたしをお遣わしになった方の教えである。 17 この方の御心を行おうとする者は、わたしの教えが神から出たものか、わたしが勝手に話しているのか、分かるはずである。 18 自分勝手に話す者は、自分の栄光を求める。しかし、自分をお遣わしになった方の栄光を求める者は真実な人であり、その人には不義がない。 19 モーセはあなたたちに律法を与えたではないか。ところが、あなたたちはだれもその律法を守らない。なぜ、わたしを殺そうとするのか。」 20 群衆が答えた。「あなたは悪霊に取りつかれている。だれがあなたを殺そうというのか。」 21 イエスは答えて言われた。「わたしが一つの業を行ったというので、あなたたちは皆驚いている。 22 しかし、モーセはあなたたちに割礼を命じた。――もっとも、これはモーセからではなく、族長たちから始まったのだが――だから、あなたたちは安息日にも割礼を施している。 23 モーセの律法を破らないようにと、人は安息日であっても割礼を受けるのに、わたしが安息日に全身をいやしたからといって腹を立てるのか。 24 うわべだけで裁くのをやめ、正しい裁きをしなさい。」 この人はメシアか 25 さて、エルサレムの人々の中には次のように言う者たちがいた。「これは、人々が殺そうとねらっている者ではないか。 26 あんなに公然と話しているのに、何も言われない。議員たちは、この人がメシアだということを、本当に認めたのではなかろうか。 […]

ヨハネによる福音書 8

1 イエスはオリーブ山へ行かれた。 2 朝早く、再び神殿の境内に入られると、民衆が皆、御自分のところにやって来たので、座って教え始められた。 3 そこへ、律法学者たちやファリサイ派の人々が、姦通の現場で捕らえられた女を連れて来て、真ん中に立たせ、 4 イエスに言った。「先生、この女は姦通をしているときに捕まりました。 5 こういう女は石で打ち殺せと、モーセは律法の中で命じています。ところで、あなたはどうお考えになりますか。」 6 イエスを試して、訴える口実を得るために、こう言ったのである。イエスはかがみ込み、指で地面に何か書き始められた。 7 しかし、彼らがしつこく問い続けるので、イエスは身を起こして言われた。「あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、まず、この女に石を投げなさい。」 8 そしてまた、身をかがめて地面に書き続けられた。 9 これを聞いた者は、年長者から始まって、一人また一人と、立ち去ってしまい、イエスひとりと、真ん中にいた女が残った。 10 イエスは、身を起こして言われた。「婦人よ、あの人たちはどこにいるのか。だれもあなたを罪に定めなかったのか。」 11 女が、「主よ、だれも」と言うと、イエスは言われた。「わたしもあなたを罪に定めない。行きなさい。これからは、もう罪を犯してはならない。」〕 イエスは世の光 12 イエスは再び言われた。「わたしは世の光である。わたしに従う者は暗闇の中を歩かず、命の光を持つ。」 13 それで、ファリサイ派の人々が言った。「あなたは自分について証しをしている。その証しは真実ではない。」 14 イエスは答えて言われた。「たとえわたしが自分について証しをするとしても、その証しは真実である。自分がどこから来たのか、そしてどこへ行くのか、わたしは知っているからだ。しかし、あなたたちは、わたしがどこから来てどこへ行くのか、知らない。 15 あなたたちは肉に従って裁くが、わたしはだれをも裁かない。 16 しかし、もしわたしが裁くとすれば、わたしの裁きは真実である。なぜならわたしはひとりではなく、わたしをお遣わしになった父と共にいるからである。 17 あなたたちの律法には、二人が行う証しは真実であると書いてある。 18 わたしは自分について証しをしており、わたしをお遣わしになった父もわたしについて証しをしてくださる。」 19 彼らが「あなたの父はどこにいるのか」と言うと、イエスはお答えになった。「あなたたちは、わたしもわたしの父も知らない。もし、わたしを知っていたら、わたしの父をも知るはずだ。」 20 イエスは神殿の境内で教えておられたとき、宝物殿の近くでこれらのことを話された。しかし、だれもイエスを捕らえなかった。イエスの時がまだ来ていなかったからである。 わたしの行く所にあなたたちは来ることができない 21 そこで、イエスはまた言われた。「わたしは去って行く。あなたたちはわたしを捜すだろう。だが、あなたたちは自分の罪のうちに死ぬことになる。わたしの行く所に、あなたたちは来ることができない。」 22 ユダヤ人たちが、「『わたしの行く所に、あなたたちは来ることができない』と言っているが、自殺でもするつもりなのだろうか」と話していると、 23 イエスは彼らに言われた。「あなたたちは下のものに属しているが、わたしは上のものに属している。あなたたちはこの世に属しているが、わたしはこの世に属していない。 24 だから、あなたたちは自分の罪のうちに死ぬことになると、わたしは言ったのである。『わたしはある』ということを信じないならば、あなたたちは自分の罪のうちに死ぬことになる。」 25 彼らが、「あなたは、いったい、どなたですか」と言うと、イエスは言われた。「それは初めから話しているではないか。 26 あなたたちについては、言うべきこと、裁くべきことがたくさんある。しかし、わたしをお遣わしになった方は真実であり、わたしはその方から聞いたことを、世に向かって話している。」 27 […]

ヨハネによる福音書 9

生まれつきの盲人をいやす 1 さて、イエスは通りすがりに、生まれつき目の見えない人を見かけられた。 2 弟子たちがイエスに尋ねた。「ラビ、この人が生まれつき目が見えないのは、だれが罪を犯したからですか。本人ですか。それとも、両親ですか。」 3 イエスはお答えになった。「本人が罪を犯したからでも、両親が罪を犯したからでもない。神の業がこの人に現れるためである。 4 わたしたちは、わたしをお遣わしになった方の業を、まだ日のあるうちに行わねばならない。だれも働くことのできない夜が来る。 5 わたしは、世にいる間、世の光である。」 6 こう言ってから、イエスは地面に唾をし、唾で土をこねてその人の目にお塗りになった。 7 そして、「シロアム――『遣わされた者』という意味――の池に行って洗いなさい」と言われた。そこで、彼は行って洗い、目が見えるようになって、帰って来た。 8 近所の人々や、彼が物乞いをしていたのを前に見ていた人々が、「これは、座って物乞いをしていた人ではないか」と言った。 9 「その人だ」と言う者もいれば、「いや違う。似ているだけだ」と言う者もいた。本人は、「わたしがそうなのです」と言った。 10 そこで人々が、「では、お前の目はどのようにして開いたのか」と言うと、 11 彼は答えた。「イエスという方が、土をこねてわたしの目に塗り、『シロアムに行って洗いなさい』と言われました。そこで、行って洗ったら、見えるようになったのです。」 12 人々が「その人はどこにいるのか」と言うと、彼は「知りません」と言った。 ファリサイ派の人々、事情を調べる 13 人々は、前に盲人であった人をファリサイ派の人々のところへ連れて行った。 14 イエスが土をこねてその目を開けられたのは、安息日のことであった。 15 そこで、ファリサイ派の人々も、どうして見えるようになったのかと尋ねた。彼は言った。「あの方が、わたしの目にこねた土を塗りました。そして、わたしが洗うと、見えるようになったのです。」 16 ファリサイ派の人々の中には、「その人は、安息日を守らないから、神のもとから来た者ではない」と言う者もいれば、「どうして罪のある人間が、こんなしるしを行うことができるだろうか」と言う者もいた。こうして、彼らの間で意見が分かれた。 17 そこで、人々は盲人であった人に再び言った。「目を開けてくれたということだが、いったい、お前はあの人をどう思うのか。」彼は「あの方は預言者です」と言った。 18 それでも、ユダヤ人たちはこの人について、盲人であったのに目が見えるようになったということを信じなかった。ついに、目が見えるようになった人の両親を呼び出して、 19 尋ねた。「この者はあなたたちの息子で、生まれつき目が見えなかったと言うのか。それが、どうして今は目が見えるのか。」 20 両親は答えて言った。「これがわたしどもの息子で、生まれつき目が見えなかったことは知っています。 21 しかし、どうして今、目が見えるようになったかは、分かりません。だれが目を開けてくれたのかも、わたしどもは分かりません。本人にお聞きください。もう大人ですから、自分のことは自分で話すでしょう。」 22 両親がこう言ったのは、ユダヤ人たちを恐れていたからである。ユダヤ人たちは既に、イエスをメシアであると公に言い表す者がいれば、会堂から追放すると決めていたのである。 23 両親が、「もう大人ですから、本人にお聞きください」と言ったのは、そのためである。 24 さて、ユダヤ人たちは、盲人であった人をもう一度呼び出して言った。「神の前で正直に答えなさい。わたしたちは、あの者が罪ある人間だと知っているのだ。」 25 彼は答えた。「あの方が罪人かどうか、わたしには分かりません。ただ一つ知っているのは、目の見えなかったわたしが、今は見えるということです。」 26 すると、彼らは言った。「あの者はお前にどんなことをしたのか。お前の目をどうやって開けたのか。」 27 […]

ヨハネによる福音書 10

「羊の囲い」のたとえ 1 「はっきり言っておく。羊の囲いに入るのに、門を通らないでほかの所を乗り越えて来る者は、盗人であり、強盗である。 2 門から入る者が羊飼いである。 3 門番は羊飼いには門を開き、羊はその声を聞き分ける。羊飼いは自分の羊の名を呼んで連れ出す。 4 自分の羊をすべて連れ出すと、先頭に立って行く。羊はその声を知っているので、ついて行く。 5 しかし、ほかの者には決してついて行かず、逃げ去る。ほかの者たちの声を知らないからである。」 6 イエスは、このたとえをファリサイ派の人々に話されたが、彼らはその話が何のことか分からなかった。 イエスは良い羊飼い 7 イエスはまた言われた。「はっきり言っておく。わたしは羊の門である。 8 わたしより前に来た者は皆、盗人であり、強盗である。しかし、羊は彼らの言うことを聞かなかった。 9 わたしは門である。わたしを通って入る者は救われる。その人は、門を出入りして牧草を見つける。 10 盗人が来るのは、盗んだり、屠ったり、滅ぼしたりするためにほかならない。わたしが来たのは、羊が命を受けるため、しかも豊かに受けるためである。 11 わたしは良い羊飼いである。良い羊飼いは羊のために命を捨てる。 12 羊飼いでなく、自分の羊を持たない雇い人は、狼が来るのを見ると、羊を置き去りにして逃げる。――狼は羊を奪い、また追い散らす。―― 13 彼は雇い人で、羊のことを心にかけていないからである。 14 わたしは良い羊飼いである。わたしは自分の羊を知っており、羊もわたしを知っている。 15 それは、父がわたしを知っておられ、わたしが父を知っているのと同じである。わたしは羊のために命を捨てる。 16 わたしには、この囲いに入っていないほかの羊もいる。その羊をも導かなければならない。その羊もわたしの声を聞き分ける。こうして、羊は一人の羊飼いに導かれ、一つの群れになる。 17 わたしは命を、再び受けるために、捨てる。それゆえ、父はわたしを愛してくださる。 18 だれもわたしから命を奪い取ることはできない。わたしは自分でそれを捨てる。わたしは命を捨てることもでき、それを再び受けることもできる。これは、わたしが父から受けた掟である。」 19 この話をめぐって、ユダヤ人たちの間にまた対立が生じた。 20 多くのユダヤ人は言った。「彼は悪霊に取りつかれて、気が変になっている。なぜ、あなたたちは彼の言うことに耳を貸すのか。」 21 ほかの者たちは言った。「悪霊に取りつかれた者は、こういうことは言えない。悪霊に盲人の目が開けられようか。」 ユダヤ人、イエスを拒絶する 22 そのころ、エルサレムで神殿奉献記念祭が行われた。冬であった。 23 イエスは、神殿の境内でソロモンの回廊を歩いておられた。 24 すると、ユダヤ人たちがイエスを取り囲んで言った。「いつまで、わたしたちに気をもませるのか。もしメシアなら、はっきりそう言いなさい。」 25 イエスは答えられた。「わたしは言ったが、あなたたちは信じない。わたしが父の名によって行う業が、わたしについて証しをしている。 26 しかし、あなたたちは信じない。わたしの羊ではないからである。 […]