シラ 11

軽率な判断をするな 1 知恵があれば、身分の低い者でも頭角を現し、/高貴な人々と肩を並べることができる。 2 姿形が美しいからといって、人を褒めそやすな。また、外見によって人を毛嫌いするな。 3 蜜蜂は、羽で飛ぶもののうち小さい方だが、/その作る蜜は、最高に甘い。 4 身に着けている衣服を誇るな。栄誉を受けるときでも、おごり高ぶるな。主のなさることは、計り知れず、/その御業は、人々に隠されているからだ。 5 力を誇る多くの支配者が土下座するはめに陥り、/思いもよらぬ者が王冠をかぶることになった。 6 多くの権力者がひどい辱めを受け、/高名な者たちが異国の人の手に渡された。 7 よく調べないうちに、とがめてはならない。まず、じっくり考え、その後に叱れ。 8 よく聞かないうちに、答えてはならない。他人の話に割り込むな。 9 自分にかかわりのない事で、人と争うな。ならず者たちの言い争いに加わるな。 多くの事に手を出すな 10 子よ、あまり多くの事に手を出すな。何もかもしようとすれば、ひどい目に遭う。やり遂げようとしても、果たすことはできず、/逃げようとしても、逃げきれるものではない。 11 苦労し、難儀し、懸命に事を運ぼうとしても、/その人はかえってますます遅れてしまうものだ。 12 のろまで、助けを必要とし、/何もできず、貧しさにあえいでいる人もいる。しかし、主は、彼に目を注いで恵みを与え、/惨めな状態から引き上げ、 13 高めてくださった。そこで、多くの人々は彼を見て非常に驚いた。 14 善と悪、生と死、/貧困と富は、主が与えるもの。 15 〔知恵と悟り、それに律法の知識、/愛と善行の道、これらは、主が与えるもの。 16 迷いと闇とは、罪人と共に生じ、/悪は、それを誇る者と共にとどまる。〕 17 主の賜物は、信仰深い人と共にあり、/主の御心は、常に彼らを成功に導いてくださる。 18 生活を切り詰め、強欲に富を蓄える人もいる。だが、どんな報いがあると言うのか。 19 「これで安心だ。自分の財産で食っていけるぞ」と言っても、/それがいつまで続くのか知るよしもなく、/財産を他人に残して、死んでいく。 20 契約をしっかり守り、それに心を向け、/自分の務めを果たしながら年老いていけ。 21 罪人が仕事に成功するのを見て、驚きねたむな。主を信じて、お前の労働を続けよ。貧しい人を、たちどころに金持ちにすることは、/主にとって、いともたやすいことなのだ。 22 主の祝福こそ、信仰深い人の受ける報いなのだ。主は、幸せの花を、速やかに咲かせてくださる。 23 お前はこう言ってはならない。「今の自分は何の役に立つのだろう。今後役に立つとしたら、それは何だろう」と。 24 また、次のように言ってもならない。「今の自分は満ち足りている。今後どんな災害がふりかかるというのか」と。 25 人は、幸福なときには不幸を忘れ、/不幸なときには、幸福を思い出さない。 26 死に際して、生前の行状に応じて報いることは、/主にとって、いともたやすいことなのだ。 27 […]

シラ 12

相手をわきまえよ 1 善い業をするときには、相手をわきまえよ。そうすれば、お前の善い行いは感謝される。 2 信仰深い人に善い業をなせ。そうすれば報いがある。たとえ彼から受けなくても、/いと高き方が報いてくださる。 3 悪事にしがみついている者や、/慈悲の心を持たず、施しをしない者には、/幸福はやって来ない。 4 信仰深い人に施せ。だが、罪人には援助するな。 5 謙遜な人に善い業をせよ。しかし、不信仰な者には施すな。不信仰な者には食べ物を拒み、何も与えるな。さもないと、彼はそれで力を得て、/お前に立ち向かって来るだろう。不信仰な者に施すあらゆる善い業は、/二倍の悪となってお前に返って来るだろう。 6 いと高き方御自身も、罪人を憎み、/不信仰な人にあだを返される。〔主は、報復の日まで、彼らを監視しておられる。〕 7 善人には与えよ。しかし、悪人には援助するな。 友と敵について 8 幸福なときには、真の友を見分けられない。不幸なときには、だれが敵かはっきりする。 9 人が幸福なときには、敵はねたみ、/不幸なときには、友でさえ離れていく。 10 決して敵を信用するな。彼の悪意は、緑青のように、人をむしばむ。 11 謙遜な態度をとり、腰を低くしてやって来ても、/用心して、彼を警戒せよ。彼に対するときは、鏡を磨くように自分を磨け。絶えず磨いていれば、/彼のさびで害を受けることはない。 12 彼を傍らに立たせるな。さもないと、お前を押しのけて、/お前の地位を奪うだろう。彼を右側に座らせるな。さもないと、お前の座をねらうだろう。そのときになって、わたしの言葉を悟り、/わたしが語った言葉を思い出しても、/後悔するだけだ。 13 蛇使いが蛇にかまれ、/猛獣使いが獣にかまれたとしても、/だれが同情するだろうか。 14 罪人に近づき、/その悪にむしばまれる者も同じである。 15 彼は、お前がうまくいっているときには、/一緒にいるが、/落ちぶれたときには、離れ去ってしまう。 16 敵は、口先では甘いことを言っても、/心ではお前を穴に陥れようとたくらんでいる。敵は、目に涙を浮かべても、/折さえあれば殺そうと、血に飢え渇いている。 17 災難がお前にふりかかると、/彼はお前の目の前に現れ、/助ける振りをして、お前の足をすくう。 18 彼は、うなずいたり、もみ手をしたりするが、/裏では陰口をまき散らし、顔つきを変える。 —https://cdn-youversionapi.global.ssl.fastly.net/audio-bible-youversionapi/531/32k/SIR/12-fdaf77b735f4233dbd7fbf2f4b579490.mp3?version_id=1819—

シラ 13

金持ちとのつきあい 1 やにに触れば、手が汚れる。高慢な人と交われば、/高慢な人間になる。 2 手に余る重い物を持ち上げるな。お前よりも力や金のある者と交わるな。土鍋が鉄鍋とどうして仲間になれようか。土鍋は鉄鍋にぶつかると砕けてしまう。 3 金持ちは不正を働きながら、しかも、脅迫する。貧乏な人は不正を受けながら、/しかも、わびなければならない。 4 金持ちは、お前が役に立つかぎり、利用するが、/お前が困っているときは、見捨ててしまう。 5 お前に財産があると、親しげに寄って来て、/お前の財産を使い果たしても、平然としている。 6 お前を必要とするときには、お前をだまし、/ほほ笑みかけて、希望を持たせ、/うまい言葉を並べ立てて、/「お役に立つことはありませんか」と言う。 7 そして、ごちそうを振る舞って、お前を恐縮させ、/今度は二度も三度も搾り取り、/最後には、お前をあざ笑う。その後は、会っても知らぬ振りをし、/お前を無視して、顔を背ける。 8 用心せよ。だまされることのないように。自分の愚かさで落ちぶれることのないように。 権力者とのつきあい 9 権力者に招待されたら、一応遠慮せよ。そうすれば、ますます招いてくれるだろう。 10 深入りするな。深入りするとはねつけられる。だが、遠ざかっていてもいけない。忘れられてしまうから。 11 彼と対等に話ができるなどと、思い上がるな。彼が多くの言葉をかけてくれたからといって、/いい気になるな。はずむ話は、お前を試すためであり、/ほほ笑みながらもお前を探っているのだ。 12 彼は打ち明け話を心にとどめず、/情けを知らず、/虐待したり投獄したりすることを意に介さない。 13 お前は、自分の秘密を守り、よくよく用心せよ。極めて危ない橋を渡っているのだから。 14 〔これらのことを聞いたら、眠りから目を覚ませ。生涯、主を愛せよ。主に呼びかけて、救いを求めよ。〕 金持ちと貧しい人 15 生き物はすべて、その同類を愛し、/人間もすべて、自分に近い者を愛する。 16 すべての生物は類をもって群れ集まり、/人間も、自分に似た者と固く結び付く。 17 狼と小羊とがどうして共存できようか。罪人と信仰深い人もこれと同じである。 18 ハイエナと犬は、どうして仲良くできようか。金持ちと貧しい者が、どうして和を保ちえよう。 19 荒れ野のろばが、獅子の餌食となり、/貧乏な人は、金持ちに食い荒らされる牧草となる。 20 高慢な人にとって、謙遜が忌まわしいように、/金持ちにとって、貧乏な者は忌まわしい。 21 金持ちがよろめくと、友人が支えてくれる。身分の卑しい人が倒れると、/友人でさえ突き放す。 22 金持ちがしくじると、多くの人が助けてくれ、/言語道断なことを口にしても、かばってくれる。身分の卑しい者がしくじると、人々は非難し、/道理に合ったことを話しても、相手にしない。 23 金持ちが話すと、皆静かになり、/その話したことを雲の上まで持ち上げる。貧乏な人が話すと、「こいつは何者だ」と言い、/彼がつまずけば、これ幸いと引き倒す。 24 富は、罪に汚れていなければ、善である。貧乏が悪であるとは、/不信仰な人の言うことである。 人の顔つき 25 心の状態で、人の顔つきは変わる。うれしい顔にもなれば、悲しい顔にもなる。 26 […]

シラ 14

幸いな人 1 口を滑らすことのない人は幸いだ。罪を悔やむ思いに苦しめられることがない。 2 良心にやましいことのない人、/希望を失うことのない人は、幸いだ。 欲深い人間 3 金に細かすぎる人に、富はふさわしくない。物惜しみをする人に、金銭は何の役に立つのか。 4 生活を犠牲にしてまで蓄える人は、/他人のために蓄えるようなものだ。その蓄えで、ぜいたくをするのは他人なのだ。 5 自分を痛めつけて、/だれかに楽をさせようとでもいうのか。その人は決して自分の財産を楽しむことはない。 6 自分のことで物惜しみする人ほど/痛ましい者はない。それこそは、その人の悪の報いである。 7 欲深さを忘れて善を施しても、/結局は、その性根を暴露する。 8 欲深な目つきの人間は、蓄財に身を削り、/困っている人から顔を背け、見ぬ振りをする。 9 貪欲な目は、自分の持ち分に満足せず、/蓄財に身を削るという悪は、魂を干からびさせる。 10 蓄財に身を削る者の目は、パンを惜しみ、/その食卓は貧しいかぎりだ。 生きているうちに富を活用せよ 11 子よ、分に応じて、財産を自分のために使え。主に対しては、ふさわしい供え物を献げよ。 12 次のことを心に留めよ。死は必ずやって来る。しかし、陰府の定めはお前に示されていない。 13 生きている間、友人に親切を尽くしておけ。できるかぎり手を差し伸べて、援助せよ。 14 一日だけの幸せでもそれを逃すな。良い楽しみの機会を見過ごすな。 15 お前が苦労して得たものは、他人の手に渡り、/汗の結晶も、くじで分配されてしまうではないか。 16 与えよ、受けよ、心を楽しませよ。陰府で楽しみをどうして求めえようか。 17 生あるものはすべて、衣のように古びてしまう。「なんじ、死すべし。」これは昔からの定め。 18 枝先に揺れる葉も、/散ってはまた芽生え出る。血と肉である人間の世代も、/ひとつが終われば、他のものが生まれる。 19 すべての業は朽ち果てて、/人は、その業とともに消えて行く。 知恵を持つことの幸い 20 知恵に深く思いを寄せる人、/英知をもって理を究める人は、幸いだ。 21 心の中で知恵の道を思い巡らし、/知恵の秘密を深く考える人は、幸いだ。 22 狩人のように、知恵の後をつけ、/その通り道で待ち伏せよ。 23 窓越しに知恵をのぞき見る者は、/戸口でも耳をそばだてる。 24 知恵の住まいの近くに宿る者は、/知恵の家の壁に釘を打ち込み、 25 その傍らに天幕を張る。こうして彼は、良い家に住むことになる。 26 […]

シラ 15

知恵の働き 1 主を畏れる人は、これを行う。律法に精通している者は、知恵を悟る。 2 知恵は、母のように彼を出迎え、/新妻のように彼を迎え入れる。 3 英知のパンを食べ物として彼に与え、/知恵の水を飲み物として、彼に与える。 4 彼は、知恵に支えられて揺らぐことなく、/知恵に身を任せて、恥をかくことはない。 5 知恵は、周りの者たちよりも彼を優れた者とし、/集会で語るとき、適切な言葉を与えてくれる。 6 彼は楽しみを味わい、喜びの冠を受け、/その名声はいつまでも続く。 7 愚かな者は、決して知恵を悟らず、/罪深い者は、知恵をかいま見ることすらない。 8 知恵は、高慢な者から離れており、/偽りを言う者の心には決して思い浮かばない。 9 賛美の歌は、罪人の口にそぐわない。主に促されて歌うのではないから。 10 賛美は知恵をもってささげられ、/主御自身がこれを正しく導かれる。 人間の意志 11 「わたしが罪を犯したのは主のせいだ」と言うな。主が、御自分の嫌うことをなさるはずがない。 12 「主がわたしを迷わせたのだ」と言うな。主は、罪人には用がないのだから。 13 主は、忌まわしいことをすべて憎まれる。それらは、主を畏れる人にも好ましくない。 14 主が初めに人間を造られたとき、/自分で判断する力をお与えになった。 15 その意志さえあれば、お前は掟を守り、/しかも快く忠実にそれを行うことができる。 16 主は、お前の前に火と水を置かれた。手を差し伸べて、欲しい方を取ればよい。 17 人間の前には、生と死が置かれている。望んで選んだ道が、彼に与えられる。 18 主の知恵は豊かであり、/主の力は強く、すべてを見通される。 19 主は、御自分を畏れる人たちに目を注がれる。人間の行いはすべて主に知られている。 20 主は、不信仰であれとは、/だれにも命じたことはなく、/罪を犯すことを、許されたこともなかった。 —https://cdn-youversionapi.global.ssl.fastly.net/audio-bible-youversionapi/531/32k/SIR/15-c56c56dba72cfc6795a9ced7301a98bb.mp3?version_id=1819—

シラ 16

子供は多い方がよいとはかぎらない 1 役に立たないような子を、大勢欲しがるな。不信仰な息子たちを、喜ぶな。 2 いくら子宝に恵まれても、/彼らが主を畏れないなら、喜ぶな。 3 彼らが長生きするものと当てにするな。その数の多いことを頼みとするな。〔お前は、思いがけない悲しみに打ちひしがれる。彼らの最期を、突然、知ることになるからだ。〕/主を畏れる一人の子は、千人の子にまさり、/不信仰な子を持つよりは、/子を持たずに死ぬ方がましだ。 4 一人の聡明な人は、町を繁栄させ、/無法者の一味は、消えうせる。 罪人に対する神の怒り 5 わたしは、次に述べるようなことを、/数多くこの目で見、/それよりもひどいことを、この耳で聞いた。 6 罪人の集まる所に、焼き尽くす火が燃え上がり、/反逆の民の間に、神の怒りが燃え盛った。 7 主は、いにしえの巨人たちを容赦されなかった。彼らは、その力を誇って、反逆したからである。 8 主は、ロトが住む町を見逃されなかった。人々の高慢を忌み嫌われたからである。 9 主は、滅ぶべき民に、憐れみを示されず、/彼らは、その罪によって、滅びうせた。〔主は、これらすべてのことを、/心のかたくなな諸国民に対して行い、/多くの聖なる人たちの願いにも、/動かされることはなかった。〕 10 また、かたくなな心をもって集まった/六十万の兵士たちの場合も同じであった。〔主は、鞭打ったり、憐れんだり、/打ちたたいたり、いやしたりしながら、/慈しみと懲らしめをもって、彼らを守られた。〕 11 かたくなな者が、一人だけだとしても、/罰を受けずに済むならば、驚くべきことだ。憐れみと怒りは、ともに主のものであり、/贖う力、怒りを浴びせる力を/主は持っておられる。 12 その憐れみが深いように、とがめもまた厳しい。主は、人を、それぞれの業によって裁かれる。 13 罪人は、略奪した物を抱えて/逃げおおせることはできない。主は、信仰深い人にいつまでも忍耐を/強いることはなさらない。 14 施しをするための機会は、主によって用意され、/人はおのおのその業に応じて、報いを見いだす。 15 〔主は、ファラオの心をかたくなにして、/主御自身を知ることができないようにされた。それは、主の働きが/天下に知れ渡るようになるためであった。 16 主は、その憐れみをすべての被造物に示し、/御自分の光を闇とともに、/アダムに分け与えられた。〕 確かな主の働き 17 このように言ってはならない。「わたしは主から身を隠そう。いと高き所で、わたしのことを/心に留めるものがいるだろうか。大勢の群衆に紛れてしまえば、/わたしに気づくものはだれもいない。数えきれない被造物の中で、/わたしはいったい、何ものか。」 18 見よ、天と、天の上の天、/大地と地下の海でさえも、/主が訪れると、揺り動かされる。〔全世界は、主の御心によって生み出され、/また、その御心によって造り上げられていく。〕 19 山や、大地の基も、/主が見つめると、共に震えおののく。 20 人の心は、そのことを考えようともしない。主の道を思い巡らす者もいない。 21 目に見えないはやてのように、/主の業の多くは、隠されている。 22 だから、このように言ってはならない。「だれが主の正義の業を告げ知らせるだろうか。また、だれが、忍耐強くそれを待つだろうか。契約の実現は、はるかかなたにあり、/〔すべてのものの取り調べは、/最後に行われるのだから。〕」 23 これは心の狭い者の考え、/分別がなく、惑わされている人間が、/このような愚かなことを考える。 創造の業 24 子よ、わたしに耳を傾け、知識を身につけよ。わたしの言葉を心に銘記せよ。 25 わたしは、教訓を正しく示し、/正確に知識を告げ知らせる。 26 […]

シラ 17

人間の創造と賜物の賦与 1 主は、人間を土から造られ、/再び、土に帰される。 2 主は、彼らに一定の寿命を与え、/地上のものを治める権能を授けられた。 3 主は、御自分と同じような力を彼らに帯びさせ、/御自分に似せて彼らを造られた。 4 主は、すべての生き物に、/人間への恐れを植え付け、/こうして、人間に獣や鳥を支配させられた。 5 〔人間は、主の五つの能力を使うことを許された。主は、六番目として、彼らに知性を分け与え、/七番目として、それらの能力を解釈する理性を/授けられた。〕 6 主は、彼らに、判断力と舌と目を与え、/耳と、よく考えるための心とを授けられた。 7 主は、悟りをもたらす知識で彼らを満たし、/善と悪との区別を示された。 8 主は、彼らの心に、/御自分への畏れを植え付けられた。彼らに、御業の偉大さを示すためであった。〔そして、くすしき御業を代々誇ることを/人々に許された。〕 9 彼らは、御業の偉大さを宣べ伝え、 10 聖なる御名をほめたたえる。 11 主は、彼らに知識を授け、/命をもたらす律法を受け継がせられた。〔今のままでは、死すべき者であることを、/彼らが悟るために。〕 12 主は、彼らと永遠の契約を結び、/御自分の裁きを示された。 13 彼らの目は、主の大いなる栄光を見、/彼らの耳は、主の厳かな御声を聞いた。 14 主は言われた。「あらゆる不正を警戒せよ。」そして、隣人に対する掟を各自に授けられた。 神の裁き 15 人間の歩みは、常に、主の前にあらわであり、/主の目を逃れることはできない。 16 〔彼らの歩みは、若いときから悪に傾き、/石の心を変えて、/血の通う心にすることができなかった。 17 全地を国々に分割されたとき、〕/主は、それぞれの国に、為政者を置かれた。だが、イスラエルは御自身の割り当てとされた。 18 〔主は、イスラエルを長子として鍛え上げ、/愛の光を分かち与え、/見捨てることはなさらない。〕 19 人々の行いは、主の前に/太陽のようにあらわであり、/主の目は、絶えず彼らの歩みに注がれている。 20 彼らの不正は、主から隠されることなく、/そのすべての罪は、主の前にあらわである。 21 〔しかし、主は情け深く、/お造りになったすべてのものをみそなわし、/見捨てたり、見殺しにしたりはせず、/大切に慈しまれる。〕 22 人の行う施しは、/主にとって、印章のように貴重であり、/人の親切を、/主は、御自分の瞳のように大事にされる。〔主は、御自分の息子や娘たちに、/悔い改めの心を分かち与えられる。〕 23 最後に、主は、立ち上がって人々を裁き、/行いに応じた報いを彼らの頭上に下される。 24 悔い改める者には、立ち帰る道を開き、/耐える力を失った者を励まされる。 主に立ち帰れ 25 主に立ち帰り、罪から離れよ。御前で祈り、罪を犯す機会を遠ざけよ。 26 いと高き方に立ち戻り、不正に背を向けよ。〔主御自身が、お前を闇から救いの光に/導いてくださるから。〕/忌まわしいものを憎みに憎め。 […]

シラ 18

神の偉大さと慈しみ 1 永遠に生きている方が、/万物をことごとく造られた。 2 ただ主おひとりが、正しい方である。〔主のほかに正しい者はだれ一人いない。 3 主は、その手のひらの中で世界を動かし、/すべてのものは、その御旨に従う。主こそ、力をもってすべてを治める王であり、/清いものと汚れたものを分けられる。〕 4 御自分の業を告げ知らせる力を、/主はだれにも与えられなかった。だれが、その大いなる業を究め尽くしえようか。 5 その偉大な力を、だれがはかりえようか。だれが、その慈しみを、語りえようか。 6 だれも、それらを減らしたり/増やしたりはできない。だれも、主の不思議な業を/究め尽くすことはできない。 7 人が究め尽くしたと思ったときは、/まだ始まったばかりであり、/途中でやめてしまうと、徒労に終わる。 8 人間とは何者か。その存在の意義は何か。その行う善、その行う悪とは何か。 9 人の寿命は、長くて百年。〔しかし、永遠の眠りは計り難いほど長い。〕 10 大海の中の一滴、砂の中の一粒のように、/永遠という時に比べれば、/この寿命はわずかなものにすぎない。 11 このゆえに、主は、人々に対して忍耐し、/憐れみを彼らに注がれる。 12 主は、人間の惨めな末路を見、知っておられる。それゆえ、豊かに贖いを与えてくださる。 13 人間の慈しみは、隣人にしか及ばないが、/主の慈しみは、すべての人に及ぶ。主は、彼らをいさめ、鍛え、教えて、/羊飼いのように、羊の群れを連れ戻される。 14 主は、教訓を受け入れる者に、/また、主の裁きを熱心に待ち望む者に、/慈しみを施される。 施しをするときは 15 子よ、援助をするときには、相手を傷つけるな。施すときにも、相手をおとしめる言葉を吐くな。 16 朝露は、熱風の季節に安らぎを与えてくれる。言葉の露は施しよりも、効き目がある。 17 親切な言葉は、高価な贈り物にまさるではないか。情け深い人は、両方とも備えている。 18 愚か者は、思いやりがなく、小言ばかり言う。また、恩着せがましい人間の施しには、/だれも目を輝かさない。 事前に準備せよ 19 口を開く前に、よく考えよ。病気になる前に、養生せよ。 20 裁きが来る前に、自らを省みよ。そうすれば、主が訪れる時、お前は贖いを得る。 21 病気になる前に、自らへりくだれ。罪を犯したときは、改心の態度を示せ。 22 誓願は、必ず、期限内に果たせ。それを果たすことを、死ぬときまで延ばすな。 23 誓願を立てる前に、よく準備せよ。主を試す者になってはいけない。 24 お前が死ぬ日に下る主の激しい怒りを思え。また報復のときを心に留めよ。そのとき主は御顔を背けられる。 25 豊かなときには、飢饉のときを思い、/富んでいるときには、貧乏なときを思え。 26 早朝から夕方へと、時は移り、/すべては、主の御前で、速やかに過ぎ去る。 […]

シラ 19

1 酒におぼれる労働者は、金持ちにはならない。小さな事を軽んじる者は、次第に落ちぶれる。 2 酒と女は、聡明な人の思慮を奪い、/娼婦におぼれる者は、/ますます向こう見ずな人間となる。 3 腐敗と蛆虫こそ、彼が受け取る分け前、/歯止めのきかない心は、彼を破滅に導く。 無駄口を利くな 4 すぐに人を信じる者は、心が浅はかであり、/罪を犯す者は、自分自身を損なう。 5 悪を楽しむ者は、罰を受け、/〔享楽に背を向ける人は、その人生を輝かしくする。 6 口を慎む人は、平穏に暮らす。〕/無駄口を嫌う人は、心の負担が軽くなる。 7 うわさ話は繰り返すな。お前が損をすることは決してない。 8 友人について、また敵について、何も語るな。罪とならないかぎり、人の秘密を明かすな。 9 さもないと、お前の話を聞いた人は、警戒し、/遅かれ早かれ、お前を憎むようになる。 10 うわさを聞いたら、腹の中に納めておけ。安心せよ、それがお前を引き裂くことはない。 11 愚か者は、秘密を抱えるとひどく苦しむ。子を産む女が苦しむように。 12 太腿の肉に突き刺さった矢のように、/うわさ話は愚か者の腹の中に食い込んでいく。 うわさは問いただせ 13 うわさの渦中の友人には、問いただせ。彼は何もしていなかったのかもしれない。何かしていても、二度とはしなくなるだろう。 14 うわさの渦中の隣人には、問いただせ。彼は何も言わなかったのかもしれない。何か言っていても、二度とは言わないだろう。 15 うわさの渦中の友人には、問いただせ。しばしば中傷にすぎないから。うわさは一切信じるな。 16 うっかり口を滑らすこともある。舌先で罪を犯さない者がいるだろうか。 17 うわさの渦中の隣人を脅さず、問いただせ。その後は、いと高き方の律法に任せよ。 18 〔主を畏れることは、/主に受け入れられることの初めであり、/人は、知恵によって主から愛を授かる。 19 主の掟を知ることは、命の教訓を得ること。主に喜ばれることを行う人は、/不死の木の実を楽しみ味わう。〕 知恵とずる賢さ 20 すべての知恵は、主を畏れることにある。すべての知恵には、律法の実践が伴い、/〔また、主の全能についての知識が伴う。 21 召し使いが主人に、/「いやです、その仕事はできません」と言い、/後でそれをやり遂げたとしても、/自分の雇い主を怒らすだけである。〕 22 悪にたけることは、知恵ではない。罪人の忠告に従うことは、賢明ではない。 23 ずる賢い嫌な者もいれば、/無知で分別のない者もいる。 24 理解する力では劣っていても、主を畏れる人は、/思慮に富んでいながら律法を犯す者にまさる。 25 巧妙なずる賢さ、これは不法行為である。自分の正当性を示すために、/あれこれこじつける者もいる。〔裁判で正義を打ち立てようとする知者もいる。〕 26 ならず者が黒の喪服を着て身をかがめても、/その心の中は、欺きに満ちている。 […]

シラ 20

語るにも黙るにも時をわきまえよ 1 とがめるのに適切でない時があり、/黙っている方が、分別を示すこともある。 2 心の中で憤るよりは、とがめる方がよい。 3 過ちを自ら認める人は、恥を免れる。 4 情欲にかられて/おとめを犯そうとする宦官のように、/力ずくで正当性を主張しようとする者がいる。 5 黙っていて、知恵ある人と見られる者もあり、/しゃべりすぎて、憎まれる者もいる。 6 答えられないために、黙っている者もいれば、/時をわきまえて、黙っている人もいる。 7 知恵ある人は、時が来るまで口をつぐむ。ほら吹きと無分別な者は、/時をかまわず、しゃべりまくる。 8 口数の多い者は、嫌われ、/他人の話を奪う者は、憎まれる。〔とがめられて改めるのは、なんと立派なことか。お前は故意に罪を犯さなくても済む。〕 人生には予期せぬことがある 9 不幸な目に遭って、幸せを見つける人もいれば、/思わぬ幸運に巡り会って、損をする者もいる。 10 送り主に何の利益にもならない贈り物もあれば、/二倍になってお返しが来る贈り物もある。 11 名誉を求めて、恥を受けることもあれば、/身分の卑しい人が一躍頭角を現す例もある。 12 わずかな金で多くの物を買い、/後で、七倍も支払う者がいる。 13 知恵ある人は、言葉が少なくても慕われるが、/愚か者は無駄なお世辞を振りまく。 14 分別のない者からの贈り物は、/お前に何の利益ももたらさない。〔けちな人間がしぶしぶする贈り物も同様である。〕/彼は、自分が贈った物より更に多くのものを/期待しているのだから。 15 彼は、わずかな物を贈って、多くの小言を言い、/町の触れ役のように、その口を開く。彼は、今日貸し付けて、明日はその返却を迫る。こういう者こそ、憎むべき人間だ。 16 愚か者は言う。「わたしには友がない。親切にしたのに、何のお礼もしてくれない」と。愚か者のパンを食べる者は、彼の悪口を言い、 17 なんと多くの人々が、/しばしば、彼をあざけり笑っていることか。〔彼は自分の物を正しい心で扱わず、/他人の物も自分の物と区別しないのだから。〕 時をわきまえぬ話 18 口を滑らすよりは、道で滑る方がましだ。口を滑らして、悪人は速やかに没落する。 19 不作法な人間は、場違いの話のようなもの、/教養のない人間が、絶えずそれを口にする。 20 愚か者が語る格言は、何の反応も得られない。彼は、時をわきまえずそれを口にするのだから。 世間体 21 貧しさゆえに、罪を犯さないで済む人もいる。仕事を終えて休むとき、/彼は良心に責められることは何もない。 22 世間体を気にして、身を滅ぼし、/無分別な者に気を遣って、身を滅ぼす者もいる。 23 恥をかきたくないために、無理な約束をし、/いたずらに友を敵に回す者もいる。 うそ 24 うそは、人間にとって醜い汚点、/教養のない人間は、絶えずそれを口にする。 25 絶えずうそをつく者よりも、盗人の方がましだ。だが、両者とも、最後には破滅に至る。 […]