知恵の書 11

荒れ野のイスラエルと知恵 1 知恵は彼らの業を、聖なる預言者の手で導いた。 2 彼らは人の住めない荒れ野をさまよい、/人の踏み入ったことのない地に幕屋を張った。 3 また、敵に立ち向かい、相手を打ち破った。 4 彼らはあなたに渇きを訴えた。すると、切り立つ岩から水が与えられ、/その固い石からの水で渇きがいやされた。 5 敵への罰に使われた水が、/苦境にあえぐ彼らには役立ったのである。 罰と恵み 6 尽きぬ川の水は、腐った血でよどんだ。 7 ――これは、嬰児殺しを命じた者への/罰であった――/しかし、あなたは彼らに/思いがけずも豊かな水を与えられた。 8 そのときの彼らの渇きを通して、/敵の受けた罰の厳しさを彼らに示された。 9 憐れみによる懲らしめを受けた彼らは/怒りによる裁きを受けた不信仰な者たちの苦しみが/どんなものであったかを知った。 10 あなたは彼らには戒める父として試練を与え、/あの者たちには、厳しい王として罰を下された。 11 彼らがエジプトにいたときもそこを出たときも、/あの者たちは同じく苦しめられた。 12 過去の思い出にさいなまれて、/二重の苦しみに捕らわれたのだ。 13 自分たちへの罰が、相手の民を益したと聞いて/あの者たちはそこに主の働きを認めた。 14 かつて、川に投げ捨てられた者を、/あの者たちは嘲笑して追い払ったが、/事の成り行きを見て驚嘆した。神に従う人々と異なる渇きを覚えたからである。 15 あの者たちは愚かで不正な考えゆえに、/理性のない動物や卑しい獣を拝む過ちを犯した。あなたは、彼らを罰するために、/理性のない生き物を数多く送られた。 16 罪を犯すときに用いたその同じもので、/罰を受けることを、悟らせるために。 神の力は忍耐によって示される 17 形のない素材から宇宙を造られた全能の手は、/数多くの熊やどう猛な獅子を遣わすことが/おできにならなかったわけではない。 18 あるいは、新しく造られた怒り狂う未知の動物、/火の息を吐き、/音を立てて煙を出し、/目から恐るべき火花を散らす動物も、 19 一かみで敵を全滅させうるばかりか、/恐るべき一にらみで絶滅させうる動物も。 20 たとえ動物を用いなくても、/一息で彼らを倒すことがおできになる。彼らを正義によって責めたて、/あなたの力ある息で滅ぼすことによって。しかしあなたは、長さや、数や、重さにおいて/すべてに均衡がとれるよう計らわれた。 21 常に偉大な力を備えておられるからである。あなたの御腕の力にだれが逆らえよう。 22 御前では、全宇宙は秤をわずかに傾ける塵、/朝早く地に降りる一滴の露にすぎない。 神の愛は忍耐によって示される 23 全能のゆえに、あなたはすべての人を憐れみ、/回心させようとして、人々の罪を見過ごされる。 24 あなたは存在するものすべてを愛し、/お造りになったものを何一つ嫌われない。憎んでおられるのなら、造られなかったはずだ。 25 あなたがお望みにならないのに存続し、/あなたが呼び出されないのに存在するものが/果たしてあるだろうか。 26 […]

知恵の書 12

1 あなたの不滅の霊がすべてのものの中にある。 2 主よ、あなたは罪に陥る者を少しずつ懲らしめ、/罪のきっかけを思い出させて人を諭される。悪を捨ててあなたを信じるようになるために。 3 あなたの聖なる土地に昔から住んでいた人々を、 4 その忌まわしい行いゆえに、あなたは憎まれた。魔術の業や神を汚す儀式を行う者、 5 無慈悲にも子を殺す者、/血をすすり人肉や内臓を食べる宴を開く者、/踊り狂う秘密の教団に入門し、 6 かよわいわが子の命を奪う親たち、/この者どもをあなたは、/わたしたちの先祖の手で滅ぼそうとされた。 7 あなたにとってすべての中で最も大切な土地が、/神の子らというふさわしい住民を/受け入れるために。 8 しかしあの者たちも人間であるということで、/あなたは彼らをいとおしまれ、/あなたの軍隊の先駆けとして熊蜂を送られた。彼らを徐々に滅ぼすためである。 神の忍耐は回心を促す 9 神を信じない者たちを/戦いのさなかに、神に従う人々の手に渡し、/どう猛な獣や厳しい言葉で即座に滅ぼすことも、/あなたにとって不可能ではなかった。 10 しかし、あなたは徐々に罰を加えながら、/悔い改めの機会を与えておられた。彼らの血統が悪く、その悪意が生来のもので、/その思いが永久に変わらないことを、/ご存じであったにもかかわらず。 11 彼らは初めから呪われた人種であった。罪を犯した者に罰を加えられなかったのは、/あなたが、だれかを恐れたためではない。 12 「何故そんなことを」と、/あなたに向かって言える人がいるだろうか。あなたの判決に異議を唱える者がいるだろうか。あなたが造られた諸国の民を/あなたが滅ぼされたからといって、/だれがあなたを訴え出るだろうか。あなたに逆らう者たちの弁護を買って出て、/あなたと争う者がいるだろうか。 13 すべてに心を配る神はあなた以外におられない。だから、不正な裁きはしなかったと、/証言なさる必要はない。 14 あなたから罰を受けた者を弁護しようとして、/あなたに逆らって立つ王も支配者もいない。 15 あなたは正しい方、すべてを正しく治められる。罰に値しない者を罪に定めることは、/御自分の権能にふさわしくないと考えておられる。 16 あなたの力は正義の源、/あなたは万物を支配することによって、/すべてをいとおしむ方となられる。 17 あなたの全き権能を信じない者に/あなたは御力を示され、/知りつつ挑む者の高慢をとがめられる。 18 力を駆使されるあなたは、寛容をもって裁き、/大いなる慈悲をもってわたしたちを治められる。力を用いるのはいつでもお望みのまま。 神の忍耐は寛容を教える 19 神に従う人は人間への愛を持つべきことを、/あなたはこれらの業を通して御民に教えられた。こうして御民に希望を抱かせ、/罪からの回心をお与えになった。 20 あなたの僕らの敵、死の罰に値する者たちに/これほどの配慮と寛容を示され、/悪から離れる時と方法を授けられたとするなら、 21 ましてやあなたの子らを裁くにあたっては/どれほど慎重であられたことだろう。すばらしい約束についての誓いや契約を/あなたは彼らの先祖たちと/交わされたのだから。 22 あなたはわたしたちを懲らしめられたが、/敵には一万倍もの罰を下された。わたしたちが裁くとき、あなたの慈しみを思い、/裁かれるとき、憐れみに依り頼むためである。 神の罰は信仰に導く 23 神に逆らって愚かな生活を送った者たちを、/あなたは忌むべき彼らの偶像で懲らしめられた。 24 彼らは道を外して途方もなくさまよい、/下等で卑しい動物を神々としてあがめ、/道理をわきまえない幼児のように欺かれた。 25 そのため、分別のない子供に対するように、/あなたは軽くあしらう程度の罰を下された。 26 しかし、手ぬるい懲らしめで回心しない者は、/神にふさわしい厳しい罰を味わうことになる。 […]

知恵の書 13

自然崇拝 1 神を知らない人々は皆、生来むなしい。彼らは目に見えるよいものを通して、/存在そのものである方を知ることができず、/作品を前にしても作者を知るに至らなかった。 2 かえって火や風や素早く動く空気、/星空や激しく流れる水、/天において光り輝くものなどを、/宇宙の支配者、神々と見なした。 3 その美しさに魅せられて/それらを神々と認めたなら、/それらを支配する主が/どれほど優れているかを知るべきだった。美の創始者がそれらを造られたからである。 4 もし宇宙の力と働きに心を打たれたなら、/天地を造られた方がどれほど力強い方であるか、/それらを通して知るべきだったのだ。 5 造られたものの偉大さと美しさから推し量り、/それらを造った方を認めるはずなのだから。 6 とはいえ、この人々の責めは軽い。神を探し求めて見いだそうと望みながらも、/彼らは迷っているのだ。 7 造られた世界にかかわりつつ探求を続けるとき、/目に映るものがあまりにも美しいので、/外観に心を奪われてしまうのである。 8 だからといって彼らも弁解できるわけではない。 9 宇宙の働きを知り、/それを見極めるほどの力があるなら、/なぜそれらを支配する主を/もっと早く見いだせなかったのか。 偶像崇拝 10 命のないものに望みをかける人々は惨めだ。彼らは、人の手で造られたものを神々と呼ぶ。技術の生み出した金銀の作品、/動物の像、/昔の人が加工した役に立たない石などを。 11 一人のきこりが手ごろな木を切り出し、/その皮をすべて念入りにはぎ、/巧みに手を加えて、/生活に役立つ器具を造り上げた。 12 仕事に使った木材の余りを燃やして、/食事を準備し、空腹を満たそうとした。 13 そのまた残りの、何の役にも立たない/ねじ曲がった、節目だらけの木片を、/仕事の合間に取り上げて注意深く彫った。暇つぶしとして巧みに形を整え、/それを人の姿に造り上げた。 14 取るに足りない何かの動物に似せ、/朱を使って表面を赤く色づけ、/汚れをすべて塗り隠した。 15 ふさわしい住みかをしつらえ、/壁の中に据え置いて、金具で固定した。 16 こうして、木像が落ちないように工夫した。その像が自分では何もできないことを/彼は知っていたからである。それは像にすぎず、人の助けを必要とする。 17 財産、結婚、子供のことで彼はその像に祈り、/魂のないものに語りかけるのを恥としない。その弱い像に健康を願い、 18 命のないものに命を乞い、/全く経験のないものに助けを求め、/自分の足さえ使えないものに旅の安全を祈る。 19 商売や事業や仕事の成功のために、/手を差し伸べる力もないものに彼は力を求める。 —https://cdn-youversionapi.global.ssl.fastly.net/audio-bible-youversionapi/531/32k/WIS/13-c0ee07923ba0c0963f508d67a0205c8c.mp3?version_id=1819—

知恵の書 14

1 航海に出て荒波を越え行こうとする人は、/自分を運ぶ船よりももろい船首の木の像に/助けを求める。 2 利益を求める人間の欲望が船を考え出し、/船大工の知恵がそれを造った。 3 しかし父よ、船を導くのはあなたの摂理。あなたは海の中にも道を設け、/波の中にも安全な小道を造られた。 4 人をあらゆる危険から救う力のあることを/あなたは示されたので、/航海の技術のない者でも船に乗れる。 5 あなたは知恵の働きのやむことを望まれない。そのため人は極めて小さな船板にさえも命を託し、/木の舟で波を乗り越えて無事に航海ができた。 6 その昔、高慢な巨人たちが滅びたとき、/世の希望であったあの人は木の舟で難を逃れ、/御手に導かれ、後に続く世代の種を世に残した。 7 義を実現させたその木は祝福される。 8 しかし人の手で造られた偶像は、/その作者と共に呪われる。作者はそれを造ったからであり、偶像は/朽ちるものなのに神と呼ばれたからである。 9 神は不信仰な人も、その不信仰な行為をも/同じく憎まれる。 10 造られた物も造った人も共に罰を受ける。 11 そのため諸国の民の偶像にも裁きが下る。偶像は、被造物の中で忌むべきものとなり、/人の魂にとっては罪のもと、/愚か者の足にとっては罠となったからである。 偶像崇拝の起こり 12 偶像を考えつくことから姦淫が始まり、/偶像を造り出すことによって生活が堕落する。 13 偶像は初めからあったものではなく、/いつまでも続くものでもない。 14 それは人間の虚栄によって世に入って来た。だから速やかに滅びるように定められている。 15 息子の予期せぬ若死にに打ちのめされた父親が、/あまりにも早く取り去られたわが子の肖像を造り、/死んでしまった人間を今や神としてあがめ、/家の者たちに儀式や犠牲を義務づけた。 16 時とともに神を汚すしきたりが力を得、/法として守られるようになった。こうして、刻まれた像が支配者たちの命令で/礼拝されるようになり、 17 遠くに住んでいるために、直接支配者たちを/見て敬うことのできない人々は、/離れたところにいる彼らの姿を表すために、/尊敬すべき王に生き写しの肖像を造り上げた。その場にいない者を、あたかもいるかのように/熱心にへつらいあがめるためである。 18 偶像造りの野心は、/王を知らない人々をも駆り立てて、/偶像崇拝を広めさせた。 19 彼は権力者に取り入るため、腕を振るって/肖像を実際よりも美しいものに造り上げた。 20 多くの人は職人の見事なわざに引かれ、/先程まで人間として敬っていた者を、/今や、礼拝の対象と見なすようになった。 21 このことは人の生涯にとって罠となった。災難や権力に支配された人々が、/神聖な名を石や木に与えたから。 偶像崇拝の結果 22 彼らは神を知る点で間違っただけではない。無知から生じた大きな戦いのうちに生きながら、/次のようなひどい悪事を平和と呼んでいる。 23 彼らは幼児殺しの犠牲や密儀、/奇怪なしぐさを伴うみだらな酒宴を行う。 24 生活も結婚も清くは保たず、/裏切って殺し合い、姦淫を犯しては苦しめ合う。 25 流血と殺害、盗みと偽りが至るところにあり、/堕落、不信、騒動、偽証、 26 善人への迫害、恩恵の忘却、/魂の汚染、性の倒錯、/結婚の乱れ、姦淫、好色が至るところにある。 27 […]

知恵の書 15

神は不滅を与えてくださる 1 神よ、あなたは慈しみ深く、真実な方。怒るに遅く、すべてを治める憐れみ深い方。 2 わたしたちは、たとえ罪を犯しても、/あなたのもの。あなたの力を知っている。でもわたしたちは罪は犯さない。あなたに属することを知っているから。 3 あなたを知ることこそ全き義、/あなたの力をわきまえることこそ不滅のもと。 4 人間の悪い思いつきも、/画家たちの無駄な労苦も、/さまざまな色で塗りたくられた肖像も、/わたしたちを迷わすことはなかった。 5 愚か者はそれらを見て欲望をそそられ、/魂の欠けた、命のない肖像にあこがれる。 6 偶像を造る者、あこがれる者、あがめる者は、/悪を愛する者たちで、/このようなむなしい希望に似つかわしい。 偶像崇拝の愚かさ 7 焼き物師は苦労して粘土をこね、/生活に役立つものを一つ一つこしらえる。同じ材料の土から、/高尚な用途のための器と、/そうでない器とが同じように造られる。それら一つ一つの用途を決めるのは、/焼き物師自身だ。 8 彼はまた、不当な労力を用いて、/同じ粘土からむなしい神を造り上げる。焼き物師自身、少し前に土から生まれ、/しばらくすればまた元の土に戻る。借りていた魂の返済を求められるからだ。 9 しかし、彼が気にかけているのは、/病に倒れることでも、余命の短いことでもない。金銀の細工師と技を競うこと、/銅の細工師をまねることである。彼は偽物造りを栄誉とする。 10 彼の心は灰、その希望は土よりもむなしく、/その命は泥よりも卑しい。 11 なぜなら、自分を造ってくださった方、/活動する魂を吹き込んでくださった方、/生かす霊を注いでくださった方を、/知るに至らなかったからである。 12 かえって人生を遊び事と見なし、/生活を金もうけのできる催し物と考えて、/どんなことからも、たとえ悪からでも、/利を得るべきだと言う。 13 自分が罪を犯していることを、/彼は他のだれよりも知っている。土を材料にして、器と偶像を造ったから。 エジプト人への罰とイスラエル人への恵み 14 最も愚かで、赤子の魂よりも哀れなものは、/あなたの民を虐げるあの敵どもである。 15 諸国民の偶像をみな神々と見なした。その偶像は、目があっても見ることができず、/鼻があっても息ができず、/耳があっても聞くことができず、/手に指があっても触ることができず、/足があっても歩くことができない。 16 偶像を造ったのは人間、/霊を貸し与えられている人間がそれを造った。人は、自分に等しい神をさえ造れないのだ。 17 死すべき人間が、/その不法の手で造り出す偶像には、命がない。拝まれる偶像より、人間の方が価値がある。人間には命があるが、偶像にはないからだ。 18 最も忌まわしい動物、/他の動物よりずっと愚かなものを、彼らは拝む。 19 それらは、人の目を喜ばせるような、/動物としての魅力さえ欠いており、/神の称賛と祝福から見放されている。 —https://cdn-youversionapi.global.ssl.fastly.net/audio-bible-youversionapi/531/32k/WIS/15-5171217598d39b811d40d3f01b66e1de.mp3?version_id=1819—

知恵の書 16

1 このため彼らは、そのような動物によって/当然の罰を受け、/多くの生き物によって苦しめられた。 2 これらの罰とは逆に、/あなたは御自分の民には恵みを与え/旺盛な食欲を満たすうずらを/珍味な食物として与えてくださった。 3 まさに食事をしようとしていたあの敵どもは、/送られてきた生き物のあまりの醜さに、/せっかくの食欲さえ失った。それにひきかえ、この民は/しばらくひもじい思いをした後に、/珍味な食物にありついた。 4 圧迫者たちは困窮を味わうことが必要だったが、/この民は、敵がいかに苦しめられたかを/示されるだけで十分だった。 5 動物の恐るべき怒りがこの民を襲い、/彼らがくねった毒蛇にかまれて/滅びようとしたとき、/あなたの怒りは途中でやんだ。 6 彼らは懲らしめられてしばらくの間動揺したが、/あなたの律法の戒めを思い出させる/救いのしるしが与えられた。 7 そのしるしを仰ぎ見た者は、/目に映ったしるしによってではなく、/万物の救い主であるあなたによって救われた。 8 これによってあなたは、敵どもに示された、/御自分がすべての悪から人を救う方であることを。 9 彼らは、いなごとあぶに襲われて死んだ。彼らを救う手だてはなく、/そのような罰は当然だった。 10 しかし、あなたの子らには/毒蛇の牙も勝てなかった。あなたの憐れみが下り、彼らをいやしたからだ。 11 彼らがかまれて、またすぐいやされたのは、/あなたの言葉を思い出させるためだった。忘却の淵に沈められることなく、/あなたの恵みから外されることのないためだ。 12 主よ、彼らをいやしたのは、/薬草や塗り薬ではなく、/すべてをいやすあなたの言葉であった。 13 あなたは生死をつかさどる権能をもち、/人を陰府の門まで連れ行き、また連れ戻される。 14 しかし、人は悪意から他人を殺せたとしても、/去って行った霊を連れ戻すことはできず、/陰府に閉じ込められた魂を/解放することもできない。 15 あなたの手から逃れることは不可能だ。 16 あなたを認めようとしない不信仰な人々は、/御腕の力で罰せられ、/時ならぬ雨や雹、それに無情な嵐に悩まされ、/火で焼き尽くされてしまった。 17 すべてを消す水の中でも/不思議なことにその火はますます強くなる。神に従う人に全宇宙が味方するからだ。 18 時として、炎は弱まるが、/それは不信仰な者に罰として送られた動物が/焼き尽くされてしまわないためである。また、神の裁きが迫っていることを、/それを見る敵どもに悟らせるためである。 19 ときには水の中でさえ、/火はその力を超えて燃え盛った。悪人の地の作物を焼き尽くすために。 20 他方、あなたは天使の食物で民を養われ、/神が用意された天のパンを、/民は苦労することなく手に入れた。それはこの上なく美味で、だれの口にも合った。 21 この食べ物は、子らへのあなたの優しさを表し、/それを食べる人の好みに応じて、/望みの味に変わった。 22 雪と氷は火に耐えて解けなかった。それは、雹の降る中で燃え盛る火、/雨の中で輝く火が、/敵どもの収穫を台なしにしたことを、/民に知らせるためであった。 23 それにひきかえ、神に従う人々を養うために、/火は本来の力をさえ忘れてしまった。 自然は主に仕える 24 実に被造物は創造主であるあなたに仕え、/あなたに逆らう者を罰するためには/厳しいものとなり、/あなたに信頼する人を恵むためには/優しいものとなる。 25 それゆえ被造物はあのときもあらゆる形をとり、/万物を賜物によって養うあなたの僕となって、/逆境にある人々の望みに応じた。 26 主よ、それはあなたの愛された子らが/学ぶためであった。人を養うのはもろもろの収穫物ではなく、/信じる人を守るあなたの言葉であることを。 27 なぜなら火によっても解けなかったものが、/太陽のわずかな光で暖められただけで、/すぐに解けてしまったからである。 […]

知恵の書 17

光と闇 1 あなたの裁きは偉大で、究め尽くせない。そのため、教訓を拒んだ魂は、迷いに陥った。 2 律法のない者たちは、/聖なる民を制圧できると考えた。だが、闇に縛られ、長い夜に捕らえられて、/家の中に閉じ込められ、不変の摂理から外された。 3 彼らはひそかに行っていたあの罪の中に、/忘却の暗い覆いの中に隠れうると考えた。しかし、彼らは打ち散らされ、恐怖に取りつかれて、/幻覚におびえた。 4 彼らが身を寄せた隠れがも、/恐怖から守ってはくれなかった。恐ろしい音が周囲で鳴り響き、/悲しげな顔つきの不気味な亡霊が現れた。 5 火は光を発する力がなく、/輝く星のきらめきも、/あの恐るべき夜を照らすことはできなかった。 6 彼らの前には、自然に発した/恐ろしい火が現れた。彼らは、本当は見ていないその光景を、恐れ、/目に映ったものがいっそう恐ろしく感じられた。 7 彼らの魔術は威力を失い、/その思い上がった考えをとがめられて恥を受けた。 8 傷ついた魂の/恐れと煩いを取り除くと豪語した彼ら自身が、/取るに足らぬ恐れに傷ついた。 9 驚き、恐れさせるものは何もなかったのに、/彼らは獣の動きや、蛇の発する音におびえ、 [10]おののきつつ死んでいった。避けることのできない周りの空気にさえ/顔を背けようとしたのだ。 10 [11]悪は、自らの証言によって断罪されるとき、おびえ、/良心のとがめを受けるとき、/いっそう不安にかられる。 11 [12]恐れとは、まさに理性の助けを捨てることである。 12 [13]理性の助けに頼る心が弱ければ弱いほど、/苦しみの原因がますます分からなくなる。 13 [14]彼らは、何もできなかったあの夜、/無力な陰府の深みから出て来たあの夜の間、/皆一斉に眠り込み、 14 [15]奇怪な亡霊に悩まされるか、/気力を失って身動きできなくなるかして、/突然、予期しなかった恐怖に捕らえられた。 15 [16]こうして、その場にいた人は皆倒れ、/鉄格子のない牢獄に閉じ込められた。 16 [17]農夫であれ、牧者であれ、/人里離れた場所で苦労して働く者であれ、/この避けられない運命に見舞われた。 17 [18]いずれも同じ闇の鎖につながれたのだ。吹く風の音、/葉の茂る枝に飛び交う鳥の心地よい歌声、/力強く流れる水の調べ、 18 [19]崩れ落ちる岩石の乾いた音、/跳びはねる動物の気配、/凶暴な野獣のうなり声、/山の洞窟にこだまするやまびこ、/これらが彼らを恐怖で金縛りにした。 19 [20]全世界は輝かしい光に照らされ、/何の妨げもなく活動していた。 20 [21]それなのに、彼らの上には/夜が重くのしかかっていた。彼らを包み込もうとする暗闇の前ぶれが。しかし彼らは闇よりも/自分自身を重荷に感じていた。 —https://cdn-youversionapi.global.ssl.fastly.net/audio-bible-youversionapi/531/32k/WIS/17-54e6989910bcdc4a73546595317eb214.mp3?version_id=1819—

知恵の書 18

1 あなたに清められた人々に大いなる光が輝いた。敵どもは、彼らの姿を見なくても、声を聞き、/これほどの苦しみは味わわなかったと、/彼らを幸せな者と呼んだ。 2 迫害されても、仕返ししない彼らに、/敵どもは感謝した。そして、不和であったことの赦しを願った。 3 あなたは、御民には燃える火の柱を与えて、/未知の旅の案内者とし、/栄えある放浪の旅の、/彼らを苦しめることのない太陽とされた。 4 他方敵どもは、当然なことに光を奪われ、/闇につながれた。あなたの子らをとりこにしたからである。あなたの子らこそ律法の不滅の光を/世に伝えるはずであった。 敵の死と民の救い 5 あなたに清められた人々の乳飲み子たちを、/彼らは殺そうとした。そのとき一人の子が捨てられて、救われた。あなたは罰として、彼らの多くの子供を奪い、/また大波で彼らを一挙に滅ぼされた。 6 あの夜のことは、我々の先祖たちに/前もって知らされており、/彼らはあなたの約束を知って/それを信じていたので、/動揺することなく安心していられた。 7 神に従う人々の救いと、敵どもの滅びを、/あなたの民は待っていた。 8 あなたは、反対者への罰に用いたその出来事で、/わたしたちを招き、光栄を与えてくださった。 9 善き民の清い子らは、ひそかにいけにえを献げ、/神聖な掟を守ることを全員一致で取り決めた。それは、聖なる民が、順境も逆境も/心を合わせて受け止めるということである。そのとき彼らは先祖たちの賛歌をうたっていた。 10 その歌には、敵どもの叫びが不調和にこだまし、/子らを悼む嘆きの声が悲しげに響いた。 11 敵どもは奴隷も主人も同じ罰で懲らしめられ、/庶民も王も同じ苦しみを味わった。 12 死という一つの名の下に、/数えきれない人々が倒され、/死者を葬るのに、生存者の数が足りなかった。彼らの最も貴重な跡継ぎも、一瞬のうちに滅んだ。 13 魔術に頼って神を一切信じなかった彼らは、/長男の死を見たとき、この民を神の子と認めた。 14 沈黙の静けさがすべてを包み、/夜が速やかな歩みで半ばに達したとき、 15 あなたの全能の言葉は天の王座から、/情け容赦のないつわもののように、/この滅びの地に下った。 16 それは、取り消しのきかないあなたの命令を/鋭い剣のように手にして、/すべてを死で満たし、/天に触れながらも、地を踏んで立っていた。 17 恐ろしい夢の中で幻が/敵どもを驚かせ、/思いがけない恐怖が彼らを襲った。 18 彼らは息絶え絶えとなってここかしこに倒れ/自分たちの死にゆく理由を世に明らかにした。 19 彼らを悩ませたあの夢がそれを予告していた。自分たちがなぜ苦しむのかその理由も知らずに/死んでゆくことのないために。 民の仲介者 20 死の試練は神に従う人々にも与えられ、/荒れ野で多くの人々が滅びた。しかし、あなたの怒りは長くは続かなかった。 21 とがめられるところのない一人の人が/速やかに代表戦士として立ち、/自分にゆだねられた祭司の任務を武器として、/祈りと、香りによる贖いを献げたからである。そして、御怒りの前に身を置き、災いを終わらせ、/あなたの僕であることを示した。 22 彼が御怒りに打ち勝ったのは、/体力や、武力によってではない。言葉によって、罰する方を説得し、/先祖たちと交わされた誓いと契約を/思い出していただいたのである。 23 死んだ者は既に重なり合って倒れていた。そのとき彼は間に立って罰の攻撃を押しとどめ、/それが生きている者に及ぶ道を断ち切った。 24 彼の足まで届く衣は全宇宙を示しており、/先祖たちの誉れは四列に並ぶ宝石に刻まれ、/あなたの威光は頭上の冠に輝いていた。 25 滅ぼす者はこれらを前にしてたじろぎ、恐れた。民は御怒りに触れるだけで十分だったのである。 —https://cdn-youversionapi.global.ssl.fastly.net/audio-bible-youversionapi/531/32k/WIS/18-79d75128d6156000658f1977562be399.mp3?version_id=1819—

知恵の書 19

神に逆らう者たちの滅びと民の救い 1 神を信じない者たちには、/容赦のない怒りが下った。彼らが後に何をするかを、/主はあらかじめご存じだった。 2 彼らが民の出国を許し、/せきたてて追い出した後で、/後悔して追いかけることをご存じだった。 3 事実、まだ喪が明けず、/死者の墓前で嘆きの声が聞こえるというのに、/彼らは再び正気のさたとは思えない考えを抱き、/前には頼んで出て行ってもらった人々を、/今度は逃亡者として追い始めた。 4 彼らがこの極端な行為に走り、過去を忘れたのは、/当然の成り行きだった。彼らの罰の欠けている分を、/これらの苦しみで補わせるためであり、 5 また、民が予期せぬ旅を経験している間、/敵どもは異常な死に出会うためであった。 6 全被造物はそれぞれ本性を保ちつつ、/新たな姿に変えられ、御命令に服従して、/あなたの子らを無事に守った。 7 雲は宿営を覆い、/以前水のあったところには乾いた地が現れ、/紅海には妨げるもののない道ができ、/逆巻く波からは草の生えている平野が出現した。 8 驚くべき奇跡を目の当たりにしながら、/そこを民全体が御手に守られて渡って行った。 9 彼らは、牧場の馬のように走り回り、/小羊のように跳びはね、/主よ、自分たちを救ってくださったあなたを/たたえた。 10 彼らは寄留地での出来事を、思い起こした。土が動物ではなく、ぶよを生じさせ、/川が魚ではなく、多くの蛙を吐き出したことを。 11 しかしその後、彼らは鳥の新たな発生をも見た。それは彼らが、欲望にかられ、/美味な食べ物を求めたときであった。 12 海からうずらが飛んで来て、彼らは満たされた。 13 罰が罪人たちの上に下った。激しい雷による警告の後のことである。彼らはその罪のゆえに当然の苦しみを受けた。他国人を敵意をもってひどく扱ったからである。 14 見知らぬ人々がやって来たとき、/彼らを受け入れなかった民はあった。しかしこの者たちは、/利益をもたらしてくれた客人を奴隷にした。 15 あの民は、よそから来た者を、/敵意をもってあしらったので、裁きを受けた。それならば、この者たちはなおさら裁かれる。 16 彼らは実に、よそから来た者を大歓迎し、/自分たちと同じ権利を与えておきながら、/つらい労働を課して虐待したのである。 17 この者たちは目をくらまされた。あの義人の家の戸口で人々に起こったように。彼らは濃い闇に覆われ、/めいめい自分の家の戸口を探したのである。 18 自然の要素がそれぞれの関係を変えるのは、/竪琴の絃がその調べを変えるのに似ている。しかし、音色そのものは常に同じである。このことは、過去の出来事に照らして明らかだ。 19 陸の生き物は水に住む生き物に変わり、/水中を泳ぐ生き物は地上に移って来た。 20 火は水の中で火力を増し、/水は火を消す働きを忘れた。 21 炎は、かよわい生き物がその中を歩いても、/その肉を焦がすことすらなく、/氷のように解けやすい天からの食べ物も/解かすことはなかった。 結び 22 主よ、あなたはすべてにおいて民を/大いなる者とし、栄光を与えられた。あなたは、彼らを見捨てず、いつでもどこでも/彼らの傍らに立っておられた。 —https://cdn-youversionapi.global.ssl.fastly.net/audio-bible-youversionapi/531/32k/WIS/19-c1211efe26a984f7ed699530efc5e3ef.mp3?version_id=1819—